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CLTを使った学校が増加!デザインも強度も向上

岡山県真庭市は複数の小学校や幼稚園を統合し、新たにCLTを使った木造の小学校と認定こども園を建設しました。CLT(直交集成材)に地域のヒノキや杉を使用し、高い耐震性と防火性を備えたうえに、短期間で温かみのある校舎が完成しました。

学校を訪れた人々からは、「温かみを感じる」という感想が寄せられており、単なる印象だけでなく、実際に温かみを実感できるとされています。

岡山県真庭市がCLT建築に踏み切った理由

近年では、少子化の影響で学校の統廃合が増加しています。岡山県真庭市においても複数の学校施設が統合されました。

◇地域の教育施設を統合

近年の少子化の影響で、真庭市では学校の統廃合が進んでいます。平成22年1月には「真庭市立小・中学校の適正配置」に関する答申を受け、翌年に実施計画を策定しました。

この計画により、北房地域の4つの小学校、3つの幼稚園、2つの保育園の統合が決定され、新たに小学校と認定こども園を同一敷地内に建設する予定です。この統合により、教育資源の集約と効率化が図られ、質の高い教育環境が提供されることが期待されています。

◇真庭市は木材利用を推進

真庭市は木材利用も積極的に推進しており、市有施設の建築において、地上3階建て以下かつ延べ床面積3,000㎡以下の施設は原則として木造化を進めています。

市内には約20の林業事業体、3つの原木市場、30の製材所、1つの製品市場があり、特にヒノキを中心に林業が盛んです。

特に、学校建設では大断面集成材やCLTを活用して耐震壁や屋根材として導入し、市内に豊富なヒノキや杉を活用した材料開発が行われています。これにより、市内の林業事業体との連携も強化され、地域の木材利用の推進が図られています。

学校に求められる耐震性と防火性

建設事例
画像出典:ウッドデザイン賞 受賞作品データベース 公式サイト

学校建設では、児童が安心して学べる環境を作るために、優れた耐震性と防火性が求められます。

◇耐震性

公立学校施設は、児童生徒の学習・生活の場であり、教職員の勤務地としての機能に加え、地震などの災害時には地域住民の避難場所としても重要な役割を担っています。

東日本大震災を契機に耐震対策が強化されましたが、2016年の熊本地震を含む複数の地震においても多くの被害が発生しており、高い耐震性が必要です。

1981年以降の新耐震基準では、建物が一定の保有水平力を持つかを確認することが求められていますが、旧耐震基準の建物ではこの評価が難しいのが現状です。このため、耐震診断では「Is値」という指標が重要となります。

Is値は、建物の基本耐震性能(Eo)、形状(Sd)、経年劣化(T)を反映した値で、これらを掛け合わせて算出します。Is値が高いほど建物の安全度が高く、一般的な建物ではIs値0.6以上が安全とされ、特に公立学校施設では0.7以上を目安としています。

◇防火性

学校は特殊建築物に該当し、主要構造部を防火構造にしなければなりません。

特殊建築物とは、建築基準法に基づき、学校や介護施設、映画館、病院など不特定多数の人が利用する建物を指します。これらは火災リスクが高く、発生時の周辺への影響も大きいため、特別な分類に含まれます。

2018年の法改正により、この要件は床面積200㎡以上の建物に適用されるよう変更されました。

さらに、木造での学校建築は3階建てまで可能ですが、防火地域や準防火地域に建てる場合、その立地、延べ面積、階数に応じて耐火建築物、準耐火建築物、または延焼防止建築物として建設する必要があります。

耐火建築物とは、火災時に建物の倒壊や延焼を防ぐために、耐力壁、間仕切り壁、外壁、柱、床、梁などに求められる耐火性能を有する建築物で、この性能は建築基準法で定められています。

2019年の建築基準法改正で、防火・準防火地域の建物に「延焼防止建築物・準延焼防止建築物」の基準が導入されました。外壁や開口部の防火性能を高め、外部への燃え移り防止と内部の炎の発生抑制を目的としています。

CLTで耐震性と防火性を向上

CLTは複数の木材の層を交互に直交させて積層し、接着することで製造される木材です。この交差構造により、パネル自体が高い剛性を持ち、耐震性と防火性を向上させます。

◇CLTの耐震壁

CLTの耐震壁は、建築物にかかる垂直荷重(重力荷重)と水平荷重(地震や風による荷重)の両方を持する能力を持つのが特徴で、この多方向への荷重対応能力が、CLTの大きな強みです。

さらに、地震時、CLT耐震壁は変形することでエネルギーを吸収し散逸させて、構造体全体の揺れを減少させ、損傷を最小限に抑えられます。真庭市の小学校建設では、教室間の壁として耐震壁にCLTを現しで使用しており、壁の背面は隣の教室のロッカー側の壁として仕上材で覆われています。

◇厚いCLTで防火

CLTは厚みのある木材層を交互に直交させて接着したパネルで構成されているため、高い防火性が特徴です。

CLTは燃えると表面が炭化し、内部への熱伝導を遅らせる層を形成します。この炭化層は断熱性があり、内部の木材を保護し火の進行を遅らせます。また、CLTの厚みにより、一定時間、火に耐えられます。建築基準に応じて、CLTの厚みを調整することで、所定の耐火時間の確保が可能です。

こども園の保育室や遊戯室、調理室を区切る間仕切り壁として、CLTを使用し、木材の現し仕上げを採用しました。防火区画として両面からの火災に耐えるため、両面の火炎に対応する必要な燃えしろを確保する目的で、7層の厚さのCLTを使用しています。

地域の木材で温かみのある学校が完成

木材は「木のぬくもり」という言葉があるように、木目・風合いなどの見た目や柔らかい質感に温かみを感じます。

◇単価と工期を低減

真庭市では、地元産の桧を活用し、外層に高品質な桧を、内層にコスト効率の良い杉を使った特製の5層5プライCLTを開発しました。また、計画段階からCLTを広範囲に使用することで、工期の短縮を実現しています。

◇温かみのある校舎

学校を訪れた人々から、「温かみを感じる」という声が寄せられました。木造建築は、気持ちだけでなく実際に暖かみを感じられるとされています。


木材は鋼材やコンクリートに比べて熱伝導率が低いため、多孔質性が内部の空気層を形成し、断熱性を高めます。室内は外気温の影響を受けにくく、内装に木材を使用すると「温かい」「明るい」という印象を与えることが研究で示されています。


岡山県真庭市では、木材利用を積極的に推進しており、地元産のヒノキや杉を使用したCLTの導入に力を入れています。少子化による学校の統廃合が進む中、実際に地域の木材資源を生かしてCLT(Cross-Laminated Timber)建築を採用しました。

CLTは木材の層を交互に直交させて積層し、高い剛性と耐震性能を持つことが特徴です。地震時にはエネルギーを吸収し、構造体全体の揺れを減少できます。

また、防火性能についてもCLTは優れており、厚い木材層が炭化層を形成し、内部の木材を保護します。これにより、所定の耐火時間を確保し、防火性能を高めています。真庭市では、厚さ7層のCLTを使用し、保育室や遊戯室、調理室の間仕切り壁としても活用されています。

新しい学校施設では、内装に木材の現しを採用し、温かみのあるデザインとなっています。地元産の桧を外層に、コスト効率の良い杉を内層に使用した5層のCLTパネルは、工期の短縮にも貢献しました。

CLT木造建築で駅を改修し地域の文化を残す取り組み

東急電鉄が進める池上線の駅舎リニューアルプロジェクトは、地域の文化を尊重しながら木造駅舎を活用し、多摩産材の使用や地域資源の活用を通じて地域経済を促進しています。駅周辺の快適さや利便性向上により地域の中心性が高まり、商店街が活気づく一方、木造建築の維持管理には適切な設計と管理が必要です。

木造で駅を改修して地域の文化を残す

東急電鉄は、池上線の駅舎リニューアルを進めています。池上線は小規模ながら下町の雰囲気が漂い、木造の駅舎が地元の人々に親しまれています。木になるリニューアルでは、多摩産材を使用し、地域資源の活用と地産地消を促進しています。

◇路線の特徴に合わせてリニューアル

木になるリニューアルは五反田駅と蒲田駅を結ぶ東急池上線で取り組まれている意欲的なプロジェクトで、2016年には戸越銀座駅の駅舎リニューアルが完成しました。

池上線は都心を走る私鉄ですが、田園都市線や東横線などと比較すると駅の規模が小さく、沿線の雰囲気も異なります。

東急電鉄では、下町のような情緒が漂い、昔ながらの商店街も多い池上線のイメージに合わせ、住民に寄り添った温かみのある駅舎リニューアルを実現することを決定しました。

◇耐用年数に課題も注目を浴びる

木造の駅舎は、鉄骨造よりも法定耐用年数が短いという課題があります。しかし、それにもかかわらず、東急電鉄の試みは地元の住民などから高く評価され、プロジェクトは発展を続けています。

◇多摩産材へのこだわり

木になるリニューアルでは、地域内での資源循環および地産地消を重視し、東京都内で産出される多摩産材にこだわった駅舎づくりを行っています。多摩産材には、利用者が駅に対して親近感を抱くと同時に、東京の林業を活性化させる意味もあります。

木造駅舎でCO2削減に貢献できる

戸越銀座駅を皮切りに、2019年には旗の台駅、さらに2021年には長原駅の駅舎リニューアルが完了し、木造駅舎のさまざまな魅力がクローズアップされています。木材を活用することによってCO2が削減されただけではなく、古材をベンチなどに再利用する試みも好評を博しています。

◇CO2削減

コンクリートなどの建材と比較した場合、木材を使用した建造物では、材料製造時のCO2放出量を大幅に削減することが可能です。

具体的な数値で言えば、戸越銀座駅の木造駅舎で削減できたCO2量は約170トン、旗の台駅が約320トン、そして長原駅は約1トンです。

戸越銀座駅リニューアルの際には、「駅舎に使用されている木材がどこから来たものなのか」「背景にはどのような環境問題があるのか」を学ぶための原産地ツアーも2回開催され、延べで59名が参加しています。

