日本にあるCLTを製造している工場を紹介! 今後のCLTの活躍に期待
日本にあるCLTを製造している工場を紹介! 今後のCLTの活躍に期待
2024/01/26
CLT工法は部材点数が少なく、簡単な施工が可能で工期を短縮できます。断熱性能も高く、耐火性や耐震性も優れています。日本には8つのCLT製造工場がありますが、国の目標には達しておらず、高い参入ハードルが課題です。
工期が短縮でき断熱性にも優れるCLT
CLT工法は部材点数が少ないため、工期が少ない上に熟練工ではない人でも簡単に施工ができる点が特徴です。そして断熱・耐火・耐震の3つの性能も鉄筋コンクリート造の建物に比べて優れており、建材として今後活躍が見込まれています。
◇部材点数を減らし工期を短くする工法
CLTは大判のパネルであるため部材点数が少ない点や、金物やビスによる接合によって熟練工ではない人でも施工できる点が特徴です。さらに、現場へ搬入する前に工場で開口・配管・設備などの穴開けの加工を済ませているため、工期が短いことも特徴です。実際に欧州では9階建ての集合住宅を4名の作業員が9週間で施工させた事例があります。これは鉄筋コンクリートで同様のものを建てた場合の20週間分の工期を短縮したことになります。さらに、部材点数が少ないことで現場での騒音や廃棄物も少なくできるメリットがあります。
◇CLTの3つの性能
木材は多孔質材料と呼ばれる微細な穴が空いている材料であるため、高い断熱性を持ちます。また、その微細な穴に空気が含まれているため、熱伝導性が低く熱を遮断します。CLTの断熱性能はコンクリートに比べると約10倍で、さらに鉄と比べて約400倍であることが証明されています。
耐火性については内部まで燃えきらないのが特徴です。CLTは火がついても、表面に炭化層を形成し、そこから毎分1mmの速度で進むため、厚さ90mmのCLTの壁は燃え尽きるのに1時間以上かかることが証明されています。
耐震性能については、実験で5階建てのCLTの建物に阪神・淡路大震災の震度と同等の揺れを与えましたが、大きな損傷はなかったことが証明されています。CLTには靭性と呼ばれる力が加わった際に変形しても破壊されにくい性質があり、それが高い耐震性能を実現しているのです。
CLTを製造している日本の工場
現在、日本には8つのCLT製造工場があります。CLTのメリットに注目し国も需要拡大のためのロードマップを打ち出していますが、目標とする数値には達していません。その原因は、巨額の資金が必要で簡単に参入できないためです。CLT事業の参入ハードルをどのようにして下げるかが課題であるといえるでしょう。
◇日本には8つのCLT製造工場がある
2013年に岡山県の銘建工業がCLTの製造を開始し、国内では現在8つのCLT製造工場があります。現在の日本は戦後に植林された多くの木が伐採適齢期を迎えており、国はCLTを森林資源の活用戦略の中心と捉え、「CLTロードマップ」を作成しました。
これはCLTの需要拡大を目的に作成されたロードマップで、当初はCLTの年間生産能力50万㎥を目指していました。しかし、現在の8つの工場の生産能力は合計しても年間6万1000㎥で、ロードマップの数値に達していないことが課題となっています。
◇参入ハードルの高いCLT事業
CLTの生産量が少ない理由は、CLTの製造を行うために巨額の資金が必要だからです。CLT製造のための設備をそろえるとなると数十億円が必要です。公的補助金も用意されていますが、それでも多くの自己資金も投入しなければなりません。設備だけでも巨額であり、さらに運転資金も必要と考えると参入ハードルの高い事業と言えます。
一方で、国はCLTを国の成長戦略の中核と考えているので、国をあげてCLT事業の拡大に力を入れていくでしょう。
日本のCLT工場と今後の可能性
日本にあるCLT工場の場所とそれぞれの年間製造能力を紹介します。最初に建てられた銘建工業が国全体の年間製造能力の半分を占めていますが、まだまだ目標値には達していないのが課題です。CLTの需要拡大のために、それらがよく使用されている関東・中部・関西の地域に工場を建てる必要があります。
◇日本のCLT工場
全国にあるCLT製造工場を年間生産能力が高い順に紹介します。
銘建工業(岡山県真庭市) 年間生産能力3万㎥
サイプレス・スナダヤ(愛媛県西条市) 年間生産能力1万㎥
山佐木材(鹿児島県肝属郡) 年間生産能力6000㎥
鳥取CLT(鳥取県西伯郡) 年間生産能力5000㎥
西北プライウッド(宮城県石巻市) 年間生産能力4000㎥
中東(石川県能美市) 年間生産能力3000㎥
オホーツクウッドピア(北海道北見市) 年間生産能力2500㎥
ティンバラム(秋田県五城目町) 年間生産能力2500㎥
年間で生産しているCLTのうち約半分を銘建工業が生産しています。それでもロードマップの目標には達していないため、CLT事業をさらに拡大していくには製造工場の増加が必要です。
◇今後の利用拡大が期待される
CLTの可能性については国も認めており、今後どのように事業を拡大していくのかが検討されています。関東・中部・関西地方にはCLTの製造工場が無いにもかかわらず、国全体のCLT利用建築物数の1/3を占めており、約16%が関東に集中しています。これらの地域に製造工場が建設されることで、輸送費が軽減されCLTのコストも削減すると考えられています。
CLT工法は建築業界に革命をもたらす特徴を持っています。まず、部材点数が少なく、熟練工でなくても施工が容易です。これにより工期が大幅に短縮され、効率的な建設が可能です。
欧州では9週間で9階建ての集合住宅を完成させた実績があり、これは鉄筋コンクリートの場合の工期の半分以下です。また、部材点数が少ないため、現場での騒音や廃棄物も削減されます。
さらに、CLTは優れた性能を持っています。断熱性能はコンクリートに比べて約10倍、鉄に比べて約400倍も高く、エネルギー効率の高い建物を実現します。
耐火性においても、CLTは燃え尽きるまでの時間が長く、安全性が高いです。耐震性能も高く、阪神・淡路大震災の揺れに耐えた実験結果が示されています。
しかし、日本においてCLTの普及には課題も存在します。現在、8つのCLT製造工場が稼働していますが、生産能力は目標に達していません。CLT事業への参入は巨額の資金を必要とし、参入ハードルが高いためです。国はCLTを森林資源の活用戦略の中核と位置づけており、需要拡大に向けて取り組んでいますが、さらなる製造工場の増加が必要です。
今後の展望として、関東・中部・関西地域にCLT製造工場を建設することで、輸送費の削減やコスト削減が期待されます。CLT工法は持続可能な建築の未来を切り拓く可能性を秘めており、日本の建築業界に大きな変革をもたらすことでしょう。