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CLTの橋梁や土木への利用で老朽化するインフラ問題を解決する

CLTの橋梁や土木への利用で老朽化するインフラ問題を解決する

2024/04/22

日本のインフラ問題は、高度経済成長期に建設された施設の老朽化が主な課題です。点検と補修が必要ですが、技術者の不足で作業が滞っています。持続可能なインフラ整備のためには、予防保全、新技術の活用、行政の連携が必要です。また、CLTを用いた橋梁建設が注目されており、林道や水路基礎、防雪柵などでの活用が進んでいます。

日本の老朽化するインフラ問題とは?

高度経済成長期に建設されたインフラが老朽化して、トンネル崩落や路面陥没などの事故が起こる危険性が高まっています。利便性と安全を確保するためには点検と補修が必要ですが、技術者の不足により作業が停滞しているのが現状です。

◇老朽化するインフラ

1960年代以降の高度経済成長を遂げた日本では、利便性や生活の質の向上を目的とした交通インフラとエネルギーインフラへの投資が加速しました。しかし、それから50年以上がたち、道路、橋、トンネル、上下水道などのインフラが老朽化して、トンネル崩落や路面陥没、コンクリート片の落下などのリスクも高まっています。

2022年版国土交通白書でも、2040年には建設後50年以上経過する道路橋の約75%を占めると報告しています。点検作業の頻度を増やしたり、質を向上したりすることには限界があり、大型インフラは簡単には作り直せないため、利便性と安全を確保しつつどのように維持していくかが今後の課題です。

◇技術者の不足

トンネルの天井板が落下した笹子トンネルの事故が発生し、国土交通省は2014年に「インフラ長寿命化計画」でインフラの維持補修の重要性を強調し、国が地方自治体に費用を補助する制度も整備されました。しかし、インフラの補修は、停滞しているのが現状です。

その理由は、費用の問題だけでなく人材不足にあります。橋やトンネルの点検は5年に一度行うのが義務ですが、この点検には技術者の人力が必要です。建設業界は人材不足だけでなく、高齢化も進んでおり、従事者の約25%が60歳以上となっていて技術者の不足が深刻化しています。

持続可能なインフラ整備に必要な対策とは?

持続可能なインフラ整備を実現するためには、予防保全、新技術の活用、行政の連携の3つが必要です。これにより、保全費用の軽減、技術者不足の問題解決、業務の効率化も期待できます。

◇予防保全

事故を未然に防ぐためには、問題が発生してから修復する事後保全から、施設に問題が発生する前に対策を講じる予防保全への転換が必要です。国土交通省が、2048年度(令和30年度)の管轄するインフラに必要な維持管理・更新費を見積もった結果、事後保全の1年あたりの費用は2018年度の約2.4倍、予防保全は事後保全の費用より約50%少なく、30年間の累計でも約30%減少する見込みです。

◇新技術の活用

技術者不足と維持管理・更新費の増大に対処するためには、新技術の活用が必要不可欠です。例えば、測量や調査にドローンを使えば、風速20m程度の強風下や水中でもデータの収集ができます。国土交通省でも、建設プロセスで得たデータを集約・共有し、地方公共団体のデータと連携させ、サイバー空間上で国土を再現する「インフラデータプラットフォーム」の構築を推進しています。

◇行政の連携

技術者不足の状況下で、老朽化した数多くのインフラを維持管理するためには、地方公共団体間および行政との連携も必要です。インフラの維持管理を民間委託で実施したり、市区町村と都道府県が業務を共同発注したりすれば、地方公共団体間の連携の強化と業務の効率化が図れます。

CLT床版を用いた橋梁の可能性とは?