◇古材の再利用

東急電鉄では、駅舎を改修する際に出る古材を蘇らせる「みんなのえきもくプロジェクト」への取り組みも盛んに行っています。駅舎で使用されていた木材をベンチに作り変えるワークショップなども開催され、子どもも参加して賑わいを見せています。

「みんなのえきもくプロジェクト」は、長野県を拠点として活動する「Rebuilding Center JAPAN」の協力のもとに活動が展開されています。

既存施設を使用しながら施工した建築事例

旗の台駅のリニューアルでは、既存の屋根を残したまま建て替え工事が行われました。多摩産のスギやヒノキを使用し、大判と小幅のCLTを組み合わせた工法が採用されました。CLTは強度と耐火性に優れ、再生可能な資源であるため環境にも配慮されています。木の温かみとデザイン性を重視しつつ、メンテナンス性にも配慮された設計が評価されています。

◇既存屋根を残したまま施工

開業以来、約70年間にわたって人々の暮らしを支えてきた旗の台駅をリニューアルするにあたっては、利用者の動線を最優先に考えて設計案が練られました。

駅の稼働に支障をきたさないように建て替え工事を行わなければならないため、既存の屋根はそのまま残し、上部に新しい屋根が架構として組み上げられました。

◇多摩産スギとヒノキを使用

旗の台駅には多摩産スギやヒノキなど、複数の木材が使われています。大判のCLTと小幅のCLTを巧みに組み合わせた工法が採用されているのも、同駅の大きな特徴です。

CLTというのは「Cross Laminated Timber(クロスラミネート材)」の略で、東京都内の鉄道施設でCLTが使われたのは旗の台駅が初めてです。

CLTは軽量でありながら強度と剛性に優れ、耐火性が高い点が特徴です。再生可能な資源であるため、環境への負荷が少ないのもCLTの大きなメリットです。

◇メンテナンス性と意匠性を両立

木材の温かみやデザイン性に偏ることなく、メンテナンス性にも気を配った旗の台駅は意匠面でも高い評価を受けています。木の温かみを強調するために、同路線の他駅よりも色温度の低い照明を使用するなど、すみずみに細やかな気配りが感じられます。

駅の整備が街づくりの活性化につながる

駅周辺の快適さや利便性が向上したことで、地域の中心性が高まり、周辺商店街が活気づきます。また、木造建築の維持管理は他の素材に比べ手間がかかる印象がありますが、適切な設計と管理により、木の美しさを長期間楽しむことができます。さらに、バリアフリー施設の整備を促進することで利用者の利便性が向上します。

◇駅周辺まちづくり

駅がこれまでよりも快適で利便性の高い空間になったことによって、地域における駅の中心性が高まり、周辺商店街が活性化されます。個々の駅周辺が活性化するだけではなく、池上線全体の新しい魅力が再発見されることになったのは、特筆すべきポイントです。

◇維持管理

木造建造物は、他の素材を使用した建物と比較すると維持管理にコストと手間がかかって大変だというイメージを持つ地方自治体は多いようです。

ところが、設計段階でキャットウォークを設置する、あるいは劣化を予防するための適切な設計を行い、維持を正しく行うことにより、木造ならではの深みや美しさを長期に渡って楽しめるのが木になるプロジェクトの目指すところです。

◇整備の促進

バリアフリーへの施設整備を新たに見直した上での駅舎リニューアルが展開していけば、利用者の利便性は今後もますます向上することが期待されます。


東急電鉄が進める池上線の駅舎リニューアルプロジェクトでは、木造の駅舎を活用して地域の文化を大切にしながら、駅周辺の魅力を高めています。小規模ながら下町の雰囲気が漂う池上線では、木材の温かみが地元の人々に親しまれています。このプロジェクトでは、多摩産材を使用して地域資源の活用と地産地消を促進しています。

木になるリニューアルは、2016年に戸越銀座駅で始まり、その後旗の台駅や長原駅でも実施されました。これによりCO2削減効果が期待され、古材の再利用も行われています。また、旗の台駅では既存の屋根を残したまま施工し、多摩産のスギやヒノキを使用した工法が採用されました。木の温かみとデザイン性を重視しつつ、メンテナンス性にも配慮された設計が評価されています。

駅周辺の快適さや利便性が向上することで、地域の中心性が高まり、周辺商店街が活性化します。木造建築の維持管理には手間がかかるイメージもありますが、適切な設計と管理により木の美しさを長期間楽しむことができます。さらに、バリアフリー施設の整備を促進することで利用者の利便性も向上するでしょう。

サプライチェーン改革でCLT住宅の建設コストを削減できる

CLTの工法には、CLTパネル工法、軸組工法+CLTパネル、混構造の3つがあります。製造コストはマザーボード価格、加工費、輸送費から構成されます。MEC IndustryのMOKUWELL HOUSEは、CLTを用いた住宅で低価格と高品質を両立しています。CLTの導入により、耐震性が向上し大空間が可能になると同時に、優れた断熱性能も提供されます。

さまざまな種類があるCLTの工法とは?

CLTの工法には、CLTパネル工法、軸組工法+CLTパネル、混構造の3つがあります。CLTパネル工法は、既に加工されているCLTパネルを現場に搬入し、箱状の構造を形成する工法です。軸組工法+CLTパネルは、木造軸組工法とCLTパネルを組み合わせた工法で、広い空間を実現できるメリッがあります。混構造は上層と下層で異なる構造を組み合わせます。

◇CLTパネル工法

工場で加工したCLTパネルを現場に持ち込んで、箱状の構造を形成します。現場で調整作業が不要なため、工期を短縮でき、デザインの自由度が高いのも特徴です。CLTパネルの耐震性と軽量性により、地盤補強工事が不要になるケースも少なくありません。

◇軸組工法+CLTパネル

柱梁の木造軸組工法と、水平力を負担するCLTパネル、鉛直力を負担するCLTパネル、CLT床版を組み合わせる工法です。構造計算の手順は、従来の木造軸組工法と同様です。鉛直荷重は柱が支えるため、壁を減らして開放感のある広い空間を実現できます。

◇混構造

下層をRC造あるいはS造とし、上層にCLTを使用する構造です。反対に、CLTを下層に使用し、上層を木造軸組工法やS造にすることも可能です。通常、各層ごとに異なる構造形式を採用します。同一層でふたつ以上の構造形式を組み合わせることもできますが、その場合はより高度な技術が必要です。

CLTの製造コストと建築コスト

CLTの製造コストは、マザーボード価格、加工費、輸送費で構成され、販売価格には接着剤や加工費用なども含まれます。岡山県が行ったCLT造とRC造の建築コストを比較検討では、建築コストはほぼ同額であることが分かりました。CLTの利点として、基礎工事の簡略化、現場作業人員数の削減、工期短縮が挙げられます。

◇CLTの製造コスト

CLTの製造コストの内訳は、基本的にマザーボード(原判)価格、加工費、輸送費で、構造設計費用や建設費用などが含まれる場合もあります。CLTのマザーボードの最大面積は大きく、最大で幅3,000mm、長さは12,000mmです。

ただし、この最大面積でCLTを量産することはなく、一般的に建物に必要な寸法を元に複数の寸法を組み合わせて最適な歩留まりを算出し、マザーボードを製造します。

販売価格は製造企業によって異なりますが、購入する際は接着剤、現し、節補修、加工、設計などにかかる費用も別途発生することもあります。

◇建築コストはRC造と同じという結果も

岡山県が一般社団法人岡山県建築士事務所協会と連携して、浅口市内にある2階建てのCLT建築物を用いて、RC造とS造との比較検討を行いました。建築コストに関しては、一定の条件下であれば、CLT造とRC造、S造はほぼ同額の結果となりました。基礎工事が簡略化できプレ加工ができるため現場作業人員数を減らせ、工期短縮に対応しやすいのもCLT造の利点です。

低価格を実現MOKUWELL HOUSE

MEC Industryは7社の企業が出資した総合林業事業会社で、鹿児島県湧水町に本社工場を構えています。総合型最適化モデルを採用し、工場で部材を作り現場で組み立てる工法を採用することで、CLTを活用した規格型の戸建てを低価格で販売することに成功しました。

◇MEC Industryとは

三菱地所をはじめ7社の企業の出資を受けて2020年に設立された総合林業事業会社です。本社工場は、鹿児島県湧水町にあります。

丸太の調達から加工、製材、商品の開発、製造、販売までの一連の工程を一貫して行う「総合型最適化モデル」を採用し、高品質な商品を安定的かつリーズナブルな価格で提供しているのが特徴です。

木を活用する事業が高く評価され、ウッドデザイン賞2022で最優秀賞を受賞しています。

◇低価格を実現したMOKUWELL HOUSE

MOKUWELL HOUSEは、天井と床にCLTを活用し、あらかじめ工場で作っておいた部材を現場で組み立てる工法を採用した規格型の戸建てです。

MEC Industryは、国産材を使用し自社工場で製造・組み立てを行っています。中間コストと現場作業員の人数を削減することで、MOKUWELL HOUSEを低価格で提供することに成功しました。

この住宅は、低価格でありながら、高品質かつ高性能な生活スタイルを実現できます。

CLTを住宅に取り入れて強固な家づくり

CLTの一般住宅への導入には、多くの利点があります。耐震性が高く、少ない量でも十分な耐震性を確保できるため、構造壁を減らし大空間を実現できます。木の美しさを活かしたデザインも可能で、経年変化も楽しめます。

CLTはコンクリートや鉄と比べて10倍から400倍もの断熱性があり、光熱費の削減に効果的です。

◇耐震性を高め大空間を可能に

一般住宅にCLTを導入する利点は多岐にわたります。ひとつ目の利点は、耐震性です。CLTは他の木材よりも強度が高いため、少ない量でも耐震性を確保できます。耐震性に優れていると構造壁が減らせるため、大空間も実現できます。

