CLTの価格は?価格を抑えるための取り組みと補助金・助成金について
CLTの価格は?価格を抑えるための取り組みと補助金・助成金について
2023/11/28
CLTの価格は通常の建築用木材に比べて高いことが一般的です。CLTの価格はさまざまな要因によって決まり、素材の特性やプロジェクトの要求に応じて変動します。そのため、CLTを使用する際には、要因を詳細に考慮し、プロジェクトの予算に合わせた適切な選択を行うことが重要です。
CLTの価格を決める要素とは?価格の目安
近年、建築業界において注目を浴びている木造素材のひとつが「CLT(Cross-Laminated Timber)」です。CLTは、繊維方向を交差させた複数の木材板を積層して作られる特殊な建築素材であり、その特性は集成材と合板の利点を組み合わせたものと言えます。これにより、建築プロジェクトにおけるCLTの使用が増加しています。
しかし、CLTの価格は通常の建築用木材に比べて高いことが一般的です。この高価格には、いくつかの要因が影響しています。
CLTの価格が高い理由
CLTの価格は、基本的に「マザーボード」と呼ばれるCLTの原料となる木材の価格に、加工費用と輸送費用が加算されて計算されます。マザーボードの価格は、CLTを製造するメーカーによって異なり、木材の種類、強度、使用環境に合わせた接着剤の選定などが価格に影響を与えます。
また、加工費用はCLTを具体的な形状に切断し、仕上げるための費用であり、これはプロジェクトの要件によって異なります。一般的な加工方法である1面サンダー加工、成形カット加工、スプライン加工(両端欠け切り)などは通常の価格範囲内で提供されますが、より複雑な加工が必要な場合は別途コストがかかります。
さらに、CLTを使用するプロジェクトにおいては、CLTそのものの費用以外にも構造計算や防火計算、耐火措置、断熱、遮音に関する設計費用などを考慮する必要があります。また、CLTの施工には大型クレーンが必要な場合もあり、これらの追加コストもプロジェクト全体の価格に影響を与えます。
CLTの価格を抑える取り組み
CLTの価格は、欧州と日本で大きな差があります。欧州では立法m当たりの単価が7万円未満であるのに対し、日本では2019年時点で15万円以上と、2倍以上の価格がついています。この差異には、いくつかの理由が存在します。
なお、欧州ではCLTの生産および利用に関する多くの取り組みが行われ、効率的なコスト削減が実現されています。日本でもこれらの取り組みを通じてCLTの価格を抑え、木造建築の持続可能な選択肢として普及させるための試みが行われています。
市場規模の違い
欧州は日本に比べて市場規模が大きく、CLTの需要が多いため、大量生産が可能です。これにより、生産効率が向上し、コストを削減できます。
設備の向上
欧州のCLTメーカーは、大規模な設備を導入し、自動化された生産プロセスを採用しています。これにより、労働力のコストを削減し、生産効率を高めています。
工期の短縮
CLTを用いた建築プロジェクトでは、工期の短縮が重要なアプローチとされています。これにより、建設現場のコストを削減し、プロジェクトの収益を早期に実現できます。CLTの効率的な組み立てにより、工期の短縮が実現されます。
低コスト施工法の開発
CLTパネルの低コスト施工法が開発され、プレキャストコンクリート構造で実用化されています。この工法は加工精度に影響を受けず、コストを削減しながら構造性能を維持できるため、CLTの利用を促進しています。
技術開発と評価
非構造用CLTや保存処理CLTなど、付加価値の高いCLT製品の開発が行われています。また、製造・流通におけるコストと環境影響の評価が進められ、製品価格の削減に向けた取り組みが行われています。
CLT建築で適用される補助金・助成金
CLTを用いた住宅建設プロジェクトにおいて、国からの補助金や助成金が利用できる場合があり、これらの支援措置は木造建築の持続可能性を高める重要な要素となっています。
これらの補助金や助成金は、CLTを用いた木造建築の普及と持続可能性を促進するための貴重なリソースとして活用できます。詳細な情報や条件については、各プログラムを提供する機関や官庁のウェブサイトを確認し、適切な申請手続きを行うことが必要です。
JAS構造材実証支援事業
このプログラムは、JAS(日本農林規格)構造材を活用する実証プロジェクトに対して支援を提供します。登録事業者が、JAS構造材を用いた建築プロジェクトにおいて、木材調達費の一部を助成されます。また、このプロジェクトを通じてJAS構造材の利用における課題の特定や改善策の提案が行われます。ただし、支援対象となる建築物には一定の条件があるため、適用可能なプロジェクトについて事前に確認が必要です。
CLT活用建築物等実証事業
このプログラムは、CLT木材を活用した建築物の設計、建設、またはCLT部材の性能実証に焦点を当てています。実証事業には、建築実証、設計実証、性能実証のいずれか、またはそれらの組み合わせが含まれます。このプロジェクトを通じて、CLT木材の利点や課題を把握し、他の工法と比較して工事費や工期などを評価することが求められます。
出典元:公益財団法人 日本住宅・木材技術センター「R5年2月 CLT活用建築物等実証事業の募集について」
令和5年度みやぎCLT普及促進事業補助金
この補助金プログラムは、宮城県の森林資源を有効活用し、宮城県産材の需要を拡大することを目的としています。また、新技術やCLT木材を利用した建築プロジェクトを支援し、宮城県産CLTの需要開拓と流通拡大を促進します。このプログラムは、地域の木材産業に貢献する取り組みを支援するものです。
出典元:宮城県「令和5年度みやぎCLT普及促進事業補助金(県単独事業)」
CLT(Cross-Laminated Timber)の価格は、原料木材の価格、加工費、輸送費に影響されます。欧州では市場規模の大きさ、生産効率の向上、低コスト施工法の開発により、価格が日本より低いです。
日本では、CLT建築に対する補助金や助成金が提供され、木造建築の持続可能性を高めることが目指されています。これらの補助金には、JAS構造材実証支援事業、CLT活用建築物等実証事業、みやぎCLT普及促進事業補助金などがあります。これらの支援措置は、CLTを利用した木造建築の普及に貢献しています。
CLTについてもっと詳しく知りたい方は、「CLT(Cross Laminated Timber)がわかる専門メディア」を是非ご覧ください。