秋田県仙北市の林道では、CLT床板を使って橋梁を建設し実証実験を行っています。CLTの大判パネルは、コンクリートよりも軽量で工期も短縮できるため、橋梁にも適した建材といえるでしょう。

◇CLT木橋

秋田県仙北市の林道には、CLT床版を使用した木製の橋梁があります。通常建物の壁材や床材に使われるCLTを使用しているのは、CLTの耐久性試験を行うのが目的です。CLT床版は木材の繊維方向と木口を交互に並べ、腐朽を防ぐために繊維強化プラスチック(FRP)シートでラッピングし防水性能を高めています。CLT床版の上には杉板材を敷き、この板材は定期的に交換します。CLT床版を使用すると、工期を短縮できるのも利点です。

◇大判パネルの長所を生かして

国内のメーカーが製造するCLTのサイズは複数ありますが、最大サイズは幅3m、長さ12m、厚さ270mmです。国産材のCLTにはスギ、ヒノキ、カラマツのラミナを使用しますが、単位体積重量はコンクリートの約1/6~1/4に過ぎません。CLTは大判パネルと軽量の長所を生かしてで、土木分野にも利用できます。CLT床版の懸念点は、活荷重の繰り返しによる疲労や木材の腐朽です。活荷重の疲労に関しては、繰り返し行ったCLT床版の曲げ疲労試験や輪荷重走行試験結果から、十分な疲労耐久性があることが確認されています。木材の腐朽を防ぐ方法としては、CLT全体をFRPシートでラッピングする方法や、ポリマーセメントでコーティングしたりする方法が検討されています。

土木分野への活用も進みつつあるCLT

CLTは土木分野でも活用することが可能です。これまでに農業用水路基礎の木杭に採用された事例があり、今後は落石防護工や木製ダムなどでの使用される可能性も考えられます。

◇農業用水路基礎の木杭として

秋田県の八郎渇干拓地の多くは排水が悪い重粘質土壌で、建設から40年経った農業用水路基礎には沈下が起きている箇所もあります。2015年に試験施工が行われ、CLTが木杭として採用されました。施工後は定期的に水路の沈下量を測定したところ、水路の沈下量は年間を通して問題ない範囲であることが確認されました。

◇木製防雪柵

木製防雪柵は吹雪対策ためのものですが、景観をよくしたり間伐材の利用を促進したりする目的で設置されることがあります。現在設置されている木製防雪柵は、丸太を加工したものが多く、耐用年数は約5~6.5年です。防腐処理を行うことで耐用年数を延ばせますが、鋼製防雪柵に比べて耐食性と耐久性が劣ります。

一部の木製防雪柵では、強度を補うために鋼材を使用していますが、コストが高くなるのがデメリットです。木製防雪柵へのCLTの利用が期待されますが、防雪柵におけるCLTの実績がないため引き続き研究が必要でしょう。

◇そのほかの可能性

将来的には、落石防護工、木製ダムなどへの活用も考えられます。落石防護工に活用する際は、大断面でラミナの層を厚くするなどの工夫が必要です。CLT は加工がしやすく放水路断面に沿って設計ができるため、木製ダムだけでなく、コンクリート製ダムの残存型枠や水叩工などにも利用できる可能性があります。


日本のインフラ問題は、高度経済成長期に建設された施設の老朽化が深刻な課題となっています。1960年代以降の経済成長に伴い、道路、橋梁、トンネル、上下水道などのインフラが大量に建設されましたが、これらの施設は年月が経つにつれて老朽化し、安全性が脅かされています。特に、老朽化が進んだ施設ではトンネル崩落や路面陥没などの事故が増加し、社会インフラの安全性が懸念されています。

このような状況下で、インフラの点検と補修が急務とされていますが、技術者の不足が問題となっています。橋やトンネルの点検作業は専門知識を要するため、技術者の不足が深刻化すると作業の停滞や遅延が発生し、施設の状態管理が困難になります。また、老朽化したインフラの修復や改修には莫大な費用がかかるため、財政的な制約も課題となっています。

インフラ整備において注目されているのがCLT(Cross Laminated Timber)を用いた橋梁の建設です。CLTは木材を積層して作られたパネルで、コンクリートよりも軽量でありながら強度が高いため、橋梁や建築物の建設に適しています。CLTを用いた橋梁は、工期の短縮や建設コストの削減にも貢献し、持続可能な都市開発に貢献する可能性があります。

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