また、木の表面をそのまま利用することで、内装を木の美しさを活かしたデザインにできるのも魅力です。この手法を現し(あらわし)といい、木の経年変化も楽しめます。

◇優れた断熱性

木材から伝わる温かみに加え、断熱性に優れている点もCLT住宅の利点です。CLTが断熱性に優れている理由は、木材は微細な空気の入った穴(細孔)で構成されていて、この空気が熱を遮断する働きをしているからです。

木材の断熱性能は、コンクリートの10倍、鉄の400倍とされていて、10cmのCLTパネルは1.2mのコンクリートや5cm厚のグラスウールと同じくらいの断熱性を持ちます。

CLTを使った断熱工法には内張断熱と外張断熱のふたつがあり、小規模な建物では外側に断熱材を取り付けて、中・大規模な建物では内側に断熱材を使って断熱性を確保します。

住宅の断熱性を高めておくと、1年を通じて快適に過ごせるだけでなく、光熱費削減にも効果的です。


CLTの工法は、CLTパネル工法、軸組工法+CLTパネル、混構造の3つがあります。CLTパネル工法は、加工されたCLTパネルを箱状の構造に組み立てる方法で、現場作業を最小限に抑えることができます。軸組工法+CLTパネルは、木造軸組工法とCLTパネルを組み合わせて使用し、大空間を実現するメリットがあります。混構造は、異なる構造を上下層に組み合わせる方法です。

CLTの製造コストは、マザーボード価格、加工費、輸送費が主な要素であり、建築コストと比較してもほぼ同等であることが示されています。

MEC IndustryのMOKUWELL HOUSEは、CLTを活用した住宅で、低価格で高品質な家を提供しています。

CLTを住宅に取り入れると、耐震性が高まり、大空間を実現することができます。また、CLTの断熱性能は高く、光熱費の削減にも効果的です。

CLTを使用した家具で木質廃材の再利用を促進する方法

隈研吾監修の木庵テーブルは、CLT材の端材を再利用して製造されています。天板は国産杉材のCLTを使用し、独特なデザインと高い強度を備えています。また、同じく国産杉材のCLTを用いたベンチもあり、座面や背もたれ、脚に3枚の板が組み合わされ、安定感と快適さを提供します。木材の暖かみと国産杉の香りを感じることができる贅沢なベンチです。

地球温暖化防止に貢献できる木材資源

木は炭素を貯蔵し、製造や加工時に発生する二酸化炭素の排出量が少なく、化石燃料の代替にもなるため、木材の利用は地球温暖化防止に貢献します。

国産材の積極利用と再生産によるリサイクルは、森林管理と保全に効果的です。内閣府が行った調査では、国民の木材利用への関心が高まっていることも分かりました。

◇温暖化防止への貢献

木材資源を利用することは、炭素の貯蔵、エネルギー集約的資材の代替、そして化石燃料の代替の3つの側面で、地球温暖化の防止に寄与します。

樹木は光合成によって二酸化炭素を取り込み、炭素を蓄えます。木材を建築物や家具などに利用することで、大気中の二酸化炭素を削減し、木造住宅や木造建築は温暖化防止に効果的です。

木材の製造や加工は他の資材よりも少ないエネルギーで行われ、製造や加工時の二酸化炭素排出量も少なく抑えられます。

また、木質バイオマス燃料は化石燃料よりも温室効果ガス排出量が少ないため、化石燃料の代替として利用することで、大気中への二酸化炭素の排出を抑制できます。

◇再生産によるサイクル

国産材の積極的に利用することにより山林の収益を増やせ、伐採後に適切な植林や整備を行うことで再生産によるリサイクルサイクルが可能になります。これにより、森林が適切に管理および保全され、地球温暖化を防止するだけでなく、森林の多様な機能も持続的に発揮できます。

◇木材への関心の高さ

令和元年に内閣府が行った「森林と生活に関する世論調査」によると、木材利用に関する国民の意識は高いことが示されました。調査では、建築物や製品に木材を利用すべきかどうかという質問に対し、88.9%の人が「利用すべき」と回答し、約6割の人がその理由として「触ったとき木のぬくもりが感じられる」や「気持ちが落ち着く」と挙げています。

木質廃材のさまざまな活用方法

木質廃材は、製材工場、プレカット工場、建築系廃材などから発生します。製材工場の木質廃材は、木材チップや燃料、プレカット工場の木質廃材はチップや家畜敷料、建築系木質廃材は燃料として活用されるのが一般的です。

◇製材工場

製材工場では製造工程で、木材の約4割が副製品や廃棄物になります。2003年の調査によると、廃材の32%が木材チップ、35%が家畜敷料に使用されています。製材工場から出た残廃材は、薬剤が混入されていないクリーンな資源であるため、木質ペレット原料やアルコール製造原料、生分解性プラスチック原料(ポリ乳酸)の製造にも最適です。

◇プレカット工場

住宅部材の加工する際に、廃材が発生します。2003年の調査によると、廃材の28%がチップ、22%が家畜敷料に活用されています。ただし、プレカット工場で発生する廃材には、防腐薬剤処理や接着剤などが混入している可能性があるため、プレカット工場の廃材は製材工場ほど活用されていません。

◇建築系廃材

建築系廃材は、住宅の解体材や新築に伴う廃材、コンクリート型枠材などです。建設リサイクル法が施行され、住宅の分別解体と廃材の再資源化が義務づけられたため、廃材資源の供給量が増加しました。

建築系廃材は、主に燃料として活用されますが、畜産が盛んな地域では家畜敷料としても活用されています。2000年の行った調査では、その割合は再資源化されるのが55%で、家畜敷料が39%でした。

隈研吾デザイン監修の木庵テーブル

隈研吾は、東京大学特別教授・名誉教授で、人と自然と技術が新しい関係が築ける建築を提案しています。隈研吾がデザインを監修した家具には、木庵テーブルと国産杉材ベンチがあります。いずれの原材料は、CLTで建築する木庵の製造過程で排出されるCLT材の端材です。

◇端材を利用したテーブル

天板には、国産杉材を3層3プライのクロスラミネーテッド材(CLT)を使用し、繊細な木組みの三脚がテーブルを支えています。空中に浮いているかのようなデザインが特徴的です。杉材の独特な風合いと、木の心地よい香りを愛でながら、リラックスした時間が過ごせる心地よい家具に仕上がっています。サイズは、大中小の3つです。

◇国産杉材のベンチ

座面、背もたれ、脚の3カ所に、国産杉材を使用した3層3プライCLTを使用しています。3枚の板が互いに支え合い自立する設計になっていて、CLTの力強い断面を誇りながら、絶妙なバランスで座った人の体をしっかりと支えます。使うたびに木の暖かな表情を感じることができ、国産杉の木の香りに包まれるベンチです。3人掛け、2人掛け、1人掛けの3サイズがあります。

CLTの活用で日本の森林や林業を守る

日本は森林資源に恵まれた国ですが、国産木材の利用は低下しています。CLTは、木材を層に積み重ねて接着した建築材料で、高い強度と耐久性が特徴です。CLTを積極的に活用することは国産木材の活用を増やし、森林の保全や再生に貢献します。林野庁のデータによれば、2022年の木材自給率は減少していますが、合板の国産材自給率においては増加傾向にあることが分かりました。

◇CLT家具で日本の森林を守る

国内の森林資源が豊富なのにもかかわらず、使用されている木材の多くは外国産で、国産木材の利用が低下しています。CLTは、木材を層に積み重ねて接着した建築材料で、その積層構造により非常に高い強度と耐久性を持ちます。

CLTは、家具や木造住宅だけでなく、中高層ビルの建設も利用可能です。CLTは日本の杉や檜などが原材料のため、その利用は国産木材の活用を増やし、森林の保全や再生にもつながります。

◇木材自給率は上昇傾向

林野庁の発表によると、2022年の日本の木材自給率は40.7%で、2021年に比べて0.4%減少となりました。この結果は、非建築用材やパルプ・チップ用材の輸入が増加したことが理由と考えられます。その一方で、合板の国産材自給率は前年比4.7%増の50.02%で、上昇傾向にあります。


日本の豊かな森林資源がありながら、国産木材の利用が低迷している状況があります。この課題に対処するため、CLT(Cross Laminated Timber)が注目を集めています。CLTは、木材を薄い板に切り分け、それを層に重ねて交互に貼り合わせることで作られる建築材料で、高い強度と耐久性を備えています。この特性から、CLTは建築物の構造材料として、特に中高層建築物や大規模な構造物の建設に適しています。

CLTの利用は、日本の森林資源の持続可能な利用に大きな可能性をもたらします。なぜなら、CLTの原料となる木材は、主に国内の杉やヒノキなどの木を使用するため、国産木材の需要を高める効果が期待されるからです。さらに、CLTの製造プロセスでは、木材を加工するためのエネルギーや資源の使用量が比較的少なく、また、木材の貯蔵によって炭素を固定する効果もあります。

これにより、日本の林業と森林保全の両方にポジティブな影響を与えます。林業においては、CLTの需要増加によって、伐採される木の価値が高まり、森林の持続可能な管理と再生が促進されます。また、森林保全においては、持続可能な管理が行われることで、森林の多様性や生態系の保全が図られます。

そのため、日本の森林資源の有効な利用と保全を両立させるために、CLTの活用が積極的に推進されるべきです。これによって、日本の森林や林業の活性化が促進され、同時に地球環境への貢献も期待されます。

CLTの橋梁や土木への利用で老朽化するインフラ問題を解決する

日本のインフラ問題は、高度経済成長期に建設された施設の老朽化が主な課題です。点検と補修が必要ですが、技術者の不足で作業が滞っています。持続可能なインフラ整備のためには、予防保全、新技術の活用、行政の連携が必要です。また、CLTを用いた橋梁建設が注目されており、林道や水路基礎、防雪柵などでの活用が進んでいます。

日本の老朽化するインフラ問題とは?

