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いま注目の木造高層建築!大手ゼネコンから住宅メーカーまで参入

いま注目の木造高層建築!大手ゼネコンから住宅メーカーまで参入

2023/07/28

木造高層建築は現在、建築業界で注目を浴びています。その背景には、環境に優しい持続可能な建築物の需要の高まりと、特にCLT(Cross-Laminated Timber)などの新たな木材技術の進化があります。これにより、大手ゼネコンから住宅メーカーまで、幅広い業者が木造高層建築への参入を始めています。

大手ゼネコンの取り組みは

大手ゼネコンでは、長年にわたる経験と技術力を活かし、木造の高層建築物を設計・施工するプロジェクトが進行中です。一方、住宅メーカーもまた、木造高層建築の可能性を追求しています。家庭用の建築物から高層マンションまで、さまざまなスケールでの木造建築物の開発が進められています。

例えば清水建設では井上和幸社長率いるチームが、岡山大学津島キャンパスで特別なプロジェクトを進行中です。その名も「岡山大学共育共創コモンズ」。この建物は、木製の特殊なパネル、CLT(Cross Laminated Timber:直交集成板)を用いて建てられています。

「岡山大学共育共創コモンズ」は、新しく設立された工学部の学生たちが学び、地域や企業と共同で活動する場として計画されました。そしてこの建物の特徴的な部分、それは国内最大級のスパン18mの大空間を生み出すCLTの大梁部材です。

このプロジェクトは、世界的な建築家である隈研吾氏が監修を務め、清水建設が設計と施工を手掛けています。隈研吾氏は国立競技場にCLTを活用したことでも知られています。木質素材を積極的に活用する建築家としても有名です。

カーボンシンクとしてのCLT

これらの動きは、木造高層建築が現代の都市に取り入れられる一方で、木材が提供する自然の質感と温かみを活かした設計が、より一般的になることを示しています。また、これらの建築物は、建物自体が炭素を吸収しストックする「カーボンシンク」の役割を果たすため、都市の炭素排出量の削減にも寄与します。

カーボンシンクとは、大気中の二酸化炭素(CO2)を自然の中に取り込むことです。森林や海藻などの生物が、大気中のCO2を吸収して地中や海底に保管します。ただし、森林伐採などにより、CO2を吸収する自然の力が減少しています。

地球温暖化対策には、二酸化炭素を減らす「緩和策」と、気候変動に対応する「適応策」の2つがあります。どちらも重要で、CO2の排出を抑えるだけでなく、どのように吸収するかも考えなければなりません。

カーボンシンクは、大量のCO2を吸収できます。例えば、土壌には大気中の二酸化炭素の1.8倍、陸上植物の2.3〜3.3倍の炭素が含まれています。また、マングローブ林や海草藻場などの再生は、毎年の温室効果ガス排出量の約0.5%を吸収できます。

地球上の炭素は、大気、土壌、海水、岩石など、さまざまな場所で循環しています。例えば、海は大気中のCO2を吸収し、植物は光合成でCO2を吸収します。

しかし、産業革命以来、大気中のCO2が増え、海と土壌のCO2吸収量も増えています。これが海の酸性化を進め、生態系に影響を与えています。

地球温暖化対策としては、CO2排出量を減らすだけでなく、吸収量を増やすことも必要です。そのためには、人間が直接CO2を取り出し保管する「炭素固定」などの方法も考えられています。ただし、これには多くのエネルギーが必要で、CO2排出量を減らしながら吸収量を増やす緩和策を進める必要があります。

大手ゼネコンが取り組むCLT高層建築

大林組が2022年8月にオーストラリアで受注した木造ハイブリッド構造の高層ビルは、世界最高となる「39階建て・高さ182m」の規模で、非常に話題を集めました。このプロジェクトは、オフィス、宿泊施設、店舗エリアからなる複合施設で、7階から上階は鉄骨とCLT(Cross Laminated Timber:直交集成板)を採用した木造ハイブリッド構造です。

このビルは、持続可能な都市開発の一環として計画されました。CLTの採用により、建物自体に木材の温かみと鉄骨の強度を組み合わせたデザインが特徴です。

オフィススペースは最新のテクノロジーを導入し、快適な労働環境を提供します。宿泊施設は、ホテルやサービスアパートメントとしての機能を持ち、ビジネス旅行者や観光客に対応します。

店舗エリアでは、レストランやカフェ、専門店などが入居します。地元産の食材を使用した料理や、オーストラリアの文化を感じられる商品の展示販売など、地域と連携した施設になる予定です。

このプロジェクトは、木造建築の可能性を広げるとともに、都市の持続可能な発展に貢献する重要な取り組みとして、世界中から注目されています。

また木でタワーマンションをつくるというプロジェクトも始動しています。東洋ハウジング株式会社(本社:千葉県鎌ケ谷市、代表取締役社長:西峰 秀一)は、国土交通省のサステナブル建築物等先導事業(木造先導型)に採択され、CLTパネル工法を用いた地上15階建て(木造14階、RC1階)の高層共同住宅を建設するプロジェクト、「東洋木のまちプロジェクト(高層棟)」を開始したことを2021年11月に発表しました。

このプロジェクトは、日本における木造建築初の15階建てとなります。1階部分は鉄筋コンクリート(RC)造で、2階から15階までは木造(CLTパネル工法)です。地震の影響を抑制するため、基礎部には免振装置が設置されます。

耐震性を確保するため、CLT耐力壁を放射状に配置し、上階から下階の壁に直接圧縮力を伝えることで、床へのめり込みを防ぐ工夫がなされています。また、火災対策として、外壁には2時間耐火の大臣認証を取得しています。

このプロジェクトは、二酸化炭素の貯蔵量が約1,678トンと、一般的な約100平方メートルの住宅約100棟分に相当します。これにより、地球温暖化対策に寄与します。さらに、地域の工務店による施工が可能となるよう、接合方法等に配慮しています。

「東洋木のまちプロジェクト」では、この高層棟の他にも木造商業施設の低層棟とCLT住宅のモデルハウスも建設する予定です。このプロジェクトは、地域に根差した小規模工務店が施工し、木造高層建築の可能性を提案する画期的な取り組みとなっています。


このように、建築業界が木造高層建築に目を向け、その可能性を追求することで、私たちの都市はより持続可能で、人間と自然が共生する形へと進化していくことでしょう。木造高層建築は、未来の都市景観を大きく変える可能性を秘めています。

画像出典:https://www.toyo-housing.jp/kinomachi/

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