国産檜を活用した建築事例FLAT WOODS 千石
国産檜を活用した建築事例FLAT WOODS 千石
2024/03/30
木造建築の素材として、CLTが注目を集める中、国産檜の魅力を最大限に活かした建築事例、「FLATS WOODS 千石」が話題を集めています。FLATS WOODS 千石は、在来軸組工法とCLTパネル工法のハイブリッド構造を採用し、建物の外観や内部デザインにもこだわりが見られます。その美しいデザインと持続可能性が評価され、優秀賞を受賞するなど、木造建築の未来を拓く一例として注目されています。
ウッドショックがもらたした危機とは?
ウッドショックがもたらした危機は、世界的な木材需要の急増と供給不足が重なり、価格が異例の高騰で推移しています。さらに、ロシアのウクライナ侵攻による経済制裁など、国際情勢の影響も加わり、輸入材だけでなく国産材も価格も上昇傾向にあります。
◇ウッドショックの原因
ウッドショックは、木材価格の急激な上昇を指し、世界的な木材需要の増加と供給不足が背景にあります。アメリカではコロナ禍に伴う住宅需要の増加やリモートワークの普及があり、これがウッドショックのきっかけとなりました。
その後、世界中で木材の取り合いが起こり、価格が高騰しました。更に、ロシアのウクライナ侵攻による経済制裁が追い打ちをかけ、世界全体の木材輸出に影響を与えています。これにより、木材の入手が難しくなり、価格が高騰する状況が続いています。
◇輸入材だけでなく国産材も値上がり
ウッドショックにより、輸入材だけでなく国産材も価格上昇の波に巻き込まれました。2021年12月と2022年3月の木材・木製品の国内価格は、前年同月比でそれぞれ61%と59%上昇し、上昇が続いています。
輸入価格の上昇が国内価格にも反映され、合板などの製品でも上昇基調が続いています。また、輸入材と国産材、製材と他の素材との代替の動きも影響していると考えられるでしょう。これにより、住宅建材価格の上昇も生じ、住宅需要の動向が注目されています。
◇価格は依然として高い水準
ウッドショックがもたらした影響により、価格は依然として高い水準で推移しています。輸入価格や集成材、製材は、緩やかな低下傾向にありながらも、合板や丸太は上昇を継続しており、国内価格も合板を除いて高止まりの傾向です。今後は輸入価格の動向によって国内価格が高水準を維持し、新築戸建売買取引なども軟調な展開が予想されます。
ウッドチェンジの切り札となるCLTとは?
木造建築の革新的な素材として注目を集めるCLT(Cross Laminated Timber)は、ウッドチェンジ(Wood Change)の切り札として位置付けられています。CLTは、複数の木材を交互に積層し、接着剤で固めて作られた高性能な構造材であり、その優れた特性から、建築業界で革新的な用途が広がっています。
◇ウッドチェンジとは
ウッドチェンジは、木造建築や身の回りのものを木で置き換える運動を指します。林野庁が2005年から始めたこの運動では、主に建築や住宅で木材を使用することが焦点です。具体的には、高層ビルや商業施設などで木材を建材として活用する取り組みが挙げられます。その中でも特にCLTは、強度や耐火性などの特性から、ウッドチェンジの中で特に注目されています。
◇注目されるCLT
近年、木造建築の技術開発が進み、特に注目されるのがCLTを用いたハイブリッド建築です。CLTは、木の繊維の方向が直角に交わるように積層接着された木質系材料で、建築構造材や土木用材、家具などに使用されます。
耐震・耐火性に優れるほか、断熱性や遮音性も高く、工場内でのプレハブ化に適しており、施工工期の短縮が可能です。木造率を高める必要性が指摘される中、CLTは高層建築や小規模な建物でも利用され、木の魅力と環境への配慮を両立させる重要な役割を果たしています。
◇コストが課題
CLTを利用したパネル工法は、新たな木造工法として注目されていますが、コストが課題とされています。CLTの価格は1m3あたり約150,000円であり、他の材料と比べて割高であり、価格競争力が劣っています。
ウッドチェンジにおいて、国産木材の利用を促進することが重要視されていますが、高コストの解決が急務です。耐久性に関しても他の材料に比べて安定した供給が難しく、ハイブリッド材料の開発や改良が求められています。
国産檜を活かしたFLATS WOODS 千石
FLATS WOODS 千石は、国産檜を活用したCLTの建築事例です。木の素材を活かし、都市部においても自然と調和する暮らしを提供しています。