高度経済成長期に建設されたインフラが老朽化して、トンネル崩落や路面陥没などの事故が起こる危険性が高まっています。利便性と安全を確保するためには点検と補修が必要ですが、技術者の不足により作業が停滞しているのが現状です。

◇老朽化するインフラ

1960年代以降の高度経済成長を遂げた日本では、利便性や生活の質の向上を目的とした交通インフラとエネルギーインフラへの投資が加速しました。しかし、それから50年以上がたち、道路、橋、トンネル、上下水道などのインフラが老朽化して、トンネル崩落や路面陥没、コンクリート片の落下などのリスクも高まっています。

2022年版国土交通白書でも、2040年には建設後50年以上経過する道路橋の約75%を占めると報告しています。点検作業の頻度を増やしたり、質を向上したりすることには限界があり、大型インフラは簡単には作り直せないため、利便性と安全を確保しつつどのように維持していくかが今後の課題です。

◇技術者の不足

トンネルの天井板が落下した笹子トンネルの事故が発生し、国土交通省は2014年に「インフラ長寿命化計画」でインフラの維持補修の重要性を強調し、国が地方自治体に費用を補助する制度も整備されました。しかし、インフラの補修は、停滞しているのが現状です。

その理由は、費用の問題だけでなく人材不足にあります。橋やトンネルの点検は5年に一度行うのが義務ですが、この点検には技術者の人力が必要です。建設業界は人材不足だけでなく、高齢化も進んでおり、従事者の約25%が60歳以上となっていて技術者の不足が深刻化しています。

持続可能なインフラ整備に必要な対策とは?

持続可能なインフラ整備を実現するためには、予防保全、新技術の活用、行政の連携の3つが必要です。これにより、保全費用の軽減、技術者不足の問題解決、業務の効率化も期待できます。

◇予防保全

事故を未然に防ぐためには、問題が発生してから修復する事後保全から、施設に問題が発生する前に対策を講じる予防保全への転換が必要です。国土交通省が、2048年度(令和30年度)の管轄するインフラに必要な維持管理・更新費を見積もった結果、事後保全の1年あたりの費用は2018年度の約2.4倍、予防保全は事後保全の費用より約50%少なく、30年間の累計でも約30%減少する見込みです。

◇新技術の活用

技術者不足と維持管理・更新費の増大に対処するためには、新技術の活用が必要不可欠です。例えば、測量や調査にドローンを使えば、風速20m程度の強風下や水中でもデータの収集ができます。国土交通省でも、建設プロセスで得たデータを集約・共有し、地方公共団体のデータと連携させ、サイバー空間上で国土を再現する「インフラデータプラットフォーム」の構築を推進しています。

◇行政の連携

技術者不足の状況下で、老朽化した数多くのインフラを維持管理するためには、地方公共団体間および行政との連携も必要です。インフラの維持管理を民間委託で実施したり、市区町村と都道府県が業務を共同発注したりすれば、地方公共団体間の連携の強化と業務の効率化が図れます。

CLT床版を用いた橋梁の可能性とは?

秋田県仙北市の林道では、CLT床板を使って橋梁を建設し実証実験を行っています。CLTの大判パネルは、コンクリートよりも軽量で工期も短縮できるため、橋梁にも適した建材といえるでしょう。

◇CLT木橋

秋田県仙北市の林道には、CLT床版を使用した木製の橋梁があります。通常建物の壁材や床材に使われるCLTを使用しているのは、CLTの耐久性試験を行うのが目的です。CLT床版は木材の繊維方向と木口を交互に並べ、腐朽を防ぐために繊維強化プラスチック(FRP)シートでラッピングし防水性能を高めています。CLT床版の上には杉板材を敷き、この板材は定期的に交換します。CLT床版を使用すると、工期を短縮できるのも利点です。

◇大判パネルの長所を生かして

国内のメーカーが製造するCLTのサイズは複数ありますが、最大サイズは幅3m、長さ12m、厚さ270mmです。国産材のCLTにはスギ、ヒノキ、カラマツのラミナを使用しますが、単位体積重量はコンクリートの約1/6~1/4に過ぎません。CLTは大判パネルと軽量の長所を生かしてで、土木分野にも利用できます。CLT床版の懸念点は、活荷重の繰り返しによる疲労や木材の腐朽です。活荷重の疲労に関しては、繰り返し行ったCLT床版の曲げ疲労試験や輪荷重走行試験結果から、十分な疲労耐久性があることが確認されています。木材の腐朽を防ぐ方法としては、CLT全体をFRPシートでラッピングする方法や、ポリマーセメントでコーティングしたりする方法が検討されています。

土木分野への活用も進みつつあるCLT

CLTは土木分野でも活用することが可能です。これまでに農業用水路基礎の木杭に採用された事例があり、今後は落石防護工や木製ダムなどでの使用される可能性も考えられます。

◇農業用水路基礎の木杭として

秋田県の八郎渇干拓地の多くは排水が悪い重粘質土壌で、建設から40年経った農業用水路基礎には沈下が起きている箇所もあります。2015年に試験施工が行われ、CLTが木杭として採用されました。施工後は定期的に水路の沈下量を測定したところ、水路の沈下量は年間を通して問題ない範囲であることが確認されました。

◇木製防雪柵

木製防雪柵は吹雪対策ためのものですが、景観をよくしたり間伐材の利用を促進したりする目的で設置されることがあります。現在設置されている木製防雪柵は、丸太を加工したものが多く、耐用年数は約5~6.5年です。防腐処理を行うことで耐用年数を延ばせますが、鋼製防雪柵に比べて耐食性と耐久性が劣ります。

一部の木製防雪柵では、強度を補うために鋼材を使用していますが、コストが高くなるのがデメリットです。木製防雪柵へのCLTの利用が期待されますが、防雪柵におけるCLTの実績がないため引き続き研究が必要でしょう。

◇そのほかの可能性

将来的には、落石防護工、木製ダムなどへの活用も考えられます。落石防護工に活用する際は、大断面でラミナの層を厚くするなどの工夫が必要です。CLT は加工がしやすく放水路断面に沿って設計ができるため、木製ダムだけでなく、コンクリート製ダムの残存型枠や水叩工などにも利用できる可能性があります。


日本のインフラ問題は、高度経済成長期に建設された施設の老朽化が深刻な課題となっています。1960年代以降の経済成長に伴い、道路、橋梁、トンネル、上下水道などのインフラが大量に建設されましたが、これらの施設は年月が経つにつれて老朽化し、安全性が脅かされています。特に、老朽化が進んだ施設ではトンネル崩落や路面陥没などの事故が増加し、社会インフラの安全性が懸念されています。

このような状況下で、インフラの点検と補修が急務とされていますが、技術者の不足が問題となっています。橋やトンネルの点検作業は専門知識を要するため、技術者の不足が深刻化すると作業の停滞や遅延が発生し、施設の状態管理が困難になります。また、老朽化したインフラの修復や改修には莫大な費用がかかるため、財政的な制約も課題となっています。

インフラ整備において注目されているのがCLT(Cross Laminated Timber)を用いた橋梁の建設です。CLTは木材を積層して作られたパネルで、コンクリートよりも軽量でありながら強度が高いため、橋梁や建築物の建設に適しています。CLTを用いた橋梁は、工期の短縮や建設コストの削減にも貢献し、持続可能な都市開発に貢献する可能性があります。

CLTの新たな可能性と魅力を示す日本の建築事例を紹介

日本の建築界では、近年、CLTの活用が注目されています。その新たな可能性と魅力を示す建築事例を紹介します。これらの事例では、CLTを使用することで地域の厳しい気候条件にも対応した安全な建物が実現し、同時に持続可能な社会の実現や地域貢献にも貢献しています。それぞれの建築物が、CLTの持つ柔軟性や耐久性を最大限に活かし、美しく機能的な空間を創造しています。

開放性のあるルピシアニセコヴィレッジ新本社

断熱性と遮熱性に優れたCLTは新たな可能性に満ちた建材で、活用事例も着実に増えています。ニセコ町に新しく建設されたルピシアの新本社は、CLTと軸組在来工法を組み合わせることで、厳しい環境に対応できる安全な建物を実現しました。

◇概要

国内・海外合わせて100以上の店舗を持つルピシアの新本社です。ニセコ町に位置するルピシアの新本社は、2023年3月13日に開業しました。この新社屋は、羊蹄山を一望できる場所にあります。

建築には地元の道産カラマツの構造用集成材とCLTが使用され、耐力と破壊性状に優れた接合方法が確認されています。また、新本社周辺の5万坪の土地には、ビール工房や野菜茶工場があり、将来的には茶畑やハーブ園に囲まれたロッジや親水公園が整備される予定です。

オフィス内にはハイブリッド・ワークプレイスが設けられ、柔軟で快適な働き方が可能です。中庭や窓からの景色、多様なコラボレーションスペースなど、創造性を刺激する環境が整えられています。

竣工年月:2023 年2 月
延べ床面積:625.65㎡
CLT利用部分:壁・屋根
所在地:北海道虻田郡ニセコ町字羊蹄

◇CLTと軸組在来工法のハイブリッド

この建物は、ニセコ町の厳しい気候条件と短い工期に対応するために、木造平屋建ての計画が立てられました。特に、積雪量が2mを超える地域であるため、構成部材数を削減するためにCLT部材が使用されました。

円形平面を採用することで外壁面の長さを短縮し、内部仕上げを省略することで工期を短縮しました。円形の形状により、外周壁のみで必要な水平耐力を満たすことができ、内部には余計な耐震壁が必要ありません。放射状に配置されたカラマツ集成材の柱や梁とCLT部材により、シンプルで堅牢な構造が実現されました。

