木材を大量使用するCLTの活用で脱炭素社会に貢献するには?
木材を大量使用するCLTの活用で脱炭素社会に貢献するには?
2024/04/22

カーボンニュートラルは、温室効果ガスの排出と吸収をバランスさせる概念であり、温室効果ガスの削減と吸収作用の強化が必要です。木材やCLTなどの素材は建築中に炭素を吸収し、都市の森林としてCO2を固定します。これにより、持続可能な建築業界が発展し、地球温暖化の進行を防止する取り組みが促進されます。
カーボンニュートラルとは?
カーボンニュートラルは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることです。政府は2050年までに排出をゼロにする目標を掲げました。この目標を達成するためには、温室効果ガス排出削減と吸収作用の保全と強化が必要です。カーボンニュートラルの背景として、地球温暖化の深刻化や気候変動による災害の増加が挙げられます。
◇カーボンニュートラルとは?
温室効果ガスの排出量と吸収量の均衡を図ることを意味します。2020年、政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする目標を宣言しました。
排出を全体としてゼロが意味するのは、二酸化炭素を含む温室効果ガスの排出量から、植林や森林管理などによる吸収量を差し引いて、合計を実質的にゼロにするということです。
この目標を達成するためには、温室効果ガスの排出量を削減し、同時に吸収作用の保全と強化が必要です。
◇カーボンニュートラルの背景
世界各国がカーボンニュートラルを目指している背景には、世界全体で地球温暖化が深刻化していることがあります。地球の平均気温は1900年代から約1.1度高くなっていて、気候変動による災害も頻発しています。
今の状況が続けば気温はさらに上昇し、災害リスクも増大するでしょう。地球温暖化の最大の原因は、化石燃料の燃焼で排出される二酸化炭素です。地球温暖化を防止するために、カーボンニュートラルの取り組みが求められています。
大量のCLT建築物が炭素を固定する
CO2固定は、大気中の二酸化炭素を放出しないようにする取り組みのことです。自然的な方法と人工的な方法があり、自然的な方法は光合成を用います。CLTは今後コストダウンが見込まれるため、CO2固定を目的とした大規模ビルも建設しやすくなるでしょう。
◇脱炭素社会に求められるCO2固定
大気中の二酸化炭素を取り込み、大気中に放出しないようにする取り組みのことをCO2固定といって、自然的な方法と人工的な方法のふたつがあります。
自然的な方法では、光合成が主な手段です。植物は二酸化炭素を吸収して酸素を放出します。特に若い木は、成長が早く多くの二酸化炭素を吸収するため、植林がCO2固定に効果的です。
人工的な方法では、科学や装置を活用します。
◇大規模ビルでCO2を大量固定
日本では大規模ビルの構造は鉄筋コンクリート造が一般的ですが、欧米では既にCLTを使った中高層の大規模ビルが建設されています。日本国内にCLTの大規模ビルが少ないのは、CLTの価格が高いことが要因のひとつです。
しかし、内閣官房の「CLT活用促進に関する関係省庁連絡会議」の資料によれば、CLT製品価格を半減の7~8万円/㎥にすることを目標に定めているため、今後はCLTの需要拡大でコストダウンが見込まれます。
これにより、CO2固定を目的としたCLTの大規模ビルも、建設しやすくなるでしょう。
CLTで森林資源を活用し地球環境に貢献
木材は光合成によって二酸化炭素を取り込み、炭素を貯蔵します。木造住宅も炭素を貯蔵しているため、木造住宅が並ぶエリアは都市の森林とも呼ばれます。
日本の育成林を有効活用し緑の循環を促進することは、化石資源の枯渇と地球温暖化の抑制に有効です。木材を原材料としているCLTを活用することで、持続可能な社会も実現できます。
◇木材が炭素を貯蔵する
