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CLTとS造・RC造の比較と国産材活用の未来

CLTとS造・RC造の比較と国産材活用の未来

2023/08/31

画像出典先:一般社団法人 日本CLT協会

CLTによる建築が年々増加していますが、都市部の高層ビルやマンションなどは未だS造やRC造で建てられることが多いです。S造やRC造はどのような特徴があるのか、メリット・デメリットも押さえて、CLTとの違いも比較します。

CLT以外の代表的な工法S造やRC造と比較

現在ではCLTで建築されることも多くなってきましたが、以前はS造やRC造などといった工法が主流でした。S造とは、骨組みに鉄を使用している構造のことです。主にマンションやアパート、倉庫、工場、体育館などの建築物で用いられています。S造は素材の厚みによって呼び方が異なるのも特徴です。厚さが6mm以上の場合は「重量鉄骨造」、6mm未満の場合は「軽量鉄骨造」といいます。

この重量鉄骨造と軽量鉄骨造はそれぞれ工法が異なります。まず重量鉄骨造の建物を建築する場合、柱や梁を溶液で接着し一体化させ鉄骨ラーメン構造を用いて建築します。このラーメン構造は、設計の自由度が高くさまざまな空間を設計する際に用いられている工法です。

軽量鉄骨造は、柱や梁をボルトで固定する鉄骨軸組工法(ブレース工法)が用いられています。この工法は木造での工法と同じで、柱や梁は鉄骨を使用しています。RC造とは、鉄筋コンクリート造のことをいいます。主に都心の高層ビルやマンションで採用されていることが多い工法です。

鉄筋とコンクリートで形成するため重量鉄骨造と同様、設計にある程度の自由度があるのも特徴です。このようにCLTとS造、RC造では使用されている素材が異なります。そのため、コスト面でも違いがあります。

耐震性はS造とRC造とも高く、CLTと比べても耐震性に優れているといえます。特にS造は軸組・筋交いで補強することが可能なため耐震性を高められます。

一方のコスト面では、S造、RC造ともにCLTよりも高くなる傾向です。まずS造やRC造は、場合によって施工の際に地盤改良工事が必要となるためコストが高くなります。ただし、建築物のモデルや階層によってはCLTの方が高くなるケースもあるため、一概にS造やRC造が高いとはいえません。

メリット・デメリットで比較

マンションや体育館などで用いられる事が多いS造の最大のメリットは、内装のレイアウトが自由にデザイン・設計が可能である点です。S造で使用する鋼材には剛性があるため、木造と比較しても耐震性に優れています。軽量鉄骨造ではプレハブ工法で施工を行う事も多く、工期を短縮できコストの削減もできるというメリットがあります。

しかしS造は、RC造と比較して遮音性が低いことがデメリットといえます。特に遮音性が低くく特に軽量鉄骨造は、鋼材が軽量なため振動が伝わりやすいため、音を防ぐことが難しいです。また、耐火性も低く、軽量鉄骨造の場合は構造部分が薄いこともあり、火災の際に強度が低下してしまう可能性が高いです。そのため、特に安全性を問われるような施設などは燃えにくい素材を使うなどの対策が必要になります。

一方のRC造は、耐震性・耐火性・遮音性ともに優れているというメリットがあります。S造と比べても耐火性・遮音性が高いです。強度のある鉄筋と圧縮の強いコンクリートで建築するため、S造のように建物の強度が急激に下がることがなく、地震や火事などにも耐えられます。ただし、経年劣化は付き物で定期的なメンテナンスが必要となります。

RC造の最大のデメリットはS造やCLTと比べてトータルでのコストが掛かることです。S造に比べても使用する素材が高く工期も長期になるため人件費がかかってしまいます。また、コンクリートに水分が含まれているため結露が起きやすく、放置してしまうと強度が下がってしまうため、対策費用も必要となります。さらにRC造は頑丈なため解体が難しく、解体費用や増改築費用も高額です。

CLTのメリットは、軽量であるため工期が早く、耐火性・耐熱性(断熱性)・耐震性全て優れていることです。鉄筋コンクリートの5分の1ほどの重量しかないため、基礎コストや輸送コストを抑えられます。CLTのデメリットは、木材のコストです。欧州では木材の単価は7万円を下回っていますが、日本の国産木材は欧州の約2倍以上の単価です。

日本は山林が多くありますが、面積が小さいため安定して材木を集めることが難しいという点が、CLTのコストが高騰してしまう原因です。また、国産木材の主流はスギやヒノキですが、これらは含水率が高く乾燥するまでに手間や時間を要します。さらに加工工程が多いといったデメリットもあります。

CLT国産材にこだわる製造メーカー4選

日本国内のCLTは、国産の木材の単価や加工の手間・時間といったコスト面が厳しい点が課題となっていますが、CLT国産材にこだわっている製造メーカーも少なくありません。

CLT国産材にこだわっている代表的な製造メーカーは次の4社です。

  • ティンバラム
  • 銘建工業
  • サイプレス・スナダヤ
  • 山佐木材

この4社では、国産のスギやヒノキをはじめとする木材を使用したCLTや集成材などの製造を行っています。ティンバラムでは、国産のスギやヒノキ、カラマツといった木材を使用した集成材やCLTの製造を行っており、製造だけでなく木軸、造作、羽柄の木躯体工事を請け負っています。また、山佐木材はスギ構造用集成材で全国初のJAS認定を取得、2014年にはCLTのJAS認定も取得しています。

 


CLTは、S造やRC造の弱点を克服するメリットがありますが、2つの工法にもそれぞれのメリットがあります。コストはCLTよりも上回ってしまいますが、S造はデザイン性の自由度が高く、RC造は遮音性・耐震性・耐火性の3つが優れているといったメリットがあります。

近年では、CLTとS造の要素を組み合わせた鉄骨ハイブリッド構造なども登場しています。国内のCLTには、国産の木材の単価や技術など、まだまだ課題が残されていますが、国産材のCLTにこだわって、製造に力を注いでいる企業も多いです。

ティンバラムをはじめとするメーカーは国産のスギやヒノキなどを使用したCLTを製造しており、今後の課題解決が期待されます。

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