また、屋根においてもCLT部材を露出させることで、美しく安価な接合方法が採用されました。屋根は耐雪型であり、自然の断熱材としても機能するように設計されています。この建物は、風土に根ざしたエコフレンドリーな建築として、北海道の気候条件に適した設計が施されています。

トイグループホールディングスCLT新社屋

株式会社イトイグループホールディングスの新社屋は、「誰でも気軽に立ち寄れる場所」をコンセプトに建てられました。CLT工法にこだわり、サスティナブルでリラックス感のある建物です。

◇概要

トイグループホールディングスの新社屋は、2020年6月1日に移転しました。この社屋のコンセプトは、「誰でも気軽に立ち寄れる場所」であり、環境負荷を小さくし、デザイン性豊かな空間を目指しています。

北海道産のトドマツを使用したCLTは、壁、2階床、屋根に採用され、建物の耐力や耐久性を高めるとともに、デザイン上の柔軟性を提供しています。また、バイオマスボイラーによる床暖房を採用し、地域の木材資源を活用しています。

これは、地域社会への貢献とSDGsへの取り組みを反映したものです。さらに、この建物は特別豪雪地帯に位置しており、-30℃になる厳しい気候条件下でも優れた温熱環境を提供することが求められます。

工法と地域環境の相性や省エネ性能の実証的な検証も行われています。CLTパネルの使用により、大空間オフィスを実現し、建物内外のデザイン性を高め、地域内での発展に寄与するアイコン的な建物として位置付けられています。また、短い工期で建設が行われ、雪の影響を受けないよう工程計画が立てられています。

竣工年月:2020月2月
延べ床面積:464.8㎡
CLT利用部分:外壁、2階床、屋根
所在地:北海道士別市朝日町中央4527番地89

◇特徴的なV字壁

最も印象的なのが、スキージャンプをイメージしたV字壁と斜行壁です。V字壁には、同じ厚みと同じ幅のラミナを直交させて積層・圧着させたCLTが使われていて、その上にラミナを貼り仕上げています。1階天井部分の梁柱構造に、大型パネル(短辺方向最大9mスパン)を2枚重ねることで、無柱のリラックス感のある広々としたオフィスを実現できました。

工期短縮を実現~株式会社大林組仙台梅田寮

株式会社大林組は、持続可能な社会の実現を目指し、長期間にわたって二酸化炭素を固定できる木造・木質化建築に積極的に取り組んでいます。壁に使うCLTパネルと天井をユニット化するCLTユニット工法を開発し、高品質かつ短工期での施工を実現しました。

◇概要

株式会社大林組仙台梅田寮は、1階がRC造、2、3階部分が木造のハイブリッド構造で、建物4棟が中庭を囲む設計になっています。国産スギ材を925m³使用した建物は、536tの二酸化炭素を固定することが可能です。木のぬくもりを感じられ、利用者の健康と住まいの快適性の向上効果を期待できます。

竣工年月:2023年3月
延べ床面積:3,677.47m²
CLT利用部分:壁
所在地:宮城県仙台市青葉区梅田町1丁目

◇CLT工法で工期短縮

これまでは、CLTパネルを現場にパネルを搬入してから組み立てていましたが、組み立てたユニットを搬入するCLTユニット工法を採用しています。門型の形状に組み立てるのが特徴で、これにより中型の4tトラックでの運搬も可能です。

事前に、約120個のユニットを組み立てておくことで、S造とよりも工期を約1.5ヵ月短縮できました。株式会社大林組のCLTユニット工法は、ユニットの品質確保、人件費削減、騒音・振動の低減にも効果を発揮します。

CLTの現しが特徴的な兵庫県林業会館

兵庫県林業会館は、構造体CLTを現しで使用している耐火建築物です。CLTパネル、フローリング、椅子などに兵庫県産の木材を利用することで、サスティナブルな社会の実現と森林サイクルの促進に貢献しています。

◇概要

鉄骨ラーメン構造とCLT耐震壁を組み合わせた地上5階建てのビルです。ハイブリッド構造で、防火性と耐震性に優れています。壁、フローリング、内装材、椅子に至るまで地元の木材を使用することで、循環型林業にも貢献しています。メディアで取り上げられ、2022年日本建築学会作品選集新人賞、令和元年度木材利用優良施設なども受賞している建築物です。

竣工年月:2019年1月
延べ床面積:1,567㎡
CLT利用部分:外周部
所在地:兵庫県神戸市中央区北長狭通5丁目5-18

◇CLTパネルを現しで使用

防火地域では建築基準法に従い、屋根、壁、柱、梁、床など建物の主要構造部に耐火性能に優れた建材を使った、耐火建築物を建てなくてはいけません。兵庫県林業会館のあるエリアは防火地域で、兵庫県林業会館はCLTパネルを現しで使用した最初の耐火建築物です。

CLTパネルとガラス壁を交互に配置することで、建物全体が市松模様になっています。木目を生かしたスタイリッシュな印象で、ライトが灯る夜はさらに斬新なデザインが引き立ちます。


開放的な環境であるニセコ町に位置するルピシアの新本社や、トイグループホールディングスの新社屋、さらには株式会社大林組仙台梅田寮や兵庫県林業会館など、CLTを活用した建築事例を紹介しました。

これらの建築物では、CLTと軸組在来工法を組み合わせることで、厳しい気候条件にも対応できる安全な建物が実現されています。特に、北海道や宮城県などの厳しい気候条件下での建設が行われており、CLTの特性を活かした設計や工法が工期の短縮や耐久性の向上に貢献しています。

また、これらの建築物は地元の木材資源を活用し、サスティナビリティや地域貢献にも配慮しています。耐火性能を持つCLTパネルを活用したり、循環型林業の促進を図るために地元産の木材を使用したりしています。

これらの事例は、CLTを活用した建築が持つ潜在的な可能性や、地域の環境条件に合わせた設計・施工が重要であることを示しています。また、持続可能な社会の実現や地域コミュニティの発展に向けた取り組みが反映されている点も注目されます。

CLT活用事例~子供たちの笑顔が未来を照らす気仙小学校

気仙小学校は、東日本大震災により全壊した気仙町において、復興の象徴として輝いています。旧気仙小と長部小が統合され、新たな校舎が誕生。その木造2階建ての校舎は、地域の活性化を図る「風のホール」として地域住民との協力で生まれ変わりました。CLTを活用したこの校舎は、地域の文化や活性化に寄与し、未来を担う子供たちの笑顔と共に地域の希望を照らしています。

一本松で親しまれる陸前高田市とは?

陸前高田市は、一本松で有名な東北地方の岩手県に位置する都市です。この街は、歴史的な震災の記憶が刻まれる場所でもありますが、地域の温かい人々や美しい自然など、魅力溢れる要素が多く詰まった街です。

◇ノーマライゼーションという言葉のいらないまち

陸前高田市は岩手県の東南端に位置し、比較的温暖な気候で知られています。陸前高田市は、障害の有無や年齢、地域の出身に関係なく、すべての人が快適に過ごせるまちづくりに力を注いでいます。

その魅力は、リアス式海岸から始まり、多彩な海岸風景や山岳地帯、釣りやハイキングが楽しめる自然が満ちています。さらに、平泉・中尊寺の歴史的価値や金山、名水20選に選ばれた湧き水など、自然が生み出す名所が豊富です。地理的にも恵まれ、比較的温暖な気候が市民の生活を支えています。

震災からの教訓を活かし、全ての市民が笑顔で暮らせる共生社会を築くため、「ノーマライゼーション」という言葉を使わずに、誰もが自然な形で共存できる社会を目指しています。

◇奇跡の一本松

陸前高田市は震災の記憶が刻まれる地域で、特に高田松原は昔から植林され、約7万本の松が生い茂っていました。しかし、東日本大震災の津波でほとんどの木が倒れ、その中で1本だけが奇跡的に生き残りました。

それが「奇跡の一本松」です。しかし、津波の影響で後に枯れ、同じ形で立て直され、今もなお、津波の猛威を物語るモニュメントとして保存されています。

陸前高田の復興はどのようになっている?

陸前高田の復興は、東日本大震災の甚大な被害を受けた後、地域の結束と努力によって進行しています。地域住民や支援団体、行政の協力によって、復興が着実に進展しており、未来への希望と活力を取り戻しつつあります。

◇被害状況

陸前高田市は、東日本大震災により震度6弱を記録し、甚大な津波被害を受けました。津波被害では、8,000世帯以上が被災し、ほとんどの世帯が全壊しています。公共施設も市庁舎や中央公民館、図書館などが大きな被害を受け、海岸防潮堤にも被害が及びました。

このような壊滅的な被害により、市民生活や基盤施設に大きな影響が及び、復興には長い時間が必要とされました。

◇かさ上げ工事

陸前高田市の復興において、大規模なかさ上げ工事が重要な一環となっています。かさ上げ工事とは、津波や冠水による床上浸水被害を防ぐために、既存の住宅をジャッキ等で持ち上げ、基礎や1階部分を高くすることです。津波被害が顕著な陸前高田市では、地震による被害以上に津波の影響が深刻であり、地形によってかさ上げの高さが異なります。

最大で10メートルほどのかさ上げが行われており、他の被災地域と比較しても大規模な工事が必要です。このかさ上げ工事は、復興に時間がかかる一方で、津波被害を軽減し、将来の災害に備えたまちづくりを目指して進行しています。

◇住宅再建

陸前高田市の復興では、住宅再建が最優先事項とされています。被災者の安全な居住環境を確保し、まちの再生を進めるために、様々な取り組みが行われています。災害復興公営住宅等整備事業では、895戸の建設が完了し、被災市街地復興土地区画整理事業では、高台の宅地が整備されました。

