CLTとは?起源から現在の工法までCLT建築について徹底解説
CLTとは?起源から現在の工法までCLT建築について徹底解説
2023/09/30
CLTは、ドイツで誕生し、ヨーロッパを始めとする各国で普及した木材の一種です。CLT工法にはCLTパネル工法、木造軸組工法、2×4工法、混構造の4つの種類があります。CLT工法はコスト面で課題がありつつも、機能性が高く、コスト削減ができる、安全性の高い建物を建てられるなどのメリットがあるため、CLT工法を採用した建物は今後さらに増えることが予測されます。
CLTとは?CLTの特徴とこれまでの歩み
CLTという言葉を初めて耳にした方のために、CLTの歴史とCLTの概要をご説明いたします。
CLTのこれまでの歩みについて
ヨーロッパで開発された木材の一種で、1990年代にドイツで誕生し、約1995年にオーストリアで製品化されました。その後、ヨーロッパ全域に広がり、イギリスやイタリアなどの建築物に広く利用されるようになります。
さらにアメリカ、カナダ、オーストラリアなどでも知られるようになり、高層建築を含む幅広い建物に使用されるようになりました。CLT木材が迅速に受け入れられた背景には、これらの地域で既にパネル工法が一般的で導入されていたことが考えられます。現在では、集合住宅や福祉施設など多くの建築物で採用されていて、今後はさらに増えるでしょう。
日本でのCLT木材の生産は、2009年から2010年ごろに始まったと考えられていますが、本格的に生産されるようになったのはその後です。ヨーロッパでの成功を受けて、日本でも実験的にCLT木材の生産が始まりました。しかし、本格的な生産されるようになったのは、JAS(日本農林規格)が制定された2013年12月以降、またはCLT木材に関する建築基準法告示が施行された2016年4月以降です。
このように、日本にCLT木材が導入されるまでには完成から約15年、本格的な生産・普及が始まるまでには20年近くかかり、CLT木材の取り組みが遅れを取っています。その一方で、CLT木材の普及には、大いなる可能性があるといえるかもしれません。
CLTとは
正式名称はCross-Laminated Timber(クロス・ラミネイテッド・ティンバー)といいます。繊維方向が直交するように積層接着した木質系の材料で、日本の農林規格での名称は直交集成板です。積層構造により、優れた強度と安定性を持ち、厚みのある大きな板である特徴を生かして、建築の構造材料として使用されるだけでなく、土木用材や家具などの幅広い用途に使われます。
CLT建築の様々なメリット
CLT木材を建築物に使用することで、様々なメリットが得られます。主なメリットは、次の5つです。
機能性と安全性を確保できる
断熱性に優れているため、夏は涼しく、冬は暖かい環境を整えられます。耐震性と耐火性も高いので、地震と火災にも強く、家族の安全を確保できるのも大きな利点です。
デザイン性の高い建築物を建てられる
木材を原材料としているため、木の風合いや香りを楽しめます。木の質感を活かすデザインをしたり、金属パーツに工夫を施したりすることも可能です。外観デザインにおいては、庇、バルコニー、窓などに使用することで、凹凸のある建物を設計できます。内装のデザインにおいても、柱や壁の位置の制約が少なく、設計の自由度が高いため、デザイン性の高い建築物を建てられるのが魅力です。
持続可能な社会への貢献ができる
国産材を大量に使用するため、健全な森林の造成と育成の手助けとなり、地域ごとの木材を使用することで、地域に愛着も持てるようになるでしょう。CLT木材を建物に採用することは、二酸化炭素の固定や地域の森林資源の保全、資源のサステナビリティを実現にも役立ち、持続可能な社会への貢献にもつながります。
コストパフォーマンスに優れている
工場で加工してから現場へ運搬するため、建築工程をスムーズに進められるのも利点です。工期の短縮もでき、技術的な難易度が低いため、熟練した職人の必要としないため、人件費を大幅に削減できます。さらに、軽量のため必要な基礎工事を簡略化でき、運搬コストも安く抑えることが可能です。木造建築は減価償却費のための耐用年数が短いので、税制面でもメリットがあります。
健康被害が少ない
JAS(日本農林規格)に規定されている数ある木材のなかでも、CLTはもっとも無垢の木に近い木材で、接着剤の使用量が少ないため、有害なホルムアルデヒドの放出量がゼロです。人だけでなく、ペットの犬や猫などの健康にも配慮された安全性の高い建材として、高く評価されています。
CLT木材を使用した工法と他の工法との比較
工法は建物の建築において、建物の耐久性と機能性を左右するものでとても重要です。最後にCLT工法と他の工法の違い、CLT工法のメリットをご説明いたします。
CLT工法の種類とそれぞれの特徴
CLT工法には4つの種類があり、それぞれの特徴は次のとおりです。
CLTパネル工法
CLTパネルを、水平力と鉛直力を負担する壁としてする工法で、パネルが耐火性に優れているため、防火・耐火設計に適しています。共同住宅やホテルなどで、採用される工法です。
木造軸組工法
一般的な木造建築と同様に、柱と梁による骨組みを作り、軸組工法の一部にCLTを導入します。
2×4工法
主に2×4材を使用する、北米で発達した木造建築工法です。建物を柱はなく、壁で支えます。
混構造
木造軸組み工法や鉄骨造など、異なる構造形式を組み合わる工法です。CLTを床や壁として使用しますが、同じ層に異なる構造形式が混在する場合、設計が複雑化します。
他の工法との違い
こちらでは、他の工法との違いを知っていただくために、よく知られているS造(鉄骨造)、RC造(鉄筋コンクリート造)との違いをご紹介いたします。
S造(鉄骨造)
強度が高く、特に耐震性・耐久性に優れ、柱や梁の本数を少なくできるため、建築デザインの自由度が高いのが特徴です。安定した品質の部材を提供でき、工期が短くできます。デメリットは、音や熱が伝わりやすく、断熱性が低いため夏は暑く、冬は寒くなりやすい点です。
RC造(鉄筋コンクリート造)
耐震性・耐火性・遮音性・断熱性に優れているので、機能性の高い建物が建てられます。強度が高く、劣化しにくいため、木造よりも耐用年数が長いのも特徴です。重量があり、工期が長いため、トータルの建築コストが高くなりやすく、密閉性が高いため、換気システムを整備しないと結露やカビが発生しやすいデメリットがあります。
CLT工法との違いは、コスト面で、従来の工法と比較すると、材料や技術のコストが高くなってしまうのが通常です。その理由としては、経験豊富な建築家や施工会社が少ないこと、CLT工法に関するデータが不足しているため、安全性を現場で検証しながら進行する必要があることなどがあげられます。
CLT工法のメリット
前項でご紹介したように、CLT工法には、基礎工事を簡略化できる、工期を短縮できる、などのメリットがます。その一方で、CLTは従来の木造に比べて木材の利用量が多いため、材料のコストが高くなる点と、加工設備が必要なため初期投資が必要な点がデメリットです。
CLTは、繊維方向が直交するように積層接着された木材の一種で、日本では2013年ごろから本格的な生産が始まり、建築基準法にも対応するようになりました。CLTは耐震性や断熱性に優れ、自由度が高く、持続可能な森林資源の利用に貢献できるなどのメリットがあります。
CLT工法は、パネルが軽量なため基礎工事を簡略化でき、組み立てるだけなので熟練職人が不要なため、コスト削減が図れるのも利点です。CLTパネル工法、木造軸組工法、2×4工法、混構造の4種類があります。材料のコストが高く、加工設備が必要なため初期投資が必要となり、コスト面で課題がありますが、CLT工法は今後さらに普及すると考えられます。