CLTのデメリットと打開に向けた取り組みとは?
CLTのデメリットと打開に向けた取り組みとは?
2023/11/30
CLTの普及には費用増や水に弱い性質などのデメリットがあり、建築業界の課題となっています。工場の限定的な数や材料費の高騰が普及を妨げ、水に対するデリケートさが雨対策を複雑化させています。
また、露出構造のためのデザイン活用には配管や配線の見え方への工夫が求められます。
これらの問題に対処するため、設計者、施工者、建築主はそれぞれ異なる課題に対応しつつ、政府も助成金や補助事業を通じて支援しています。これにより、CLTの需要が拡大し、脱炭素社会の構築に寄与することが期待されます。
CLTのデメリットとは?普及を阻む課題
CLTのデメリット
・価格の問題
CLT工法の主な問題は、費用面の問題です。日本の建築業界ではCLTを加工できる工場が限られており、そのため普及が進んでいません。これがさまざまな点で費用がかさむ原因となっています。CLT木材の製造が比較的新しく、専門企業がわずかしか存在していないため、材料費がが高くなっています。
・仕上げに限界がある
CLT木材は水に弱いため、現行の技術では外部の仕上げとして使用することが難しいです。水分が浸透すると反りが生じ、変形してしまいます。建設中の雨対策が大きな課題であり、水に対してデリケートな素材となっています。
・配管・配線スペースの工夫
CLT工法では建物の構造部分を露出させ、デザインの一部として活かす手法が用いられます。しかし、人工的な配管や配線が存在する場合には、これが内装の雰囲気を損なう恐れがあります。そのため、CLTをデザインに活かす際には、配管や配線の見え方に工夫が求められます。
CLTの課題
・設計者側の課題
設計者はCLTの設計手法を合理的かつ簡素化し、デジタルトランスフォーメーションを推進する必要があります。新しいCLT材料との組み合わせを開発し、予算超過のリスクを管理するための手段を整備します。
・施工者側の課題
施工者は防水や防火性能の確保、CLTの発注や調達に関する手引きの整備が求められます。施工後の不具合対応に備え、情報の積み上げとリスク回避の手引書の作成を行います。
・建築主側の課題
建築主は予算超過への対策としてCLTの部分的な利用やローコスト商品の検討が求められます。また、維持管理に関する情報不足に対処し、CLTのメリットを明確に示す手引書を提供します。
CLTのデメリットや課題解決に向けた取り組み
CLTで適用される補助金・助成金
・CLT活用建築物等実証事業(林野庁)
CLTを建築物に活用する建築主等に対する助成事業です。
・事業内容
CLTを活用した建築物の設計・建築や部材の性能実証、街づくりの実証、CLT製造企業との連携構築のモデル的な取組、BIMを活用した実証など。
・応募資格
建築主等と協議会運営者の連名が必要です。
・補助の内容
建築費等の事業経費の3/10または1/2(上限)、助成額の上限は85万円程度。
・サステナブル建築物等先導事業及び優良木造建築物等整備推進事業(国土交通省)
一住宅や建築物における木造化を促進し、先導的な技術の普及と優良木造建築物の整備を支援するプロジェクトです。
・木造先導事業
補助対象費用:調査設計計画費、建設工事費、技術の検証費、附帯事務費
補助の内容: 採択1案件につき上限500万円
・優良木造事業
補助対象費用:調査設計計画費、建設工事費(木造化しない場合の建設工事費との差額の1/3以内)
補助の内容: 採択1案件につき上限300万円
CLTの需要拡大に向けた取り組み
CLTの需要拡大に向けた取り組みは、政府や産官学が連携して行っています。
・建築基準の合理化と推進
政府は、CLTの普及を促進するために建築基準の合理化を進めています。これにより、CLTを使用した建築がより円滑に進行しやすくなります。建築基準の合理化は、設計・施工の手続きを簡素化し、CLTの導入を容易にします。
・規格化と標準化の推進
政府は、CLTパネルの標準化と規格化に向けた取り組みを行っています。これにより、異なるメーカーのCLTが互換性を持ち、効率的な施工が可能となります。規格化は品質の確保や施工効率の向上に寄与します。
・建築材料としての安全性の確保
CLTの安全性を確保するために、政府は建築基準を含む各種規制において、CLTの適切な使用方法や基準を明確にしています。これにより、CLTを使用した建築物が高い品質と安全性を備えることが期待されます。
・CLTの性能向上と技術開発
政府はCLTの性能向上や施工技術の開発を支援しています。建築基準においても、CLTが要求される性能基準が明確にされ、技術の進歩と共に更新されることで、より高度で持続可能な建築が可能となります。
・設計者・施工者向けの教育プログラム
CLTを活用した建築の需要拡大には、設計者や施工者のスキル向上が不可欠です。政府は講習会や教育プログラムを通じて、設計者や施工者に対してCLTの特性や適切な取り扱いについての知識を提供しています。これが建築基準の適切な遵守を促進します。
・環境認証制度の活用
CLTの環境への優れた貢献を評価するため、政府は環境認証制度を活用しています。この認証は建築基準の一環として、木材の利用量や断熱性などを評価し、CLTを使用した建築物が環境に対して好影響を与えることを示しています。
これらの取り組みが建築基準と共に進むことで、CLTの需要が拡大し、持続可能かつ効率的な建築が促進されることが期待されます。
CLTの将来性は?期待される役割
世界は脱炭素化に向けて大きな一歩を踏み出しています。地球温暖化の防止を目指す取り組みが活発化しており、2050年までに温室効果ガスの排出を「実質ゼロ」にするという目標を掲げる国や地域が世界中で120以上あります。我が国もこの取り組みに参加し、2020年秋にその目標を表明しました。
CO2の排出量は将来的に大きなリスクを引き起こす可能性があります。この課題に対処するためCLTが注目されています。CLTは内部にCO2を蓄積し、製造・建設時の排出量を低減できます。そのため、中大規模建設物などで広く使用され、これからの建設・不動産分野の脱炭素化や新しい価値の創造に貢献することが期待されています。
木質材料の魅力や特性が再び注目を浴び、これが環境に配慮した建築や不動産の発展に寄与することが期待されています。
CLTのデメリットは、費用の増加や水に弱い性質などで、これが普及の課題となっています。工場の限定数や材料費の高騰が普及を阻害し、雨対策の複雑化が求められています。また、露出構造によるデザイン利用には、配管や配線の見え方に工夫が必要です。
課題解決のため、設計者、施工者、建築主は異なる課題に取り組み、政府も補助金や助成事業を通じて支援しています。これにより、CLTの需要が拡大し、脱炭素社会の構築に寄与することが期待されます。