CLTで大空間の木造建築が実現!
CLTで大空間の木造建築が実現!
2024/07/26
近年では商業施設や倉庫などの大空間や無柱空間が取り入れられるようになりました。さらに、CLT(Cross Laminated Timber)技術の登場により、大空間の木造建築が可能となり、耐火性や耐震性の向上が期待されています。
CLTは厚みがあり、燃焼時の炭化層が断熱性を提供し、耐震性も高めます。実際に、岡山大学や賃貸住宅展示場では、CLTを用いた大空間の実現例があり、その技術の進化が進んでいます。
大空間の木造住宅・木造施設が人気
木造建築は従来、戸建やアパートが一般的でしたが、近年は商業施設や倉庫など、住宅以外でも増えています。
◇大空間の木造建築が人気
かつては木造での大空間の設計が困難とされていましたが、現在では材料改良や工法の進化により、可能になりました。
大空間の住宅では、リビングから庭やデッキ、テラスへの大きな窓で、通常よりも広いワイドタイプやスライドタイプ、吹き抜け窓を使用して開放感あふれる空間を作り出します。これにより、室内に豊富な陽光が入り、リビングと外のデッキやテラスが一体となった空間が実現します。
また、大空間をフルオープンにすると、室内と外部空間がつながり、バーベキューやパーティー、子どもの遊び場としても活用できる、多機能なリビング空間が広がります。
◇商業施設などでも導入傾向
無柱空間は体育館や倉庫のように部屋内に柱がないことを指します。視界が良く快適な開放感のある空間をつくれるため、オフィスやレストランなどにも採用されています。
かつて無柱の屋根を持つ建築では、強度を保つために鉄骨造やRC造が用いられてきましたが、最近では木造も採用されるようになりました。
近年では、立体張弦アーチ構造の「出雲ドーム」や、鉄骨大屋根をスギの大断面集成材の垂木で支え大空間を構成した「静岡県草薙総合運動場体育館や、地元産杉を使用した大断面集成材の木造アーチの「JR高知駅くじらドーム」が建設されています。
大空間の木造建築に求められる要素とは
大空間の木造建築においては、優れた耐火性と耐震性が求められます。
◇耐火性
木造住宅を建てる際の必要な要素に、優れた耐火性能があります。耐火性能および耐火構造は、火災時に建物の倒壊や延焼を防ぐ性能です。
また、注意したいのが防火地域と準防火地域は、建物の密集度が高い地域や幹線道路沿いに指定され、建築に厳しい制限が設けられることです。これらの地域では火災の拡大を抑制するため、建物の延べ面積や階数に応じて構造や使用材料に規制があります。
例えば、防火地域では3階以上または延べ面積100㎡以上の建物は耐火性能が必須で、それ以外は準耐火性能が求められるため、建築前には地域ごとの制限を事前に確認することが重要です。
◇耐震性
地震が多い日本では、優れた耐震性能は欠かせません。住宅の耐震診断では、柱や壁の配置、長さ、量が非常に重要です。通常、柱が多く太い住宅や、壁の数が多く開口部が少ない方が耐震性は向上しますが、配置によっては、逆に耐震性が低下する可能性もあります。
建物が地震に強いか弱いかは、住宅の設計、特に開口部の大きさ、壁の面積、柱の数などから推測できます。大きな窓によって壁面積が減少し、支持力が低下するためです。
例えば、窓が壁面の4分の3以上を占める、または小窓が多くて同様の面積を占める場合、耐震性が低いとされます。また、大きな出入り口や広い部屋も柱や壁が少ない住宅や、家の中心に大階段や吹き抜けを設けると、構造的弱点になるため、地震に弱いと言われています。
大空間の木造建築で
新しい木材技術「CLT」が登場したことで、強度や防火性、耐久性を備えた大規模木造建築が実現しました。
◇CLTの活用
