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CLTのJAS認定工場とは?新規参入の課題と製造方法について

CLTのJAS認定工場とは?新規参入の課題と製造方法について

2023/09/30

CLTのJAS認定工場とは?新規参入の課題と製造方法について

画像出典先:日経経済新聞

建築業界において、持続可能な建材としてCLTが頻繁に取り上げられています。環境にやさしい特性を持つこの素材は、多くの建築家や施主の注目を集めています。とはいえ、CLTを製造するためのJAS認定工場となるには、厳格な基準や先進の技術・設備が求められるため、その数はなかなか増えていません。

このコラムでは、CLTの製造方法や、製造工程における現実的な課題に焦点を当て、詳しく探求していきます。

不足するCLT製造工場とJAS認定工場について

CLTは耐火性・耐震性に優れ、工事期間の短縮や木材の有効活用などの観点からも非常に優れた建材です。しかし、現状として国内のCLT製造工場は限られており、その数は不足しています。ここでは、CLT製造工場が不足している理由と、優れたCLTを製造する証であるJAS認定工場について解説します。

JAS認定工場とは

JAS認定工場とは、製材品の品質や安全性を保証するための特定の基準を満たすことで認定を受けた工場のことを指します。全国木材検査・研究協会や北海道林産物検査会といった登録認定機関といった登録認定機関から与えられます。

JAS認定工場の中には、自社や自工場で製造した製材品の品質を自ら確認し、格付けを行う権限を持つAタイプと、一部の条件を満たせていない工場で、自ら製材品の品質を確認・格付けすることができないため、第三者の検査機関が品質の確認と格付けを代わりに行うBタイプが存在します。共に、認定をクリアした工場で尽くされた製品にはJASマークが付与されます。

CLT製造の新規参入が進まない理由

2023年現在、CLTのJAS認定工場は8社しか存在していません。CLTの認知が進み、ニーズが増える中でJAS認定工場の数が増加しない背景を解説します。

CLTの製造には特別な設備が不可欠です。木材を全方向で一様にプレスするための専用の機械や技術が求められ、一般的な集成材製造の設備では対応が困難です。このため、新規参入するには大きな設備投資が必要になります。

実際に、JAS認定を取得したものの、高い設備投資や生産の難しさから製造を断念する工場も存在します。これは、CLTの製造における技術的な難しさと、採算が取りづらいという現実を示しています。しかしながら、CLTへの需要は近年増加しており、安定した供給体制の構築が一層求められています。

CLT木材が出来るまで 製造方法について

CLTは、複数の挽き板(ラミナ)を繊維方向が直交するように重ね合わせて接着した木質系の建築材料です。しかし、その製造過程は単純なものではありません。CLTの品質を確保するためには、製材、乾燥、そしてパネルの加工といった一連の工程を、精密なコンピューター管理下で行う必要があります。複雑で難しいとされるCLTの製造はどのように行われるのか、製造方法について解説します。

CLT木材が出来るまで

1.原木の準備
国産材の丸太を仕入れ、皮を剥ぎ、厚さ17mm程度のラミナ板に切断します。

2.乾燥
切断したラミナは、桟積みという方法で風通しの良い状態に並べられ、均一に乾燥させます。続いて、大きな乾燥機で1週間程度、含水率が12%以下になるまで乾燥します。

3.モルダー加工
乾燥したラミナはモルダーで厚さを14mm程度に調整し、一定の長さや幅に加工されます。この過程で、木目の方向を整える作業も行われます。

4.グレーディング
仕上げられたラミナは、機械と目視でのチェックを組み合わせてグレード分けされます。節の多さなどにより、日本農林規格(JAS)に従ってA~Cの等級に分類されます。

5.ラミナの接着
ラミナを高周波プレス機を使って幅方向に接着し、単層の板に加工します。続く工程で、各ラミナの繊維方向が直交するように、複数層に積層接着します。

6.ラミナの調整
節がある部分には穴を開け、専用のボンドで節駒を埋めます。また、単層のラミナはさらにプレーナーで厚さ12mmに整えられます。

7.コールドプレスでの積層接着
接着剤を使ってラミナを積層接着します。この接着をしっかりと固定するために「圧締」という工程が必要となります。
CLTを圧締するために使用される装置は「平板プレス」と呼ばれるもので、大きな面積のCLTを一度に圧締することができるように設計されています。この平板プレスは、油圧式を用いて木の層に均等な圧力をかけ、接着剤を均一に硬化させることができます。

