CLTはコストが高い?素材の特徴や業者の選定ポイント
CLTはコストが高い?素材の特徴や業者の選定ポイント
2023/12/18
CLTの価格は1m³あたり約150,000円程度ですが、世界的に生産能力が高く、競争が激しいため、価格は下がりにくい現状があります。一方で、CLTは優れた耐震性、耐火性、断熱性を持ち、高品質な建材として評価されています。
CLTの特長を活かして高品質かつ効率的な建築を実現するために、信頼性のある業者を選ぶことが重要です。
CLTとはどのような素材?木造建築の素材としての特徴
CLT(Cross Laminated Timber)は、これまでの木造建築の課題を解決し、林業の課題やSDGsへの目標達成にも有効と言われている素材です。CLTの構成はひき板(ラミナ)を並べた後、繊維方向が直交するように積層接着した木質系材料で、JASでは「直交集成板」と呼ばれています。建築の構造材の他、土木用材、家具などにも使用されています。
◇海外で利用されることが多い素材
CLTは1994年にオーストリアのグラーツ工科大学のゲルハルト・シックホーファー教授らによって開発された木材で、翌年以降オーストリアを中心にヨーロッパ各国や北米、オーストラリアなどで広く普及しました。近年はイギリスやスイス、イタリアでさまざまな建築に利用され、最近ではカナダやアメリカ、オーストラリアなどでもCLTを使った高層建築が建てられるなど、各国でCLTの利用が急速に拡大しています。
日本では2013年12月に日本農林規格(JAS)にてCLTの製造規格が制定され、さらに2016年4月には建築基準法に関連したCLTの告示が施行されました。ここから日本におけるCLTの一般利用が始まり、普及が進められています。
◇軽く施工にかかる時間を短縮できる
CLTは工場で加工された形状で搬入されるため、現場では組み立てるだけなので工期が短縮でき、そのうえ接合具がシンプルなため、熟練工でなくても施工が可能です。そのため、災害時の仮設住宅としてパーツとして保管し、必要な時に組み立てて利用することもできます。
◇耐震性・耐火性に優れる
CLTは優れた耐震性を持っているのが特徴で、阪神大震災クラスの地震を想定した振動台実験では、CLT建築はわずか3cm程度しか変形せず、大地震後も損傷が軽微であるという結果が出ています。また、耐火性も高く、表面が炭化するものの、毎分約1mmの速さでゆっくりと燃え進み、厚さが90mmの壁でさえ1時間燃えても焼け落ちないことが確認されています。
さらに、CLTは優れた断熱性を持ち、厚さが90mmのCLTはコンクリートの120mmとほぼ同等の断熱性能を有しています。熱伝導率も木材はコンクリートの1/10、鉄の1/350と非常に低いため、CLTは冬が暖かく、夏は涼しい理想的な素材だといえるでしょう。
CLTはコストが高い?S造・RC造と比較
CLTの現在の課題は価格で、他の建築材料と比べて、CLTの価格が高いのは事実です。
◇素材そのものの価格は高め
CLTの価格は1m³あたり約150,000円程度です。世界のCLTの年間生産能力は100万m³を超えており、高性能な工場設備を導入しているため、価格を安く設定できます。
しかし、日本の需要量は年間約5,000m³ほどで、この需要に対して価格競争力があるとは言い難く、現在のところ急激に価格が下がる傾向はありません。
◇作業員・作業時間の面から比較する
素材だけで見るとCLT造は、RC造(鉄筋コンクリート造)、S造(鉄骨造)に比べると本体価格が高いですが、人件費や工費で考えて比較するとそうではないようです。岡山県が岡山県建築士事務所協会と連携し、浅口市内にある2階建て事務所のCLT造建築を基に、昨年度と同じ手法で、同じ事務所をRC造、そしてS造で建築した場合の建築コストを比較検討しています。
CLT造、RC造、S造共に「内装は木質仕上げ」「断熱性能はCLT造と同程度」の同じ条件で試算すると、作業員の人数はCLT造が100に対して、RC造は254、S造は136と結果が出ました。
ここから見るとCLT造は他の工法に比べると、少ない人数で施工できるのが分かります。
また、作業期間でもCLT造は6ヶ月で施工完了するのに対して、RC造、S造は施工完了するのに7ヶ月かかり、CLT造は1ヵ月の工期が短縮できるため、そのぶん人件費と工費の削減可能です。
◇トータルで見ると他の建築構造と大差ない
そして、人件費や工費などのすべてを合わせた建築コストを比較し、CLTを100%とするとRC造は10%8、S造は104%となり、ほとんど大差がなく、一概に「CLT造が高い」とは言えないことがわかりました。
CLTを用いて高品質で低コストの住まい!信頼できる業者選び
CLTは新しい木材であるため、日本で使用されるようになったのは最近で、取り扱いをしていない業者もあります。そのため、CLTの活用を成功させるためには信頼できる業者選びは重要です。
◇規格に適合した素材を扱っているか
CLTに関する日本農林規格が制定された背景には、品質や強度がはっきりしている建築資材への需要の高まりがあるからです。建築基準法の改正により、中〜大規模建築物における木造化が可能になったこともこの需要の拡大に影響を与えました。
その結果、品質や強度が明確な木材への需要が増加したと考えられます。日本ではJAS規格に適合するCLTを製造・販売する業者は8社のみで、これらの業者が取り扱う木材は高い精度を持ち、構造計算や燃え代設計に対応しています。
◇製造能力の高さを確認する
CLTの年間製造能力の高い会社は、自社でCLT工場があるため製造特化とスケールメリットにより製造単価を低く抑えることがあります。これは受注状況によっても変動しますが、メーカー選びにおいて重要な要素の一つです。
◇設計から依頼するのか、素材のみを仕入れるのか検討する
設計から依頼する場合は、設計・販売・施工をワンストップで行う業者の中から選ぶとよいでしょう。一方、木材のみを必要とする場合は、製造・販売業者の方が自社一貫製造しているため、費用が抑えられることがあるので、見積もり時に注意してチェックすることが重要です。
CLTを使用した住宅の施工が可能な業者は、多くはありませんが、中には独自の技術やノウハウを持った業者も存在します。CLTを使用した住宅を依頼する際は、実績も確認の上で検討すると良いでしょう。
CLT(Cross Laminated Timber)は、木造建築に革命をもたらす素材で、繊維方向が直交する積層接着木材です。これまで海外で普及しており、耐震性・耐火性に優れ、工期を短縮できる利点があります。
ただし、CLTの価格は他の建材に比べ高めで、需要と供給のバランスが課題となっています。しかし、工期の短縮や施工効率の向上により、総合的なコスト面で他の建築構造と大きな差はありません。信頼性のある業者選びが重要であり、JAS規格に適合し、製造能力が高いメーカーを選ぶことがポイントです。
CLTは将来の木造建築の可能性を広げつつ、高品質で低コストの住宅建設に寄与しています。