CLT(Cross Laminated Timber)は、薄く切った木材(挽き板)を繊維が直交するように重ねて接着した建材です。家具や建築構造材として使用され、多くの建設会社が採用しています。
日本では2013年にJAS(日本農林規格)で製造規格が設定され、2016年に建築基準法告示に明記されたことで、CLTの建築利用が本格化しました。
CLTは厚みのある構造が特徴で、燃焼時に表面に形成される炭化層が断熱性を提供し、内部への酸素供給を遅らせることで燃焼を遅延させます。
日本住宅・木材技術センターの実験によると、CLT木材の燃焼速度は1分間に1mmであり、90mm厚のCLTは1時間燃えても壁が燃え抜けないことが確認されていて、この結果からCLT木材の高耐火性がわかります。
また、CLTは板を繊維が直交するように重ねて強度を高めているため、大きな地震でも変形しにくいのも特徴です。自体の強度で耐震性を向上させ、コンクリートに比べ軽量で、建物自体の重さを軽減させるため、地震の影響を最小限に抑える効果もあります。
2015年の防災科学技術研究所の実験では、阪神淡路大震災以上の力に耐えることが確認されました。
◇CLT耐震壁でさらに耐震性が向上
最近では、CLTを使用した耐震壁が開発されて、なかにはすでに実用化されている製品もあります。例えば、「CLT+鉄骨ハイブリッド構造」は、鉄骨造の軸組みとCLTの耐震壁を組み合わせたもので、CLT耐震壁を鉄骨の柱間に設置して、木材の材料強度を高める方法です。
これにより中高層建築物でもCLTを使用できるようになり、梁が鉄骨であるため、従来の木造建築では難しいとされる大空間に対応する建築も実現可能です。
CLTを使った大空間建築の事例
こちらでは実際にCLTを活用した大空間建築の事例をご紹介します。
◇18mの無柱大空間を実現した事例
岡山大学津島キャンパスの「岡山大学共育共創コモンズ」建設では、CLTパネル工法といくつかの革新的技術が採用されています。
「CLT大梁ジョイント・メタルレス構法」と「CLTランダムパネル構法」を用いて、金物を使わずに18m×21.6mの無柱大空間を実現しながら、地震力の伝達と柔軟なパネル配置を可能にしました。
◇最大56mの大空間を実現した事例
ある賃貸住宅展示場では、面剛性の高い大判CLT(直交集成板)を使用して大規模な大屋根を構築しています。
128枚のCLT梁を組み合わせて高さ2.3m、斜辺の長さ56.5mの直角三角形の架構を形成し、北向きに傾けて建物のエントランス兼アトリウムを覆っています。このダイナミックな大屋根の最長辺は60mにも達しますが、建設自体は54日で完了したとのことです。
最近では戸建て住宅はもとより、商業施設や倉庫などの大空間にも木造が採用されるようになっています。商業施設では、無柱空間が求められる場面が増えてきました。体育館や倉庫では柱がない広々とした空間が必要とされ、オフィスやレストランなどでもこの特性が活かされています。
これまで、無柱の屋根を持つ建築では鉄骨造やRC造が主流でしたが、最近では木造でもその強度を確保できる技術が開発されています。
大空間の木造建築には、優れた耐火性と耐震性が求められますが、CLT(Cross Laminated Timber)の登場により、大空間の木造建築がさらに現実のものとなりました。CLTは薄く切った木材を繊維が直交するように重ねて接着した建材で、強度や耐火性、耐震性に優れています。
CLTを用いた耐震壁や鉄骨とのハイブリッド構造により、中高層建築物でも大空間を実現する技術が進化しています。
岡山大学津島キャンパスの「岡山大学共育共創コモンズ」では、CLTパネル工法を用いて無柱大空間を実現し、賃貸住宅展示場では大判CLTを用いて56mの大空間を構築しています。これにより、木造建築の可能性が広がり、様々な用途に応じた柔軟な設計が可能となっています。