CLTはどんな素材?合板との違い・特徴・業者選定の重要性を解説
CLTはどんな素材?合板との違い・特徴・業者選定の重要性を解説
2024/01/15

CLTは木材を繊維方向に交差させて積層した板で、大規模建築に適した素材です。施工期間の短縮、軽さと高い強度、そして地震に対する耐性などの特徴があります。しかし、価格が高いことや木材供給の課題もあります。信頼できる業者を選定して、CLT建築の可能性を最大限に引き出しましょう。
CLTとはどんな素材?合板との違いとは
CLTは大規模建築にも向いている建築材料です。まずは、CLTの特徴や合板との違いなどをご紹介します。
◇CLTは板を交差させて作る
CLT(Cross Laminated Timber)は日本語で「直交集成板」を意味しており、繊維方向を交差させた板を複数枚積み重ねて作られる建築材料です。
CLTを用いた建築方法をCLT工法といいます。そのなかでももっとも特徴的なものがパネル工法と呼ばれるもので、CLT板を立てて配置して壁や柱に寝かせ、建物の床や屋根を構築する手法です。積み木やブロックを使って家やビルを組み立てるような感覚に似ており、共同住宅やホテルなど、壁が多い建物で使用されることが多いです。
また、伝統的な木造や鉄骨などの軸組工法とCLTパネルを組み合わせる手法もあります。どちらの手法も、CLT建材は工場で製造され、建築現場に運ばれる前に事前に加工されます。
東京2020大会の国立競技場では、選手の更衣室ロッカーや休憩スペースのベンチ、屋外エレベーターの外壁にも使用されました。
◇合板との違いとは
CLTと合板は構造的な類似性があるものの、強度の観点では異なります。そもそも合板とは厚さ数mm、幅約90cm、長さ180〜270cmの薄い一枚板を木の繊維方向を縦横に交互に配置して接着した材料です。縦横の変形に対して強い特性を持ち、主に壁や屋根などの軽い構造物に使用されます。
一方で、CLTは合板のように単体の一枚板を積み重ねるのではなく、何枚もの長いひき板を横に配置しているため、長さ方向の強度が高くなります。長さ方向の強度の高さを活かして、大規模で重い建築物や中高層建築など、幅広い用途に用いられています。
◇CLTは注目の素材
CLTは、近年注目を集めている新しい建材のひとつです。ひき板を何枚も用いることで木材の特性が十分に活かされるほか、変形が少なく高い強度を維持できる特徴を持ちます。さらに、軽量でありながらも優れた耐震性・耐火性に断熱性も備えています。
日本でも2013年12月にJASが制定され、2016年4月にはCLT関連の建築基準法が公布・施行され、これにより一般利用が可能になりました。今後は日本国内でもCLTの利用がますます拡大することが期待されています。
CLTが素材として持つ特徴といえば?
CLTにはさまざまな魅力的な特徴を持ちますが、利用するにあたってのデメリットも存在します。ここからは、CLTの特徴を踏まえて、用いるメリットとデメリットをご紹介します。
◇施工期間を短縮できる
CLTは工場で事前に形状に合わせて加工され、そのまま現場に搬入されるため、建築の形状に合わせた手間暇がかかる作業を省略できます。また、コンクリートの場合には養生の時間が不可欠ですが、CLTはその必要がありません。即座に組み立てが可能なため、工期の遅延を防ぎ、全体の施工スケジュールを効率的に進めることができます。
そのため、通常であれば一階当たり5日かかるコンクリート建築の工程を、CLTを使用すると2日ほどで組み立てが完了できます。
◇軽く強度が高い
CLTは軽量でありながら高い強度を誇る建築素材です。具体的には鉄筋コンクリート(RC)の重量が1㎥当たり2.4 tであるのに対し、CLTは1㎥当たりわずか0.5 tと、実に1/5の重さです。
この軽量かつ高強度の特性により、建物や材料の軽量化が実現され、中規模建築における地盤補強や基礎コストの削減、さらには輸送機関の燃料や費用の削減にも寄与しています。
また、木造建築の特性である「軽さ」により、鉄筋コンクリート造などよりも揺れに強いという利点もあります。
実際に、国土技術政策総合研究所で行われた実験では、国産スギCLTパネルを使用した5階建ての建物が阪神・淡路大震災と同等の揺れに晒された際に、目立った損傷がなく、十分な耐震安全性能を発揮することが証明されました。
◇コストと取扱いの難しさが課題
多くのメリットを持つCLTですが、課題も抱えています。主な課題のひとつ目が、価格の高さです。CLT市場が広がり、先進的な工場を導入している欧州に比べ、日本のCLTの価格は2倍以上も高くなっています。
価格を下げるためには、原木の調達価格を大幅に引き下げなければなりませんが、日本の山主の所有面積が狭く安定供給が難しい状況です。また、国内の木材種類や製造プロセスの違いも課題のひとつとなっています。
これらの課題を解決することが、日本でのCLTの導入と発展に不可欠です。
CLT建築には信頼できる業者選定が大切
CLTを用いた建築をする上で大切なのが、施工業者の選定です。最後に業者を見極める際のポイントを3つご紹介します。
◇規格に適合した素材を使っているか
CLTの建築を検討する際には、使用されている木材がJAS(日本農林規格)に準拠しているか確認することが大切です。JASは国が定める品質や性能に関する規格であり、これに適合したCLT木材は高い精度を備え、構造計算や燃え代設計にも対応しているといえます。業
者の信頼性をチェックするためには、JAS認証を受けた工場で品質管理検査が行われているか確認しましょう。
◇製造能力を確認する
CLT建築には、年間製造能力が高いメーカーを選ぶことが重要です。製造規模が大きいと、スケールメリットにより製造単価が低くなる傾向があります。スケールメリットとは、事業規模を拡大することで得られる利点や効果を指します。
受注状況により変動することもありますが、製造能力の高さはメーカー選びの中で重要な要素です。
◇過去の施工実績を確認する
CLT建築は現在、成長途上であるため、業者を選ぶ際には過去の施工実績を確認することが重要です。多くの業者は自身のホームページなどで施工実績や実績数を公開しているため、これらを確認するとその業者がどのような建築に携わってきたかが分かります。
CLT建築の経験豊富な業者は、その分野において信頼性が高いといえるでしょう。
CLT(Cross Laminated Timber)は、大規模建築に適した建築材料であり、特に注目されている素材です。CLTは直交集成板とも呼ばれ、繊維方向を交差させた板を積み重ねて作られ、CLT工法を用いて建築されます。この工法は積み木のようにCLT板を組み合わせ、壁や柱、床、屋根を構築する方法です。伝統的な木造や鉄骨工法との組み合わせも行われ、工場で事前に加工されてから現場に運ばれます。
CLTは合板と類似していますが、強度の点で異なり、一枚板を積み重ねる合板とは異なり、長いひき板を横に配置することで長さ方向の強度が高まります。そのため、大規模で重い建築物や中高層建築に適しています。
CLTの特徴として、施工期間の短縮、軽さと高い強度、そして地震に対する耐性があります。しかし、価格が高いことや木材供給の課題なども存在します。
CLTを使用する際には信頼できる業者の選定が重要であり、JAS規格への適合、製造能力の確認、過去の施工実績の確認がポイントです。 CLT建築は今後ますます発展が期待される素材であり、適切な業者との協力により素晴らしい建築プロジェクトを実現できます。