CLT構法は魅力が満載!特徴や課題及び業者選びの重要性を解説
CLT構法は魅力が満載!特徴や課題及び業者選びの重要性を解説
2023/12/18
CLTは他の集成材と異なり、直交積層による高い安定性を備え、厚みがあるため断熱性と耐震性に優れています。接合部のボルトやドリフトピンを使った組み立てで解体も容易。未来志向の素材として注目されています。
一方、CLT導入には高コストと経験不足に起因する課題があります。だからこそ、信頼性の高い業者の選定が不可欠です。経験と専門知識を持つ業者が、CLTの利点を最大限に活かし、効率的かつ安全な建築プロジェクトを実現します。 CLT構法は持続可能な建築に向けた貴重な選択肢です。
CLT構法の特徴とは?優れた素材の理由
CLTは1995年頃からオーストリアを中心に発展し、現在ではイギリス、スイス、イタリアなどヨーロッパ各国やアメリカやカナダなどで広く活用されている建築資材です。日本でも新しい構造体として注目されており、国産木材の効果的な活用を促進する切り札として、政府と民間が協力して促進しています。
◇CLT構法
一般的によく知られている集成材は、張り合わせる板の繊維方向を並行方向なのに対して、CLTは、繊維方向が直交するように交互に張り合わせています。この、「直交積層」が特徴で、それゆえに高い安定性を備えているのです。
また、CLTは一般的に厚みが90~210mm程度で製造されています。厚さがあるため断熱性にも優れ、大判のパネルとして使用することで、高い耐震性を確保できるのも特徴です。
CLT構法では、ほとんどの接合部がボルトやドリフトピンで組み立てられているため、躯体に損傷を与えることなく解体できます。
たとえば、災害時の仮設住宅としてCLT構法を利用すれば、必要のない場合はCLTを解体し、必要に応じて再度組み立てるといった方法で利用可能です。これは、過去の建築業界の慣習である「スクラップアンドビルト」の考え方を脱し、持続可能性を重視する未来志向の素材と言えるでしょう。
◇CLTパネル工法
CLTパネル工法は、CLTを用いてパネルとして、床、壁、屋根などに使用して建築物を建てる工法です。CLTパネルは従来の耐力壁よりも面内の剛性や耐力が高く、そのため壁パネル自体の変形が少なく、建築物の水平変形の大半は接合部で起こります。
そのため、CLTパネル工法では接合部に耐力だけでなく変形能力(靱性)も必要とされます。2016年4月に建築基準法に基づいてCLTを建築の構造部材として認めるための手続きを簡素化し、CLTパネル工法による建築物の設計や建築を容易にするための一連の告示が公布・施行されました。これにより、CLTを使用する建築物について、大臣認定を受けずに建築確認を行うことが可能になったのです。
CLT構法の導入を検討!手法の魅力と課題
CLTは近年日本でも急速に普及している構法です。耐震性や断熱性に優れているだけでなく、活用することでさまざまなメリットがあります。しかし、まだ新しい素材なので課題もあり、上手く活用するためにもメリットと課題を把握しておきましょう。
◇工期を短くできる
RC造では湿式工法を採用するため、コンクリートが充分な強度を得るまでに1か月近くかかります。しかし、CLT工法ではCLTパネル同士をボルトなどで固定するだけなので、RC造のようにコンクリートの養生期間が必要ありません。
また、CLTパネルは工場で製造されて、加工した状態で現場に搬入されるため、現場では組み立てるだけすみ、そのぶん工期の短縮可能です。
◇中低層向けのデザインと相性が良い
CLT工法ではパネルを組み合わせて建築を進めるため、マンションや中低層の建築において多様なデザインを実現できます。CLTは木目が見えるため、木のぬくもりを感じさせる落ち着いた空間を演出しやすいのも魅力です。
また、RC造やS造と比べて製造時のエネルギー消費が少ないため、CO2排出量を低減できるため、環境問題に関心のある企業や個人にとって魅力的な素材だといえるでしょう。
◇素材のコスト面が課題
CLT工法はまだ新しい工法のため、RC造やS造に比べて材料や技術のコストが高いことが課題です。また、他の工法と比べると経験のある建築士や施工会社が少ないこともコストが高くなる理由のひとつだと考えられます。
ほかにもCLT工法はデータが少ないことから、安全性などを現場で確認しながら進めていく必要があり、そのため、安全確認の作業時間がかかり、それがコスト高になるケースもあります。そのため、特に中高層の建物を建築するための安全な構法確立が課題だといえるでしょう。
近年は、国がCLT構法を促進していることもあり、国や都道府県からの補助金が充実しているため、上手く活用すると他の工法と同じ予算で建てることも可能です。
CLT構法を用いた事例を紹介!
日本でもCLTを利用した建築は、近年急増しています。ここでは、CLT構法を用いた事例をご紹介します。
◇隈研吾デザイン監修のCLTパビリオン
隈研吾デザイン監修は「CLT PARK HARUMI」は、CLTパビリオンです。このパビリオンではCLTパネルを露出させ、木目の美しさを際立たせた半屋外の仕様が特徴で、真庭市産のヒノキ材とスギ材から作られたCLTが多く使用され、展示後は解体して真庭市の蒜山高原へ移築される予定です。
この移築により、木の持続可能性を示す「木の国・真庭」をアピールし、移築後は「風の葉」として地域の新たな観光文化拠点として利用する予定です。
◇神大寺幼稚園 付属施設
CLTは繊維が直交するように積層しているのが特徴の建築素材で、これを丸太組構法のログ材に応用すると、繊維層が縦方向に伸びる形状となります。これにより、ログ材特有のセトリング現象(高さ方向の収縮)を抑制することが可能になりました。
その結果、セトリングに関連する工程を省略でき、施工の手間を削減でき、そして通常の2倍の高さのログ材を使用することで、施工効率が向上にもつながりました。
◇Hair room TOARU
RC壁とCLT屋根を組み合わせた構造です。カットスペースには鏡、机などがあり、そこに自然な建築が生まれ、モノとコトが複層的に混ざり合っているのが特徴です。RC壁とCLT屋根は、アングルとビスだけで接合されており、RCは外部の荷重に対応し、CLTは長いスパンの梁なし構造を形成しています。
各部材は防火性や環境性能を考慮し、適切な場所に配置され、重量や熱負荷を押さえながら、木目を最大限に楽しめる空間が広がります。
CLT構法は、オーストリアを起源とし、現在は世界各国で利用されています。最も顕著な特徴は、繊維方向が直交する積層構造で、これにより高い安定性が得られます。また、厚いパネルを使用するため、断熱性にも優れ、耐震性を向上させることができます。また、解体と再利用が容易で、持続可能性を重視する素材として評価されています。
CLTパネル工法では、建物の各部にCLTパネルを組み合わせて使用し、多様なデザインを実現できます。耐力と変形能力の両方が求められ、建築基準法の簡素化により、建築における利用が容易になりました。
CLT構法の利点として、工期の短縮と中低層建築のデザインに適していることが挙げられます。また、環境への負荷が低い素材として注目されています。しかし、高い材料コストや技術の普及に課題があります。
事例として、隈研吾デザイン監修のCLTパビリオン、神大寺幼稚園の付属施設、Hair room TOARUなど、日本国内でのCLT構法の建築事例を紹介しました。CLT構法は、持続可能性と設計の柔軟性を兼ね備え、建築分野でますます注目されている素材であることがわかります。