CLTの普及が環境に与える影響とは?森林の循環利用
CLTの普及が環境に与える影響とは?森林の循環利用
2023/08/31
現在日本では、多くの森林が手入れされないまま荒れてしまっています。海外の木材輸入の影響もあって国産木材の自給率が上がらず、年々深刻化しています。そこで国産木材を有効活用するためCLTが注目されています。
木材の利用が環境に与える影響とは?森林の循環利用
森林の循環とは成長した木は伐採し活用、伐採した分を植林し育てるというサイクルのことをいいます。
本来はこの森林の循環が機能することで、国内の木材を有効に活用でき、森林の手入れにもつながります。
しかし近年、海外の木材が輸入され使用されることが多くなってしまったことで、時期が来ても伐採されず放置され荒れてしまっている森林が増えています。
また、間伐といって植栽した木を間引きして密度を調整する作業をしないと土砂崩れや日照問題、土壌のスペースがなくなるといったトラブルにもつながる可能性も高いです。
そこで、木材の利用が重要となってきます。木材を利用することのメリットは次のとおりです。
- 多面的機能の保持
- 農山村地域の活性化
- 心地いい素材
森林には林産物の供給、保健休養場の提供、水源の涵養、土砂災害防止、生物多様性の保全といった森林の多面的機能を保つことができます。樹木の二酸化炭素を吸収してくれる活動は地球温暖化対策にも有効なため、多面的機能の保持は重要です。
木材を活用することで山村に対価が還元されます。木材の自給率が上がることで森林の整備がされ、働き手の増加にもつながります。
木は人に良い影響を与えてくれるものです。程よい室温と温かさがあり、衝撃を吸収しやすいというメリットがあります。また、木の香りはストレスを和らげて心身をリラックスさせる効果も期待できます。
国内の木材自給率は?国産木材利用のメリット
現在の日本は海外材の輸入がほとんどですが、かつて国産材の自給率は9割を占めていました。
日本の海外材の輸入が増加したきっかけは、戦時中から戦後にかけて木材の需要が高まり、価格が高騰したことが始まりです。その後の昭和35年~昭和39年にかけて木材輸入自由化が完了したことから、さらに輸入が増加しました。
その一方で、国産材の自給率が徐々に下がっていき、平成12年には過去最低を記録し平成16年からは回復傾向にありました。令和2年時点では35.8%まで回復しましたが、最高記録だった昭和30年と比較すると、まだまだ自給率は低いままです。
この背景には、国内の山村の過疎化、高齢化により林業が人手不足に陥っていることが挙げられます。平成21年には森林・林業の再生を目指し、政府が再生プランを発表しました。さらに2年後の平成23年には森林法の一部改正を行い、森林・林業再生プランを法制面で具体化したこともあり、今後国産材の自給率上昇が期待されます。
国産木材を利用するメリットは、国内の豊富な森林資源を有効活用できることです。木材を有効活用することで、土砂災害や洪水のリスクを軽減できます。
また、木は二酸化炭素を吸収してくれるため地球温暖化対策になるという点もメリットの一つです。
国産木材利用の救世主―CLTと国産木材
CLTとは、元々オーストリアで1990年代より発展した工法で、耐震性・耐火性も優れておりマンションや商業施設などの建築も可能で、木造のビルを建築できるという点で世界各国から注目され始めました。
国産木材の利用自給率が低迷している今、自給率をアップできる方法として関心を集めているのがCLTです。
CLTとは、建築メインで使用されることが多い素材で、挽き板を繊維方向に直交して積層接着したパネルです。
日本と海外のCLT工法や製造方法にはいくつかの違いがあります。
海外では1液性ウレタン系接着剤などを使用して施工を行いますが、日本ではこの接着剤が認められていません。
また、本来のCLTは、形などが悪い板材でもCLTの中に組み込んで製造されます。一方の日本のCLTは集成材に使用するA材由来の挽き板を使用して製造されています。これらの事が要因となり、海外では当たり前のB材使用の妨げになってしまっているのが現状です。
しかし、CLTは国産の木材を有効活用できる方法であることには変わりはないため、今後の技術検討などで変わることが期待されます。
CLTといってもさまざまな種類の樹木が使用されています。
日本では主にスギ、ヒノキ、カラマツ、トドマツ、スギ・ヒノキのハイブリットの5つが主流です。
まずスギは本州北部~九州の広い地域に分布しています。木目も直接的で加工もしやすいのが特徴です。スギのCLTは軽量で施工性が高いため、耐震壁のパネルとしてゼネコンに採用されることも多いです。
ヒノキは、本州、四国、九州に分布しており人工林だけでなく、自然林も多く残っています。ヒノキのCLTは耐久性が高いのが特徴です。
カラマツは北海道、東北、長野県といった寒冷地に多く分布している樹木です。乾燥させた際に割れや狂いが生じやすく杭木などに使用されることが多かったですが、CLTとして活用が見直しされています。
トドマツは、北海道に多く分布しており白色または黄白色で肌目が粗めの木材です。高含水率のため、人工乾燥や加工が簡単で白木の箱などで使用されます。現在もCLTへの活用が現在も研究されています。
CLTにはハイブリット材と呼ばれるものがあり、日本のCLTで代表的なのがスギとヒノキのハイブリットです。曲げ強度が弱いスギにヒノキを組み合わせて強度を上げることが可能です。コストが高いヒノキにスギを合わせることでコストを抑えられます。
現在、CLTの普及によって日本の林業が変化してきています。
森林は本来、伐採期を迎えたら伐採し植樹、育成、間伐、伐採を繰り返すことで、森林が維持され国内の木材の自給率も上がるものです。
しかし、近年の日本は木材の多くを海外から輸入しているため、国産の木材の自給率が下がっています。その影響で国内の木材の需要が落ち込み、人手不足など林業に大打撃を与えてしまっています。
そこで国産の木材の自給率を上げる取り組みとしてCLTが注目されています。国産木材をCLTにすることで、自給率を上げることが可能で、地球温暖化対策や土砂災害などを防げます。まだまだ課題が残されるCLTですが、今後の取り組みでの改善が期待されています。