森林に生息している樹木は、光合成で成長する際に、大気中の二酸化炭素を取り込み、炭素を固定し貯蔵します。そして、貯蔵された炭素は、木が伐採され木材になってもそのまま固定しつづけます。
木造住宅に使われている木材も、当然のことながら二酸化炭素を貯蔵している状態のため、木造住宅が多いエリアは、都市の森林や第二の森林と称されます。つまり、伐採した木材を使って建築物を建てることは、地球温暖化防止につながるのです。
◇育成林の利用
木は成長し収穫期を迎えるころになると、二酸化炭素をあまり吸収しなくなってしまいます。カーボンニュートラルを実現させるためには、日本の森林資源をCLTや木製品などに有効活用し、若い木を植え育てることが重要です。
スギやヒノキなどの育成林を利用することも、地球環境に貢献し持続可能な社会の実現に役立ちます。
◇緑の循環
鉄鉱石や石油などの化石資源は将来的に枯渇の危機に直面していますが、木材は再生産可能な資源です。地球環境にやさしいため、持続可能な資源ともいえます。木を育て、伐採し、建築物などに利用し、再び植林して木材を生産することは緑の循環であり、資源の生産を生むリサイクルです。
緑の循環は、化石資源の延命と森林の維持にも有効で、二酸化炭素の増加を抑制できるメリットがあります。
木造建築物が固定できる炭素の量は?
木材の重さの半分は炭素であるため、木造住宅もCO2を固定する役割を果たします。杉材で建てた一般的な木造住宅では、約14トンのCO2を固定することが可能です。木造住宅は都市の森林として、地球環境を保全する役割を果しています。
◇木材の重さの半分は炭素
木材に含まれる化学成分はセルロース、ヘミセルロース、リグニンで、これらは炭素、酸素、水素で構成されています。炭素は、光合成の際に取り込んだ二酸化炭素からできたものです。炭素の重さは、木の種類に関係なく木材の重さの半分を占めます。つまり、木材の重さが分かれば、固定された炭素の重さも算出することが可能です。
◇木造住宅で14トンのCO2が固定できる
では、木造住宅がどれくらいのCO2を固定できるか計算してみましょう。杉材を使って建てた一般的な木造住宅の場合、一軒あたりの杉材の使用量は約25㎥で、重さにして約7,850kgです。炭素の量は木材の半分のため3,925kgとなり、空気中の二酸化炭素を14,392kg(約14トン)を固定できる計算になります。
杉材の重さ=25㎥×314kg(杉材1㎥あたりの重さ)=7,850kg
炭素の重さ=7,850kg÷2=3,925kg
二酸化炭素の重さ=3925kg×44/12=14,392kg(約14トン)
◇都市の森林
木造住宅に使用されている木材は、森林と同じように炭素を貯蔵したままです。そのため、木造住宅が建てられている区域は、森林と同じ役割を果たしているため、都市の森林ともいわれます。近年、中高層の建物が建築できるCLTの普及が進み、規模の大きい都市の森林も目にするようになりました。
カーボンニュートラルの概念は、現在の地球温暖化と気候変動の課題に対処するために重要な役割を果たしています。この概念は、温室効果ガス(GHG)の排出量と吸収量をバランスさせることを指します。この目標を達成するには、GHGの排出を削減し、同時に吸収作用の保全と強化が必要です。
木材やCLTなどの素材は、建物の構築中に炭素を吸収し、それを固定します。また、木造住宅は、その構造の一部が炭素で構成されているため、都市の森林としてCO2を固定し、地球温暖化対策に一役買っています。木材を使用することで、建築物やインフラを構築し、同時に育成林を維持することができます。
加えて、大規模ビルの建設においては、木造建築やCLTの利用が注目されています。これにより、大量の木材が使用され、炭素が固定されることで、地球環境に与える影響を最小限に抑えることができます。その結果、持続可能な建築業界が発展し、地球温暖化の進行を防止するための取り組みが加速されるでしょう。