CLT~環境にやさしい木材建築材
CLT~環境にやさしい木材建築材
2023/04/28
近年では世界中でSDGsへの取り組みが行われており、様々な業界で省エネ、エコ、環境保全などにつながる製品が開発されてきました。建築業界では、「環境にやさしい木材」として「CLT木材」に注目が集まっています。このCLTとはどのような木材なのでしょうか。CLTが注目されている背景や、CLTが環境にやさしいといわれている理由について詳しく解説します。
CLTは森林資源を有効活用できる木材
森林環境を長く維持するためには、伐採適齢期を迎えた木を切り、次世代の木を植えるというサイクルを継続する必要があります。しかし、日本における森林の成長量は木材の利用量を上回っており、現状よりもさらに多くの木材を有効活用していく方法を考えなければなりません。森林資源の活用を促進する切り札として、日本で注目が集まっているのがCLT木材です。
CLT(Cross Laminated Timber)は、日本語では「直交集成材」と訳されます。このCLT木材は、直交方向に重ねた複数枚の木材パネルを接着して作られるのが特徴です。従来の集成材と比べて強度が高く、中高層木材建築物の構造材などにも利用できます。
そもそも集成材は合板やLVLと比べて多くの木材を重ねているため、木材の使用量が向上するのです。さらにCLTは、通常の集成材では建築が難しい高層・大規模な木造建築物を建てることが可能ですので、このような建築物が増えるほど多くの木材を必要とします。
つまり、CLT木材を使うほど伐採と植栽というサイクルが促進され、森林の保全と資源の有効活用の両立に近づくのです。
CLTの注目度がアップした背景
CLTが注目されている背景には、2015年の世界サミットで採択された「SDGs(持続可能な開発目標」)」が挙げられます。
SDGsとは、気候変動、貧困、紛争、感染症などの問題を解決するために設けられた具体的な目標のことです。目標の達成の期限は2030年とされており、日本国内でも多くの企業や団体が「SDGs」に取り組んでいます。
CLTの活用は、以下のSDGs目標と関連しているのです。
・住み続けられるまちづくりを:災害に強いまちづくりや、林業などの活性化による地方創生を目指す
・つくる責任 つかう責任:再生可能な森林資源を活用し、持続可能な生産と消費を実現する
・気候変動に具体的な対策を:木材量を増やし、二酸化炭素の吸収を促進する
・陸の豊かさも守ろう:森林の経営や機能を長く維持する
もちろん日本もCLTの活用を通して、SDGs目標の達成を目指しています。
CLTが環境にやさしい理由①木材を再利用できる
木造建築が多い日本では、建築廃材のなかで木材が占める割合も大きくなりがちです。要らなくなった木材はリサイクルされますが、主に「製紙用チップ」や「バイオマス燃料」などとして使われています。つまり、建築資材として再利用される木材は少ないのです。
一方、CLT木材は建築材として再利用ができ、プレハブのように必要なときに組み立てるといった使い方が可能となります。なぜなら多くのCLT木材は、ビスやボルト、ドリフトピンなどを使って接合できるからです。これらの接合金具を外せば、CLT木材を簡単に取り外せます。そのため、不要になった建築材は、他の建物の建築材として再利用することが可能です。
また、CLT木材には、曲がっているなどの理由で製材に向かない「B材」を使って製造できるため、廃材になるような木材を再利用できます。
CLTが環境にやさしい理由②省エネにつながる
CLTを活用した住宅は断熱性、遮炎性、遮熱性に優れているため、1年を通じて光熱費にかかるエネルギーを削減できます。CLT住宅で省エネ効果を得られることは、実際に行われた実験で証明されました。
その実験は、平成26年度「新しい東北」先導モデル事業の一環として、芝浦工業大学とPanasonicなど9社が連携し、CLTを活用した住宅の省エネ機能と、快適性を検証するものです。CLT木材を活用した住居を会津若松市へ移設し、9月から12月までのエネルギー使用量および室内外の温湿度を計測しました。この実験結果では、CLTを活用した住居は、一般住宅と比べて年間冷暖房負荷が約25%も削減できることが判明されたのです。
CLTが環境にやさしい理由③CO2を吸収する
地球温暖化の原因は、温室効果ガスによるものと考えられています。地球を暖かく保つためには一定量の温室効果ガスが必要です。しかし、温室効果ガスが増えすぎると気温が上昇してしまいます。
温室効果ガスには二酸化炭素、一酸化炭素、メタンなどが挙げられますが、そのなかでも多くを占めているのが二酸化炭素です。そこで、地球温暖化を抑制には、大気中の二酸化炭素の削減が有効だと考えられています。
木は二酸化炭素を吸収し、光合成をして酸素を排出しますが、実は木材になっても二酸化炭素を吸収しているのです。木材に加工されたのちに、伐採前に吸収した二酸化炭素を排出することもしません。木材の使用量が多いCLTをふんだんに使った建築物が増えれば、その分二酸化炭素の吸収量が増加するのです。
木材を何層にも重ねて作られたCLTパネルは、環境にやさしい資材です。合板やLVLと比べて二酸化炭素の吸収量が増し、地球温暖化の抑制に貢献します。また、断熱性、遮炎性、遮熱性が高いため、省エネ効果も得られるのです。解体後も建築材として再利用しやすい点も見逃せません。このCLT木材は、建築材だけでなく椅子や机などにも使われていますので、SDGsへ個人でも取り組みたい方は、CLT製品を取り入れてみてはいかがでしょうか。