CLT国産材にこだわる製造メーカー4選~国産材の将来性
CLT国産材にこだわる製造メーカー4選~国産材の将来性
2023/08/01
木の質感と温もり、そして持続可能な建築資材としての優れた特性から、木造建築は今、世界的に注目を集めています。特にCLTは、その高い強度と安定性から革新的な木造建築の可能性を広げ、新たな建築トレンドを切り開いています。そして、ここ日本でも、自国の森林資源を有効活用するため、国産材を使ったCLTの開発と製造が進んでいます。
本稿では、国産材を用いたCLT製造に力を注ぐ4つの企業をご紹介します。各企業の取り組みを通じて、国産材によるCLTの魅力とその将来性を探っていきましょう。
国産材CLTを推進する理由
日本は世界でも有数の森林国であり、その面積は国土の約66%にもなります。しかし、林業の担い手不足や森林の荒廃といった問題が存在し、これらの森林資源を効率的に利用するための新たな手段が求められています。そこで注目されているのが、国産材を使用したCLTの推進です。
CLTは木材を効率的に活用でき、その施工も容易で、工期の短縮も可能という特徴を持つため、利用適齢期を迎えた人工林からの木材の有効活用とともに、新たな林業労働力の創出や林業の活性化に寄与する可能性があります。これらの取り組みは、国内の森林の循環を促進し、持続可能な森林管理の実現につながります。
また、CLTを使った建築物はコンクリート製品に比べて軽量であり、建物の基礎工事などの簡素化にもつながります。これは地震国日本においては特に重要な要素であり、建築物の安全性を高める可能性があります。
さらに、CLTは木材が吸収する二酸化炭素を「固定化」するため、地球温暖化防止にも寄与します。これは、環境問題として急務の課題である温室効果ガス削減において、国産CLTの利用推進は非常に有益な取り組みと言えます。
このように、国産材CLTの推進は森林の有効活用、林業の活性化、建築物の安全性向上、環境保護といった複数の視点から見ても、日本の持続可能な未来を形成する上で重要な役割を果たすことができるでしょう。
国産材活用の将来性は?
前述した通り、耐震性と防火性に優れたCLTは、地震が多く、豊富な森林資源を持つ日本にとって、非常に有用な建築材料と言えます。一方で、いくつかの課題も存在します。しかし、その普及が急速に進む中で、それらの課題への解決策が見つかっています。ここで課題とその解決策について解説していきます。
施工経験の不足
CLT建築の施工管理についての知識や経験が不足しているという問題に対しては、施工者向けの教育と情報共有が必要です。これには、施工管理のポイントや工事記録の公開、CLT建築の特有の施工詳細や納まりの標準化などが含まれます。また、クリーンウッド法推進や木材認証制度利用の助成・補助制度を整備することで、法規制への対応もサポートされます。
設計手法の理解と適用の難しさ
設計者がCLTを適切に設計し利用するためには、設計手法の簡略化や標準化、詳細な設計情報の公開、そしてCLT建築モデルによる防耐火設計の解説書の提供が必要です。これらは設計者がCLTを理解し、その使用を促進する手段となります。
設計に自身のアイデアや工夫を反映させる困難さ
設計者が自身のアイデアや工夫を設計に反映させやすくするためには、CLTの仕様の拡張や新しい塗料・接着剤の適用が提案されています。さらに、部材接合方法の多様化や異種材料との合成構造設計手法の整備も重要となります。これにより、設計者はCLTをより広範に利用することが可能になります。
コストが高い
コスト問題では、CLTという材料そのものの高価さと、それを使用するための関連コストが問題となっています。これらが解決されれば、CLTの普及可能性が高まると言われています。適正価格を確保するために、在庫や価格情報の整備、地域材利用の相談窓口の整備、価格競争力のあるCLT建材の開発への助成・補助事業などが提案されています。
CLTには確かにいくつかの課題が存在しますが、国はその普及を進めるために積極的に働きかけており、補助金制度の設定や新たな構造計算基準の確立など、特別な認可がなくてもCLTを使用した建築が可能になるような政策を推進しています。これらの取り組みにより、CLTの将来性はますます高まっています。
国産材にこだわるCLTメーカー4選
当メディアで厳選した国産材CLTを製造しているメーカー4選ご紹介します。
協同組合オホーツクウッドピア
協同組合オホーツクウッドピアは、北海道の持続可能な木材資源を活用した製造業の企業です。そのビジョンは「植える」「育てる」「活用する」のサイクルを通じて、北海道の森と共存することです。北海道産のカラマツ、トドマツ、スギを原料に用い、環境にやさしい循環型の事業を展開しています。
構造用集成材とCLTを主力に生産しています。施工実績としては、北見市立留辺蘂小学校や芽登集落センターなどがあり、その品質と信頼性が評価されています。これらの建物では、北海道産のカラマツを用いた構造用集成材やCLTが使用されています。
株式会社サイプレス・スナダヤ
株式会社サイプレス・スナダヤは日本農林規格(JAS)に適合した構造用集成材と無垢製材品の製造・販売を行う「JAS認証工場」です。2018年に新工場を開設し、最新鋭の機械を導入し、一貫生産が可能な体制を整えています。特に、大量生産を可能にする「LINCK(リンク)」社の製材機械を導入し、製材効率を向上させています。また、持続可能な森林資源の管理と環境に配慮した「クリーンウッド法」適合木材の使用にも注力しています。
銘建工業株式会社
銘建工業株式会社は、1923年の創業以来、製材、集成材、木造建築、バイオマス、そして近年ではCLTに至るまで、木材の可能性を追求し続けてきた企業です。国内最大の構造用集成材とCLTのメーカーであり、木造建築のエキスパートとして一貫したサービスを提供しています。
同社は、集成材の納期即応力、安全性、品質に優れており、ISO9001と森林認証(PEFC/FSC)を取得しています。また、国内最大のCLT生産工場であり、設計から施工までの技術サポート体制を確立しています。CLTの耐火評価や集成材のラーメンフレームなどの技術認定を取得しており、地元の国産材を使った集成材やCLTの製造にも取り組んでいます。これらすべてが銘建工業の「木を使い切る」企業文化を具現化しています。
ティンバラム株式会社
ティンバラムは、木造建築の全工程を担当する企業です。構造設計から集成材の製造、プレカット、施工までを一貫して行うことで、木造建築の可能性を広げています。同社は、あらゆる種類の集成材を作り上げます。特に大規模木造建築に必要な大断面集成材の製造が可能で、大スパンの広い空間やデザイン性の高い意匠を実現できます。
さらに同社は木造建築の可能性を発信し広げるために、東京にビジネスハブを設けています。ここでは多彩な樹種と加工の現物を見ることができ、全国の製造拠点と常時オンラインでつながっており、スピーディな相談・商談が可能です。
国産材CLTを推進する理由とCLTを課題とその先に見える将来性。当メディアが厳選したCLTを扱うメーカー4社を紹介しました。国産材CLTの推進は、日本の持続可能な社会を実現する上で重要です。
一方で供給量の確保や製造技術の開発などの課題も存在します。しかしその中でも、今回紹介した4つのメーカーは、それぞれ独自の取り組みを進め、CLTの可能性を追求しています。国産材CLTは、日本の建築業界を変え、環境問題解決の一助ともなり得る重要な素材です。これらのメーカーの活動を通じてCLTの可能性を感じていただきたいと思います。