CLTで建てられる木造建築
CLTで建てられる木造建築
2023/04/28
CLTが日本国内で十分に周知されているとはいい難いのが現状ですが、CLTを活用した建築物は確実に増えています。CLTの活用をご検討中の方は、CLTの機能性はもちろんのこと、建物のデザインはどのようなものか、気になる方も多いのではないでしょうか。ここでは、CLTを活用した建築物の具体的な件数と、活用事例をご紹介いたします。
CLTを活用した建築物が全国各地に
内閣官房のサイトに掲載されている資料によると、2014年度のCLT活用建築物はたった29件でしたが、2023年度の整備検討を含む累計は1052件で、9年間で30倍以上になる見込みです。
CLTは木質系材料なため、大きな建物や高層の建物には向かないように思われがちですが、実際の所CLTを活用した建物は、住宅よりも事務所や、地方公共団体関連施設などのほうが多いです。建物の種類別、2023年度の整備検討を含むCLT整備状況は以下のとおりです。
事務所 | 205 |
店舗・倉庫など | 163 |
地方公共団体関連施設 | 140 |
住宅 | 90 |
CLTを活用した建築事例も全国各地に広がっていて、日本国内で2023年の竣工件数の合計が多いのが岡山県(98)で、次いで東京都(75) 、高知県(53)の順になっています。
教育や介護施設での活用例
教育や介護施設でのCLT活用例を、2件ご紹介いたします。
新潟県少年自然の家宿泊棟
所在地:新潟県胎内市乙字大日裏1503-166
構造用集成材を使い、木造軸組工法を採用した建築物です。建物の床、壁、屋根に使用する建築材にCLTパネルを使っています。施設用途の建築基準法に沿って建築するとCLTを使っていることが分かりづらいため、宿泊者がCLTパネルを実感できるように、階段の段部にCLTパネルを使用し、CLTパネル独特の積層が見えるようなデザインになっています。
昭和学院小学校 ウエスト館
所在地:千葉県市川市東菅野2-17-1
CLTパネル工法を採用して建築した木造二階建ての小学校です。もともとあった校舎の高さと風致地区の制限に合わせて、階高と建築の高さの調節が必要でしたが、210mm×2枚の「CLT 2方向フラットスラブ」を使うことで、天井の高さを最大限確保することに成功しています。生徒たちに環境について学ぶ機会を与えられるように、「イ準耐の燃え代設計」で、各教室、階段、外部軒天などにCLTの積層が見えるようにしてあります。
店舗・工場・倉庫での活用例
店舗・工場・倉庫でのCLT活用例を、2件ご紹介いたします。
丸山郵便局
所在地:千葉県南房総市加茂2695-3
環境を考える「+(ぷらす)エコ郵便局」の1号店で、国内初のCLT建材を使って建てられた郵便局になり、循環型資源を使って再生可能エネルギーを導入できるのが特徴です。天井にはひのきのCLT建材、筆記台や待ち時間を過ごすベンチにもCLTを使っているので、利用者もCLTを活用した建築物であることを肌で感じやすいです。
有田川バイオマス㈱事務所棟、倉庫棟
所在地:和歌山県有田郡有田川町修理川字西加九鬼126番
内側に、構造材が見えるような状態に仕上げる「現し」と「丸太組方法」、外壁にCLT建材を採用した建物です。地域材を100%使って発電する発電所としても知られているため、CLT建材には地元の紀州材の杉が使われています。長辺のCLTパネルを使うことで、工事期間の短縮も実現しています。
住宅での活用例
住宅でのCLT活用例を、2件ご紹介いたします。
仙台梅田寮
所在地:宮城県仙台市青葉区梅田町
大林組が開発した「CLTユニット工法」を使って建てた建築物です。「CLTユニット工法」とは、壁と天井の部分の CLTパネルを工場でユニット化させ、そのままの状態で建築現場に搬入するもので、建築物の品質向上と建設にかかる工事期間の短期化を図れるメリットがあります。
W・E邸
所在地:青森県上北郡六戸町
強度があり、耐久性と断熱性にすぐれたCLTパネルは、豪雪地帯にある住宅向きの建築材です。こちらの戸建ては東北地方初のCLT住宅となり、屋根と床部分にCLTスラブ板を使っています。NCLオリジナル「LC-core構法」により、「強く、美しく、そして私らしく」というコンセプトどおり、機能性とデザイン性を兼ね備えた住宅に仕上がっています。
事務所・庁舎での活用例
事務所・庁舎でのCLT活用例を、2件ご紹介いたします。
株式会社江真コンサルティング事務所
所在地:愛知県知多市岡田美里町15-2
「CLTパネル工法」と「在来工法」を組み合わせた木造オフィス兼倉庫です。パネルの大きさを最大限に活かし、土台の部分から2階の屋根までが「CLTパネル」で、床と屋根は「在来工法」という構造にすることで、機能性とコスト面の合理性を実現しています。吹き抜けを取り入れたり、屋根に勾配をとったりすることで空間に高低差ができ、光と風との一体感が感じられる空間になっています。
飯能商工会議所
所在地:埼玉県飯能市本町1-7
地元埼玉県産の「西川材」を材料とする「スギ・ヒノキ認証材」とCLTを組み合わせて建築した建物です。優良木材の西川材と林業地の知恵を結集させ、木造建築ならではの美しさと、西川材の多様性を表現できる、地域由来の建築物に仕上がりました。
CLTを活用した木造戸建て住宅が注目されていますが、強度が高く、耐久性と断熱性に長けたCLTは、小学校、工場、事務所、倉庫など、幅広い建築にも活用されています。機能性に優れ、建築期間の短縮化とコストダウンが図れるだけでなく、木のぬくもりが感じられデザイン性の高い建築物を建てられるCLTは、日本国内でも急速に普及することでしょう。