防災集団移転促進事業においても、28団地の造成工事が完了し、住宅再建が進行中です。これらの取り組みにより、被災者の生活再建やまちの復興が着実に進んでいます。

◇食産業

その他にも、食産業が復興において重要な役割を果たしています。水産業では、津波で浸水した気仙町の長部地区に水産加工業者が集まる工業団地が形成され、県内外から11社が新たに進出しました。これにより、原材料の調達から生産まで一貫した体制が築かれています。

農業分野では、復興のシンボルとなる新品種「たかたのゆめ」の栽培が開始され、作付面積は順調に増加しています。これらの取り組みにより、陸前高田市の食産業が再生し、地域経済の活性化に寄与しています。

復興を象徴となった気仙小学校

気仙小学校は、東日本大震災後の復興を象徴する存在であり、地域社会において特別な役割を果たしています。この学校は、復興の象徴に加えて、地域の未来を担う子供たちの成長と笑顔が、地域全体の希望となっています。

◇概要

気仙小学校は、東日本大震災によって全壊した気仙町において、復興の象徴となった学校です。震災前は気仙小と長部小の2つの小学校が存在していましたが、震災により気仙小が全壊しました。その後、長部小を間借りし、両校の児童が合同学習を行っていました。

しかし、復興構想に基づき、両校は統合され、新生気仙小として25年に開校しました。新しい校舎は木造2階建てであり、切妻屋根が特徴的です。この校舎は開放的であり、安らぎや居心地の良さを演出しています。気仙小学校は、地域の復興と共に生まれ変わった学びの場として、地域にとって重要な存在となっています。

◇地域で活用される「風のホール」

CLTが使用された活用事例として、「風のホール」とも呼ばれる気仙小学校があります。この学校は、地域住民との緊密な協力のもと、設計段階では積極的な意見交換が行われました。

綾井代表は、「こちらが思いもよらなかった魅力的なデザインが、地域の方から提案されたことを、非常にうれしく思う。住民の皆様がデザインを高めてくださった学校」と述べ、地域の協力に感謝を表明しています。(出典: 参考文献)。

地域住民の方からは、風のホールがコミュニティの中心として期待されています。そして、この学校では校舎内にティンバラムのCLTが使用されており、地域の活性化や文化の発展に向けて高い関心が寄せられています。

[出典: 参考文献] https://tohkaishimpo.com/2017/09/27/176491/

子供たちの笑顔が未来を照らす新校舎

子供たちの笑顔が未来を照らす新校舎は、気仙町にとって復興の象徴となり、地域全体に誇りをもたらしています。子供たちが笑顔で活動し成長する様子は、地域に希望と活力を与えています。

◇避難所としても利用された旧校舎

新しい校舎が建設される一方で、津波によって全壊した旧校舎は、その後も重要な役割を果たしました。震災後、旧校舎は被災者の避難所として利用され、多くの人々の命を守りました。校庭には応急仮設住宅が立ち並び、被災者の生活を支えた存在です。このように、新旧の校舎は震災後の地域の中心的存在となり、被災者の支援や生活再建に貢献しています。

◇復興の象徴となった新校舎

復興の象徴となった新校舎は、地域代表や児童会長からの感謝と期待に満ちた声で溢れています。地域代表は、「たくさんの思い出をつくった場所。校舎に大感謝と『お疲れさまでした』という思いを改めて伝えたい」と述べ、新しい校舎でも同じように勉強やスポーツに取り組むよう呼びかけました(出典: 参考文献)。

児童会長も笑顔で、「入学したときのドキドキ、ワクワクした気持ちを今でも覚えている。今年は校舎で運動会やマラソン大会ができ、とても思い出に残っている」と述べ、新校舎での活動に喜びを示しました(出典: 参考文献)。震災で壊滅的な被害を受けたこの学校は、復興の喜びと期待に満ちた新たな学びの場となっています。

[出典: 参考文献]https://tohkaishimpo.com/2018/12/26/233363/


陸前高田市は、東日本大震災の記憶が刻まれる岩手県の都市であり、一本松で知られています。この街は、温かい地域住民や美しい自然があり、全ての人が快適に過ごせるまちづくりに力を注いでいます。

震災からの復興では、被害状況を踏まえた大規模なかさ上げ工事や住宅再建が進行し、食産業も地域経済の再生に貢献しています。

気仙小学校は、東日本大震災後の復興の象徴として、地域社会において特別な役割を果たしています。震災により全壊した校舎は、統合を経て新生気仙小学校として生まれ変わり、開放的で居心地の良い校舎が建設されました。

この新校舎は地域の協力によって設計され、地域の活性化と文化の発展に寄与しています。子供たちの笑顔が未来を照らす一方で、津波で被災した旧校舎は避難所としても利用され、地域の中心的存在として貢献しました。新校舎は地域代表や児童会長から感謝と期待の声を受け、復興の喜びと希望に満ちた学びの場となっています。

国産檜を活用した建築事例FLAT WOODS 千石

木造建築の素材として、CLTが注目を集める中、国産檜の魅力を最大限に活かした建築事例、「FLATS WOODS 千石」が話題を集めています。FLATS WOODS 千石は、在来軸組工法とCLTパネル工法のハイブリッド構造を採用し、建物の外観や内部デザインにもこだわりが見られます。その美しいデザインと持続可能性が評価され、優秀賞を受賞するなど、木造建築の未来を拓く一例として注目されています。

ウッドショックがもらたした危機とは?

ウッドショックがもたらした危機は、世界的な木材需要の急増と供給不足が重なり、価格が異例の高騰で推移しています。さらに、ロシアのウクライナ侵攻による経済制裁など、国際情勢の影響も加わり、輸入材だけでなく国産材も価格も上昇傾向にあります。

◇ウッドショックの原因

ウッドショックは、木材価格の急激な上昇を指し、世界的な木材需要の増加と供給不足が背景にあります。アメリカではコロナ禍に伴う住宅需要の増加やリモートワークの普及があり、これがウッドショックのきっかけとなりました。

その後、世界中で木材の取り合いが起こり、価格が高騰しました。更に、ロシアのウクライナ侵攻による経済制裁が追い打ちをかけ、世界全体の木材輸出に影響を与えています。これにより、木材の入手が難しくなり、価格が高騰する状況が続いています。

◇輸入材だけでなく国産材も値上がり

ウッドショックにより、輸入材だけでなく国産材も価格上昇の波に巻き込まれました。2021年12月と2022年3月の木材・木製品の国内価格は、前年同月比でそれぞれ61%と59%上昇し、上昇が続いています。

輸入価格の上昇が国内価格にも反映され、合板などの製品でも上昇基調が続いています。また、輸入材と国産材、製材と他の素材との代替の動きも影響していると考えられるでしょう。これにより、住宅建材価格の上昇も生じ、住宅需要の動向が注目されています。

◇価格は依然として高い水準

ウッドショックがもたらした影響により、価格は依然として高い水準で推移しています。輸入価格や集成材、製材は、緩やかな低下傾向にありながらも、合板や丸太は上昇を継続しており、国内価格も合板を除いて高止まりの傾向です。今後は輸入価格の動向によって国内価格が高水準を維持し、新築戸建売買取引なども軟調な展開が予想されます。

ウッドチェンジの切り札となるCLTとは?

木造建築の革新的な素材として注目を集めるCLT(Cross Laminated Timber)は、ウッドチェンジ(Wood Change)の切り札として位置付けられています。CLTは、複数の木材を交互に積層し、接着剤で固めて作られた高性能な構造材であり、その優れた特性から、建築業界で革新的な用途が広がっています。

◇ウッドチェンジとは

ウッドチェンジは、木造建築や身の回りのものを木で置き換える運動を指します。林野庁が2005年から始めたこの運動では、主に建築や住宅で木材を使用することが焦点です。具体的には、高層ビルや商業施設などで木材を建材として活用する取り組みが挙げられます。その中でも特にCLTは、強度や耐火性などの特性から、ウッドチェンジの中で特に注目されています。

◇注目されるCLT

近年、木造建築の技術開発が進み、特に注目されるのがCLTを用いたハイブリッド建築です。CLTは、木の繊維の方向が直角に交わるように積層接着された木質系材料で、建築構造材や土木用材、家具などに使用されます。

耐震・耐火性に優れるほか、断熱性や遮音性も高く、工場内でのプレハブ化に適しており、施工工期の短縮が可能です。木造率を高める必要性が指摘される中、CLTは高層建築や小規模な建物でも利用され、木の魅力と環境への配慮を両立させる重要な役割を果たしています。

◇コストが課題

CLTを利用したパネル工法は、新たな木造工法として注目されていますが、コストが課題とされています。CLTの価格は1m3あたり約150,000円であり、他の材料と比べて割高であり、価格競争力が劣っています。

ウッドチェンジにおいて、国産木材の利用を促進することが重要視されていますが、高コストの解決が急務です。耐久性に関しても他の材料に比べて安定した供給が難しく、ハイブリッド材料の開発や改良が求められています。

国産檜を活かしたFLATS WOODS 千石

FLATS WOODS 千石は、国産檜を活用したCLTの建築事例です。木の素材を活かし、都市部においても自然と調和する暮らしを提供しています。

◇概要

FLATS WOODS 千石は、省エネルギーや森林循環に配慮した、魅力的な木造住宅の計画です。このプロジェクトでは、国産の檜を使用し、25㎡のワンルームの社宅や賃貸住宅を提供しています。

建物の構造には在来軸組工法とCLTパネル工法のハイブリッド構造を採用しています。国産檜を使用した魅力的なCLTパネルと効率的な架構システムを組み合わせ、外観や内部のデザインにこだわりました。

外観は、住戸の最小限のユニットを積み重ねた構造で、軒天と壁のCLTパネルをライトアップして、一つの大きな家としての温かさを演出しています。また、木の香りが漂う住まいとなるように、内部もCLTの国産檜で仕上げられています。