◇概要
FLATS WOODS 千石は、省エネルギーや森林循環に配慮した、魅力的な木造住宅の計画です。このプロジェクトでは、国産の檜を使用し、25㎡のワンルームの社宅や賃貸住宅を提供しています。
建物の構造には在来軸組工法とCLTパネル工法のハイブリッド構造を採用しています。国産檜を使用した魅力的なCLTパネルと効率的な架構システムを組み合わせ、外観や内部のデザインにこだわりました。
外観は、住戸の最小限のユニットを積み重ねた構造で、軒天と壁のCLTパネルをライトアップして、一つの大きな家としての温かさを演出しています。また、木の香りが漂う住まいとなるように、内部もCLTの国産檜で仕上げられています。
◇コンクールで受賞
FLATS WOODS 千石は、2021年3月22日に竣工し、2021年10月29日に開催された「令和3年度木材利用優良施設コンクール」で優秀賞を受賞しました。この施設は、在来木軸と国産檜を使用したCLTパネル工法のハイブリッド木構造を採用しています。
この受賞は、FLATS WOODS 千石が健康的で温もりのある生活空間を提供するだけでなく、二酸化炭素の排出を抑制し、建築物における炭素の蓄積を増大させることで地球温暖化を防止し、循環型社会の形成に貢献することを評価されたものです。
この受賞は、木材を活用した建築物としてのFLATS WOODS 千石の高い評価を示しており、持続可能な未来への貢献が期待されています。
抗菌作用も期待できる檜の効果
檜には、様々な効果が期待できます。見た目の美しさだけでなく、耐久性やリラックス効果、抗菌作用などがあります。
◇木目の美しさ
木目とは、木材の表面に現れる繊細な模様や模様の配置のことを指します。桧の木目は非常に美しく、整った木肌をしています。これは、桧の木材が緻密で均一な繊維構造を持っているためです。その結果、桧の表面には美しい模様が現れ、光沢があります。
桧の木目は長期間使用してもその美しさが保たれます。この美しい木目は、建築物だけでなく、家具や内装など様々な場所で重宝されています。さらに、司馬遼太郎など多くの人によって称賛されており、その美しさは広く認知されています。
◇高い耐久性
桧は非常に高い耐久性を持っています。日本最古の木造建築である法隆寺など、歴史的建築物にも使用されていますが、1300年以上経ってもその状態を保っています。このような長期間にわたる維持が、桧の耐久性の高さを証明しています。
また、シロアリや腐朽菌にも強く、湿気にも強い特性があります。このため、建築物や歴史的建造物の材料として最適です。また、伐採後も強度が増し、最大の耐久性を持つのは伐採後200年経った時点であり、その後もゆっくりと強度が低下していきます。
さらに、桧は他の木材と比較しても、材質の強さや収縮率などの各項目で優れており、鉄筋コンクリートのような建築材料と比べても耐久性が高いと言えます。
◇リラックスできる
檜の香りは、リラックス効果があり、気分を前向きにし、心を落ち着かせ、疲れを和らげるアロマ効果があるとされています。桧風呂や桧酒器など、日常生活でも様々な形で活用されてきました。このリラックス効果は森林浴と類似しており、アロマオイルや芳香剤にも桧の香りが活用されています。
◇抗菌作用
桧に含まれるαカジノールには抗菌作用があり、ダニやシロアリの発生を抑制する効果もあります。たとえば、カーペットや布団の下に敷く防ダニシートには桧精油が使われており、その効果でダニは桧の木屑の中で死滅することが確認されています。
また、実験により97%のアンモニア臭を消せるという実証結果もあります。このように、檜を利用することで美しさだけでなく、耐久性やリラックス効果、抗菌作用などの効果に期待できるでしょう。
ウッドショックは、世界的な木材需要の増加と供給不足により価格が急騰しました。これにはコロナ禍に伴う住宅需要の増加やリモートワークの普及が拍車をかけました。さらに、ロシアのウクライナ侵攻による経済制裁も影響を与え、輸入材と国産材の価格が上昇しました。
この状況下で、木造建築の革新的素材としてCLTが注目され、ウッドチェンジの中でも特に重要視されています。CLTは、耐震性や耐火性に優れ、建築物のプレハブ化に適しており、木造建築の可能性を広げる一因となっています。
一方で、CLTの利用には高コストが課題となっており、国産木材の活用やハイブリッド材料の開発が求められています。国産檜を活かした建築事例では、FLATS WOODS 千石が優秀賞を受賞し、持続可能な木造建築の未来を示唆しています。