さらに、CLTの側面、すなわち幅や長さの方向の縁を整えるために、このプレスには側圧をかける機能がついています。これにより、CLTの端がきれいに整った状態で一体化されます。

8.CLTの成形
テノーナーを使って、CLTの外周や接着部分のばらつきを調整し、厚さの誤差を0.5mm以内にします。

CLTのJAS認定工場8社を紹介

JAS認定を取得するための工場では、CLTの接着性能などの厳格な基準を満たす必要があります。そのため、JAS認定を取得した工場の製品は、高品質であり、精度も高いと評価できます。以下に、JAS認定を取得している8社を紹介いたします。

オホーツクウッドピア

オホーツクウッドピアは、北海道に拠点を置く木材製造企業です。北海道産のラマツ、トドマツ、スギ材を使用して、集成材やCLTの製造を行っています。製品ラインは住宅用の小中断面集成材から非住宅用の特殊サイズや大断面集成材まで多岐にわたります。さらに、関連会社と連携して、住宅のプレカットやその他の加工も手掛けています。地元小学校や、集落センターにも建材を提供しており、地元地域の貢献も果たしています。

ティンバラム

ティンバラムは秋田県に本社を持ち、多種多様な集成材の製造から木造建築のすべての工程を網羅する企業です。最大2m×8.5mのCLT用手動プレス機を有し、先進の技術で幅広いニーズに対応します。その「ウッドストラクチャーシステム」は、設計から施工まで一気通貫で、木造建築の新たな可能性を追求しています。スローガン「まだないカタチを木でつくる」を掲げ、技術の挑戦を続けています。

西北プライウッド

西北プライウッドは東京に本社を置き、宮城県に工場を持つ企業です。環境保護と快適な住環境の実現を目指しており、森林の循環利用の為の取り組みをおこなっています。主要事業は合板、パーティクルボード、LVL、CLT、森林および不動産事業です。

中東

株式会社中東は石川県に本社を置く総合プロデュース企業で、CLT、大断面集成材、および建設工事の設計施工を手がけています。石川県内での大型工場と先進的な設備を活かし、高品質なCLTや大断面集成材を生産しています。特に、強化せっこうボードやりん酸系薬剤処理スギ集成材、直交集成板床などの製品は、国土交通大臣からの耐火性認定を受けている点が特徴です。

鳥取CLT

鳥取CLTは鳥取を拠点に、CLTの普及と地域の木材産業・建設産業の振興を目指す企業です。同社が製造する「CLT36」は、JAS認定を受けた国内で最も薄く、最も軽量な直交集成板(CLT)です。人の手で簡単に持ち運ぶことが可能なCLTは、建築現場での取り扱いが容易となり、コストパフォーマンスも高いと評価されています。

銘建工業

岡山を拠点とする銘建工業は、木造建築のスペシャリストとして、構造設計から製造、施工に至るまでの全工程を一貫して手がける企業です。同社は、木くずも価値ある資源と捉え、100%再利用する独自のシステムを持っており、「木を使い切る」というコンセプトを大切にしています。集成材やCLTの提供だけでなく、CLTに関する設計から施工にかけての技術サポート体制も整っています。

サイプレス・スナダヤ

愛媛を中心に活動する株式会社サイプレス・スナダヤは、地元の豊かな森林資源である桧を中心に、製材・集成材の生産を行っており、その生産量では国内最大手としての地位を確立しています。CLTや集成材、製材の製造の他、国産の杉を使用した2×4部材の製造もおこなっています。

山佐木材

鹿児島を拠点とする山佐木材株式会社は、製材を核業務としながらも、日本で初めてスギ構造用集成材のJAS認定を受け、さらにCLTのJAS認定も取得しています。常に先進の木材利用技術や加工技術に挑戦し、品質保証を重視。国産のスギやヒノキを中心とした製品を提供しており、製材、集成材、CLTの製造を行っています。


JAS認定工場や、CLTの製造工程、そしてCLTのJAS認定工場が増加しない理由について解説しました。本記事で述べた通り、高品質のCLTを製造するためには、さまざまな技術、設備、および工程が必要です。

JAS認定を受けた工場は、厳格な基準を満たしています。そのため、JAS認定工場で製造されたCLTを使用することで、長期的に安全な建物を建築することが可能となります。将来的には、CLTのJAS認定工場の数がさらに増加することが期待されます。

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