◇コンクールで受賞

FLATS WOODS 千石は、2021年3月22日に竣工し、2021年10月29日に開催された「令和3年度木材利用優良施設コンクール」で優秀賞を受賞しました。この施設は、在来木軸と国産檜を使用したCLTパネル工法のハイブリッド木構造を採用しています。

この受賞は、FLATS WOODS 千石が健康的で温もりのある生活空間を提供するだけでなく、二酸化炭素の排出を抑制し、建築物における炭素の蓄積を増大させることで地球温暖化を防止し、循環型社会の形成に貢献することを評価されたものです。

この受賞は、木材を活用した建築物としてのFLATS WOODS 千石の高い評価を示しており、持続可能な未来への貢献が期待されています。

抗菌作用も期待できる檜の効果

檜には、様々な効果が期待できます。見た目の美しさだけでなく、耐久性やリラックス効果、抗菌作用などがあります。

◇木目の美しさ

木目とは、木材の表面に現れる繊細な模様や模様の配置のことを指します。桧の木目は非常に美しく、整った木肌をしています。これは、桧の木材が緻密で均一な繊維構造を持っているためです。その結果、桧の表面には美しい模様が現れ、光沢があります。

桧の木目は長期間使用してもその美しさが保たれます。この美しい木目は、建築物だけでなく、家具や内装など様々な場所で重宝されています。さらに、司馬遼太郎など多くの人によって称賛されており、その美しさは広く認知されています。

◇高い耐久性

桧は非常に高い耐久性を持っています。日本最古の木造建築である法隆寺など、歴史的建築物にも使用されていますが、1300年以上経ってもその状態を保っています。このような長期間にわたる維持が、桧の耐久性の高さを証明しています。

また、シロアリや腐朽菌にも強く、湿気にも強い特性があります。このため、建築物や歴史的建造物の材料として最適です。また、伐採後も強度が増し、最大の耐久性を持つのは伐採後200年経った時点であり、その後もゆっくりと強度が低下していきます。

さらに、桧は他の木材と比較しても、材質の強さや収縮率などの各項目で優れており、鉄筋コンクリートのような建築材料と比べても耐久性が高いと言えます。

◇リラックスできる

檜の香りは、リラックス効果があり、気分を前向きにし、心を落ち着かせ、疲れを和らげるアロマ効果があるとされています。桧風呂や桧酒器など、日常生活でも様々な形で活用されてきました。このリラックス効果は森林浴と類似しており、アロマオイルや芳香剤にも桧の香りが活用されています。

◇抗菌作用

桧に含まれるαカジノールには抗菌作用があり、ダニやシロアリの発生を抑制する効果もあります。たとえば、カーペットや布団の下に敷く防ダニシートには桧精油が使われており、その効果でダニは桧の木屑の中で死滅することが確認されています。

また、実験により97%のアンモニア臭を消せるという実証結果もあります。このように、檜を利用することで美しさだけでなく、耐久性やリラックス効果、抗菌作用などの効果に期待できるでしょう。


ウッドショックは、世界的な木材需要の増加と供給不足により価格が急騰しました。これにはコロナ禍に伴う住宅需要の増加やリモートワークの普及が拍車をかけました。さらに、ロシアのウクライナ侵攻による経済制裁も影響を与え、輸入材と国産材の価格が上昇しました。

この状況下で、木造建築の革新的素材としてCLTが注目され、ウッドチェンジの中でも特に重要視されています。CLTは、耐震性や耐火性に優れ、建築物のプレハブ化に適しており、木造建築の可能性を広げる一因となっています。

一方で、CLTの利用には高コストが課題となっており、国産木材の活用やハイブリッド材料の開発が求められています。国産檜を活かした建築事例では、FLATS WOODS 千石が優秀賞を受賞し、持続可能な木造建築の未来を示唆しています。

CLTで耐火性を確保した建築事例Port Plus

木造建築の安全性向上と環境への配慮を両立した建築物として注目を集める「Port Plus」は、CLT(Cross Laminated Timber)を用いて耐火性を確保した革新的な建築事例です。この高層純木造耐火建築物は、木材の耐火性と高層構造における耐震性の課題に対処し、新たな都市木造建築の可能性を切り拓くものとして、建築界で大きな注目を集めています。

木造建造物における耐火構造とは?

木造建造物の安全性向上を図る上で、耐火性は極めて重要な要素です。耐火構造とは、火災が発生した際に建物の構造が火の勢いに耐え、火災の拡大を抑制する役割を果たす仕組みや構造のことを指します。特に木造建造物では、素材の性質上、火災リスクが高まるため、適切な耐火構造が求められます。

◇耐火と準耐火構造とは

木造建造物の耐火構造は、火災が発生した際に主要な構造部が一定の時間、高温や炎に耐え、建物が倒壊することなく自立し続ける性能を指します。この性能は、一般的に耐火建築物と準耐火建築物、その他建築物に分類されます。


耐火建築物は、主要な構造部に特殊な耐火被覆材を用いて設計され、火災後も建物が崩壊しない構造です。これにより、消防活動に頼らずとも建物が持続することが期待されます。
一方、準耐火建築物は、一定時間の火災に耐える能力を持ちます。これらの建物では、特別な耐火被覆を用いずに、柱や梁を特殊な設計で構築し、火災が発生しても一定のレベルまでの火災に対応できるようにしています。


このように、耐火構造と準耐火構造は、木造建造物が火災に対してどれだけ耐えられるかを示す重要な要素であり、それぞれ異なる設計や材料の選択が必要です。

◇燃えしろ設計とは

燃えしろ設計とは、建築物の柱や梁などの木材部分を、火災時に燃え落ちることを想定して設計する手法です。通常よりも柱を太くし、柱の表面が燃えても建物が崩壊しないよう工夫がされています。

火災時には木材が燃えるため、耐えられる応力度が低下し、建物の崩壊の原因となります。しかし、燃えしろ設計では、構造計算を行い、燃えしろ部分を除いた柱の太さを計算します。

火災が発生した場合、建物の崩壊を防ぐことで避難を支援し、消火活動に間に合うことで建物のリフォームや火災の拡大を防ぐ効果があります。さらに、各部材ごとに設けられる燃えしろによって、耐火時間が設定され、これが燃えしろ設計に基づく準耐火建物の特徴となります。

CLTの耐火性を確保するには?

CLTの耐火性を確保することは、木造建築の安全性を高める上で重要であり、特殊な耐火被覆材の使用や燃えしろ設計などの技術が用いられます。これらの取り組みによって、CLTを用いた建築物が火災に遭遇した際にも、被害を最小限に抑えることができるでしょう。

◇概要

CLTは、木造建築物の耐火性における課題を抱えています。しかし、CLTの耐火性を確保する技術としてオメガウッドが挙げられます。オメガウッドは、大断面の木材を使用して超ロングスパンの構造物を構築するための技術であり、低炭素循環型社会の要求に応えるものです。


オメガウッドでは、部材表面に燃えしろとなる層を設けることで、3時間の耐火性を実現しています。また、耐震性や剛性を高めるために、十字形の剛接合仕口ユニットが使用されています。さらに、プレハブ形式を採用することで、製作精度を向上させ、施工を効率化し、工期を短縮することが可能です。


オメガウッドの特徴は、耐火性や耐震性、製作精度の向上、効率的な施工などがあり、これらが中高層木造建築の実現に貢献しています。また、コンクリートを使用しないため、施工時の騒音やほこりを抑制し、環境に配慮した建築が可能になります。

◇メリット

オメガウッドには、さまざまな利点があります。まず、CLTはつづり材で一体化された大断面材を使用することで、従来の二次接着に比べて材料コストが半減し、納期も3分の2に短縮されます。

また、ビスを使用することで製作コストも削減できます。さらに、強度や含水率が厳密に管理された信頼性の技術により、高い精度を実現することが可能です。加工前には、LVL表面にコンピューター制御によるプレカット加工や穴あけが行われるため、複雑な仕口も高精度に製作されます。

燃えしろ設計に関しても、様々な燃焼実験が実施され、火災時の安全性が検証されています。デザイン面でも、補強鋼板を完全に隠し、美しさと安全性を両立させた空間が実現できるでしょう。

さらに、耐震要素として構造用合板が採用され、鋼材ブレースのないシンプルな空間が創り出されます。外部から取り付ける防火被覆を先に施すことで、内側からは木部が見える設計が可能となります。

高層純木造耐火建築物Port Plus

高層純木造耐火建築物「Port Plus」は、木材の耐火性と高層構造における耐震性の課題に対処するため、革新的な開発技術を採用しています。この建築物は、木造建築の耐火性と耐震性の問題を解決し、都市木造建築の新たな可能性を切り拓くものとして、今注目を集めています。

◇概要

Port Plusは、全ての地上構造部材を木材で構築した高層純木造耐火建築物です。樹木は光合成によりCO2を吸収し、建築物への木材利用は長期間CO2を固定することで脱炭素社会の実現に貢献します。

サーキュラーエコノミーの観点からも注目され、多くの人から関心が高まっている建築事例のひとつです。Port Plusは、神奈川県に自社の次世代型研修施設として建設され、知識の交流と研修を行っています。

◇環境に配慮

Port Plusは、1,990m³の木材を使用し、約1,652tのCO2を長期間、安定的に固定する環境に配慮した建築物です。建築から解体、廃棄までの全体のライフサイクルでは、鉄骨造と比較して約1,700t(約40%)のCO2削減に期待できます。

地上構造部材にコンクリートを使用しないため、コンクリート打設時の粉じんやほこり、騒音などを抑制し、周辺環境への配慮にも貢献しています。さらに、事前に工場で部材を製作することで、施工品質の向上と施工スピードの向上を実現し、1フロアの施工期間を大幅に短縮しました。

◇耐火性・耐震性

Port Plusは、木材の耐火性や高層化による耐震性の課題に対処するため、独自の開発技術を採用しています。具体的には、3時間の耐火性を実現した構造材「オメガウッド(耐火)」や、鉄骨造やRC造と同等の強度・剛性を確保するための接合法「十字形の剛接合仕口ユニット」などが挙げられます。

