CLTの特徴や使用木材による違いなどCLTの基本を徹底解説!
CLTの特徴や使用木材による違いなどCLTの基本を徹底解説!
2023/11/29
CLT(Cross-Laminated Timber)は、建築業界に革命をもたらす木質材料で、軽量かつ優れた強度を備え、持続可能性を追求する建築に向いています。スギ、ヒノキ、カラマツなどの異なる木材を組み合わせたCLTハイブリッドも注目を集めています。こちらでは、CLTの特徴や木材選択の重要性について解説します。
CLTの特徴とは?主な4つの特徴について
CLTは、ひき板を直交配置し積層接着した木質系材料で、建築や土木、家具などに幅広く利用されています。建物の構造躯体として優れた強度を誇り、同時に断熱性や遮炎性、遮熱性、遮音性などの多岐にわたる性能が期待されています。持続可能性と工期短縮の面でも注目を集め、プレファブ化により迅速な施工が可能です。以下で主な4つの特徴について詳細に解説します。
軽量
CLTの特徴としては、木質建築材料として軽量であり、鉄筋コンクリートに比べて約5分の1の重量しかありません。1㎥あたりの重量も鉄筋コンクリートの2.4tに対してCLTは0.5tとなり、同じ階数の建物でも基礎コストが大幅に削減でき、輸送コストも低減します。
工期が短い
製造工場で開口部加工や穴あけ加工を行い、現場では組み立てるだけで済むため、工期が短縮されます。乾式工法の採用により養生期間が不要で、木造の専門職人の依存が少なく、仮設や重機の利用期間も大幅に削減できるでしょう。
デザインの柔軟性
そして、床パネルに利用することで、従来の木造では難しかった大きなオーバーハングや二方向のオーバーハングが実現可能です。また、鉄骨造やRC造との相性が良く、混構造も可能であり、建築のデザインに柔軟性をもたらします。
大判の現し面
他にも、CLTの片面最外層に無地上小材を使用することで、大判の現し面を実現できます。節ありでの現しも良好ですが、無地上小での現しは特に優れています。CLTは異等級最高強度のMx120のパネルを製造する際、無地上小ラミナを使用することができ、結果として優れた現し面を確保できる点が意匠性向上に貢献するでしょう。
CLTに使用される木材
スギ材はCLTにおいて優れた特徴を持っています。まず、空気を浄化し、調温・調湿の作用が強く、接着剤を使用するCLTにおいては他の木材と比較してプラスの効果をもたらします。スギは加工がしやすいため、CLTとして適した木材です。スギのCLTは、コンクリートや鉄に比べて軽量であり、施工性が高いため、ゼネコンの中・大規模木造建築においては耐震壁のパネル材として広く用いられています。
ヒノキはもともと強度の高い木材であり、CLTに使用することでさらに強固な構造になります。香りや色艶などの無垢な感触を残しつつ、高品質なパネル材として利用が可能です。ただし、高級建材であるヒノキの使用はCLTの価格を押し上げる可能性があり、コストが高いとされるCLTの価格に影響を与える可能性があります。そのため、ヒノキ材を利用する際はコストの面も考慮する必要があるでしょう。ヒノキとスギを組み合わせたCLTハイブリッド材も製造され、両者のメリットを活かした建材が実現可能です。
近年、木目がくっきりとしていて飴色のカラマツは木材としての価値が再評価され、特にフローリングに使用すると独特の風合い・風格を楽しむことができます。かつては「天カラ」と呼ばれ、神社仏閣などにも利用されていました。
この木材は硬く丈夫であり、耐久性と耐湿性に優れています。近年の乾燥技術の向上により、割れなどの弱点が改善され、需要が増加傾向です。また、短期間で伐採が可能なため、注目を浴びています。
そして、CLTの登場によりカラマツ材は、大規模な建築材としても利用されるようになりました。カラマツを使用した建物は景観に調和し、経年劣化を味わいとする木造建築に適しています。
CLTに使用される木材は多岐にわたります。CLT木材は、これまでになかった特徴を活かせるとされており、新たな建材としてますます期待されていくでしょう。
CLTはどのように作られる?製造方法と流れ
CLTの製造方法は、複数の工程を経て構築されています。最初の工程は、原料となる丸太からラミナを作ることです。丸太から皮を剥ぎ、厚さ17mmに切り分けられたラミナは、風通しの良い場所で自然乾燥されます。
そして乾燥させたラミナはかんながけを受け、厚さ14mmに加工されて長さや幅を整えていきます。手作業による板目の揃えは、高い意匠性を持つCLTに仕上げるための工程です。
次に、ラミナを幅方向に並べ、高周波プレスを使用して幅接着を行い、単層の板に加工します。1枚のCLTには多数のラミナが使用され、その枚数はサイズ1.2×6mの5層5プライ、ラミナ幅120mmでの計算なら130枚もの枚数になります。
その後は、節のある部分にボンドを塗り、節駒を叩いて埋め込む化粧仕上げの工程です。単層の板にしたラミナはかんながけで均一に削り、12mm層に整えられます。その後、単層の板を重ね、角層の繊維方向が直交するように圧着して積層が行われます。接着剤の硬化には約15分かかるため、高いスピードと正確性が求められる工程です。この時使用される接着剤には、構造用集成材製造に一般的に用いられている、イソシアネート系接着剤や、耐水性や耐熱性があり屋外でも使用可能なレゾルシノール樹脂接着剤が一般的に採用されます。
最後に外周成形が行われ、外周のばらつきやはみ出た接着剤をテノーナーを使って加工成形します。誤差は厚さ0.5mm以内で直角に整えられ、床板や壁材に適した形状の完成です。
最終的な工程は、1枚ずつ問題がないか人の手による検品です。そして検品が完了すると、出荷時には傷つかないようにダンボールや木で保護され、梱包されて出荷されます。CLTの製造はこれらの工程を経て、高品質で耐久性のある木質建築材料が完成します。
CLT(Cross-Laminated Timber)は、木質材料を直交配置して積層接着した建築材料で、軽量でありながら優れた強度を持ち、断熱性や遮炎性、遮熱性、遮音性など多彩な性能を提供します。また、工期の短縮が可能で、デザインの柔軟性が高く、大判の現し面を持つため、建築において優れた選択肢です。
さらに、異なる木材種を組み合わせたCLTハイブリッドも利用され、持続可能性と効率的な建築に寄与しています。CLTの製造は、丸太からラミナを作り、加工し、積層し、最終的に検品を経て高品質の建築材料が完成します。
高品質の建築材料を効率的に生産できるため、建築業界におけるCLTの期待はますます高まっています。CLTは持続可能性、効率性、革新性を兼ね備えた材料として、現代建築の未来を切り拓いています。