これにより、木造建築における耐火性と耐震性の課題を解決し、新たな都市木造建築の可能性を実現しています。

木造建築でリラックス効果を高める

木造建築は、地球環境を守り、人にやさしい住環境を提供しています。木の温もりや自然な風合いが心地よく、建物内部に自然の温かさと安らぎをもたらしてくれるでしょう。木造建築は、リラックス効果を高める魅力があり、日常生活の中で心地よい癒しの場を提供します。

◇森林を守る

木造建築は、森林を守り、地球環境に優しい建築物です。まず、樹木が二酸化炭素を吸収し、酸素を放出することで大気を浄化し、地球温暖化の防止に貢献します。また、森林は多様な生物の生息地であり、生物多様性の保護にも寄与するでしょう。

さらに、森林は水を保全し、私たちの生活に欠かせない資源を提供しています。持続可能な森林管理は、伐採と再植林を組み合わせて森林を維持し、生態系の安定と環境の保全に貢献します。

◇人にやさしい

木造建築は、人に優しい環境を提供します。木材は熱を伝えにくく、建物内を暖かく保つため、足元の冷えを和らげ、疲労感を軽減することが可能です。また、木は衝撃を吸収し、安全性が高く、滑りにくく歩きやすい特性があります。

さらに、木材は湿度を調整しやすいため、快適な環境を提供します。これらの理由から、木造建築はリラックス効果を高め、居住者に心地よい空間を提供することが可能です。


木造建造物における耐火構造は、火災が発生した際に建物の構造が火の勢いに耐え、火災の拡大を抑制する役割を果たす重要な要素です。主要な構造部が一定の時間、高温や炎に耐える耐火性や、火災発生時に安全な避難を支援する準耐火性が求められます。

燃えしろ設計では、火災時に柱や梁が燃え落ちることを想定し、建物の崩壊を防ぐ仕組みが取られます。CLTの耐火性を確保するためには、特殊な耐火被覆材や燃えしろ設計が用いられます。 特にオメガウッド技術は、大断面の木材を使用して耐火性を高めるとともに、耐震性や製作精度の向上に貢献しています。

高層純木造耐火建築物「Port Plus」は、木材の耐火性と耐震性の課題に対処するための革新的な技術を採用し、木造建築の新たな可能性を示しています。

2023年CLT建築事例に見える学びや暮らしの空間の革新

CLTは耐久性と安全性に優れ、オフィスや公共施設などで幅広く利用されています。助成金や補助制度の整備が普及を後押しし、革新的な手法が採用された事例も増加しています。新しい建築手法の導入や地域コミュニティーの支援が、CLT建築の可能性を広げる鍵となります。

普及が進むCLT建築の現状とは?

CLTの建築物完成件数は令和5年度に累計1,000件を超える見込みです。CLTは耐久性と安全性を兼ね備えた建築素材で、オフィス、公共施設、商業施設など様々な用途で利用されています。また、CLT建築には助成金があり、JAS構造材の普及を支援する取り組みが行われています。

◇着工件数の推移

令和5年度には、CLT(Cross Laminated Timber)を使った建築物の完成件数が累計で1,000件を超えると予測されています。令和元年度以降、全国各地でCLTの利用が始まり、その数は増加の一途をたどっています。

CLTの普及には、その優れた特性と環境への配慮が大きく寄与しています。CLTは木材の美しさと強度を活かしつつ、建築物の耐久性と安全性を向上させることができます。

◇CLT建築の用途

CLTは高い強度と柔軟性により、オフィスビル、公共施設、商業施設、倉庫など、多岐にわたる建築物に対応しています。プレファブ化による施工期間の短縮や、シンプルな接続部品により、専門的な技術を持たない人でも施工が可能であることが特徴です。

また、CLTはその軽さと強度から、地震に強い建築物を作ることもできます。これらの特性は、CLTが幅広い用途で利用される理由となっています。

◇CLTの助成金

CLT建築実証事業では、非住宅用建築物に対する補助金が支給されています。この補助金は、JAS構造材の利用促進を目指した普及・実証活動を支援し、特に革新的なプロジェクトには大きな助成が行われます。

また、都市部での木材需要拡大や、サステナブルな建築の推進に関する国の補助制度も充実しています。

CLT建築の普及における課題とは?

設計者は、CLT建築の施工管理に不慣れであることが課題です。解決策は、施工情報の整備や公開、防水や防耐火被覆の標準化、CLTの調達価格の明確化です。施工者も同様に経験不足があります。CLT施工情報の整備や見学会の実施が必要です。建築主の課題は予算超過です。ローコストなCLT建材の開発や施工工程の短縮が解決策です。

◇設計者の課題

設計者が直面する課題の1つは、CLT建築の施工管理に関する経験不足です。解決策として、施工情報の整備や公開が必要です。特に、防水や防耐火被覆などの詳細な標準化とディテール集の整備が重要です。

また、クリーンウッド法や木材の認証制度への対応も必要です。さらに、CLTの調達や価格に関する不明確さが課題ですが、積算基準や見積項目の標準化とコスト情報の公開が解決策となります。

不具合やトラブルに不安がある場合は、対策事例集の制作やトラブル回避の手引きの提供が必要です。

◇施工者の課題

施工主には、CLT建築の施工管理経験が不足している課題があります。解決策として、CLT施工情報の整備や官庁発注工事の見学会実施が挙げられます。また、防水・防火性能の標準化やクリーンウッド法への対応も重要です。また、CLTの調達や価格の不透明さを解消するために、積算基準の標準化やコスト情報の公開が必要です。さらに、不具合対策や維持管理計画の立案にも取り組む必要があります。

◇建築主の課題

建築主が直面する課題の1つは、予算超過です。解決策として、ローコストなCLT建材の開発と実用化が挙げられます。また、施工工程の短縮や構工法の改善により、コストを抑えた施工ができます。

さらに、少量・多品種の需要に対応するため、CLT建材の設計手法や供給体制を充実させる必要があります。維持メンテナンス費用の不透明さも課題ですが、耐久性向上の技術情報や維持管理計画の構築を行うことで、費用の把握と効率的な管理が可能です。

木材利用のメリットが不明確な場合は、CO2削減効果や経済性などの情報提供が必要です。

2023年に竣工したCLT建築事例

革新的な建築手法を活用した複数の建築事例が進行中です。大型5軸加工機を使用したCLTの3次元加工や、厚板集成材の壁とスラブを組み合わせたFMT構法などが採用されています。これらのプロジェクトは東京都や神奈川県などで実施され、建築の可能性を広げています。

◇学ぶ、学び舎

このプロジェクトでは、大型5軸加工機を使って3D加工されたCLTを一時的な型枠として使い、その上に最小限のコンクリートを流し込むという新しい建築手法が開発されました。この方法により、約20mのスパンを持つRC(鉄筋コンクリート)建築が実現しました。この建物は2023年8月に完成し、東京都小金井市にあります。

◇江北小路

このプロジェクトでは、都市部の建物で一般的な1階のテナントスペースを確保しつつ、壁の量を削減するために、厚板集成材の壁とスラブ・鉄骨逆梁を使ったFMT構法を採用しています。さらに、3階とR階のスラブにはCLTが使われています。この建物は2023年9月に、東京都足立区で完成しました。

◇ヒルトップ野毛山

このプロジェクトは、都市部での木質建築の普及を促進するため、壁や床スラブなどの建築構造材をすべてCLTで製作したフルCLTのパネル構造として設計されました。この建物は2023年7月に、神奈川県横浜市に完成しました。

これらのプロジェクトは、建築の可能性を追求し、新しい技術や材料を導入しています。

最新事例から見える新しい建築の世界

学び舎は、子供たちの創造性や好奇心を刺激し、学びと遊びを融合させます。江北小路は、木密地域のコミュニティーを支え、地域社会の結束力を高めます。ヒルトップ野毛山は、ダブルウォール工法を採用し、建築家にデザインの自由度を提供します。これらの事例は、建築が私たちの生活に与える影響を示しています。

◇学ぶ、学び舎

学び舎は、学びと遊びをつなぎ合わせた空間を提供します。ここでは、子供たちの創造性や好奇心を刺激し、自然と学びを結びつけることができます。この環境では、子供たちが自分らしく表現し、新しいことを楽しみながら学ぶ場が提供されます。

◇ 江北小路

江北小路は、木々が密集した地域のコミュニティーを支えています。この地域の建物は、地域社会の結束を強め、住民同士が助け合う雰囲気を醸し出します。こうした取り組みは、地域の文化や伝統を守りながら、新しい生活様式を受け入れることを可能にします。

◇ヒルトップ野毛山

ヒルトップ野毛山は、ダブルウォール工法を使って、自由度の高い建築を実現しています。この手法は、建築家にデザインの自由度を大幅に広げ、ユニークで革新的な建物を生み出すことができます。美学だけでなく、機能性と効率性も追求されることを示しています。

これらの事例から、建築が社会や個々の生活にどのような影響を与えるかが理解できます。建築は、私たちの生活を豊かで充実したものにするために欠かせない要素であり、その価値は計り知れません。


CLT建築の普及が進み、令和5年度には累計1,000件以上の完成が見込まれます。耐久性と安全性を備えたCLTは、オフィスや公共施設など多岐にわたる用途で利用されています。

CLTの普及を後押しするため、助成金や補助制度が整備されています。また、最新のCLT建築事例では、革新的な手法が採用され、都市部でも木質建築の普及が促進されています。

設計者や施工者、建築主が直面する課題には、施工管理の経験不足やCLTの調達価格の不透明さがあります。これらの課題に対処するため、施工情報の整備や助成金制度の充実が必要です。

また、新しい建築手法の導入や地域コミュニティーの支援を通じて、CLT建築の可能性が拡がっています。