CLTを使ってどのような建築物が作られるのか?事例とともに紹介
CLTを使ってどのような建築物が作られるのか?事例とともに紹介
2023/09/30
CLTは集成材と合板の特性を組み合わせた木材で、強度があるのが特徴です。建物に使用することで、施工時間の短縮、コスト削減、温室効果ガスの削減などのメリットを得られます。耐火構造認定を取得したことで、現在は高層建築にも使用可能です。よく知られている建築物としては、CLTパークハルミ、⾼惣木工ビル、PARK WOOD ⾼森などがあります。
CLTの特徴と建築資材としてのメリット
まずは、CLTのことを知っていただくために、集成材との違い、CLTの特徴と建築資材メリットについてご説明いたします。
集成材と合板の違い
集成材は、繊維の向きが長辺に沿っていて、長さ方向に強度があり、建物の柱や梁などに使用される木材です。厚さ数cm、幅数十cmのひき板と呼ばれる薄い板を同じ繊維方向に何枚も重ねて接着剤で貼り合わせ作ります。
一方、合板は、厚さ数mm、幅が約90cm、長さが180~270cmの薄い一枚板を、木の繊維方向を縦横交互に重ねて接着した木材です。縦横の変形に強いため、壁や屋根などに使用されます。
CLTは、集成材と合板を組み合わせたもので、ふたつの特性を持ち合わせています。強度が強化されているため、大規模な建物や中層の建物を建設にも使用可能です。
主な特徴と建築資材としてのメリット
CLTは、自由度が高く、構造躯体として利用でき、製材用には向かない曲がりなどのあるB材も有効活用でき、持続可能な社会への貢献つながると期待されている建材です。主な特徴と建築資材としてのメリットは、次の4つです。
施工にかかる時間を短縮できる
工場内でパネルを組み立ててから現場に運び、組み立てるプレハブ工法を採用するため、工事期間を短縮できるメリットがあります。接合金具がシンプルなので、熟練した職人がいなくても施工が可能なのも特徴です。実際、欧州ではRC造なら建設に約30週間かかる9階建の共同住宅を、4名の技術者でわずか9週間で完成した事例があります。
軽量でコスト削減を図れる
RC造の建物と比較するとCLT建築物の重量は5分の1以下で、同じ大きさのプレキャストコンクリートパネルのみを比較しても4分の1の重さしかありません。これにより、建物の基礎工事を簡略化でき、材料輸送時のコスト削減も図れます。
温室効果ガス排出量も減らせる
CLTで建設された木造学校校舎の温室効果ガス排出量は、同じ仕様で建設した鉄骨造やRC造に比べて少ないのも特徴です。
機能性と安全性の高い建物が建築できる
軽量でありながら、断熱性、耐震性、耐火性に優れています。CLT建築物は年間を通じて快適な環境を整えられ、地震と火災に強い建物を建築できるものメリットです。
CLTでどのような建物が建てられる?
次に、CLT木材を利用してどのような建築物が建てられるかご紹介いたします。
高層建築の施工も可能
CLT木材は高層建築への使用も可能です。それまでの流れを簡単にご説明いたします。
CLT木材の開発に取り組む東京農工大学を代表機関とする研究グループは、日本CLT協会に申請し、2018年11月日本で初めて2時間の耐火構造認定を取得しました。それ以前は、1時間耐火構造のCLT外壁しかなかったことを理由に、使用できる建築物の階数に制限が設けられていましたが、これによりCLT木材を中高層ビルへの利用が可能となっています。
2022年には、株式会社大林組がこの技術を活用して、11階建ての木造高層耐火ビルを建設しました。同研究成果を元に、従来のものより被覆層を薄くしたCLT間仕切壁についても2018年8月に2時間の耐火構造認定を取得し、株式会社東洋ハウジングにより15階建ての木造高層マンションが建設中です。
CLTを使って建てられる建物
具体的にどのような建築物が建てられるか、建物の規模別にご紹介いたします。
小規模建物
建築基準法6条1項四号に規定される建築物であり、「四号建築物」ともいわれます。簡単にいうと中規模以下の建物のことで、大きさとしては一般的な戸建てぐらいです。CLTを使って建てられる小規模建物としては、バス停、休憩所、戸建て住宅、事務所 などがあります。
CLTは建物の床や壁といった枠組みとしてだけでなく、建物設備にも使用できるため、ベンチにも多用されている建材です。
中規模建物
建築基準法6条1項三号に定義される建築物であり、小規模にも大規模にも該当しない中間の大きさの建物を指します。構造によって区別があり、木造の場合、3階以上かつ高さが13m、もしくは軒の高さが9mを超える建物が中規模建物です。CLTを使って建てられる中規模建物としては、事務所、グループホームなど社会福祉施設、学校関連施設などがあります。
大規模建物
建築基準法6条1項二号に定義される建築物で、高さが60m以下の建築物です。中規模建物同様に構造によって区別があり、木造の場合、高さが13m超えまたは軒の高さが9m超の建物が該当します。CLTを使って建てられる大規模建築物は、東京オリンピックのパビリオン、20階建て以内の研修センターやビル、ホール、庁舎などです。
CLTの建築事例からみるCLTの可能性
CLTの可能性を知っていただくために、CLT事例を3つご紹介いたします。
CLTパークハルミ
地上1階建てのパビリオン棟と2階建ての屋内展示棟から構成されている建築物で、延べ面積はそれぞれ約600㎡と約985㎡です。建物に使われたCLT建材の総量は、約680㎥にもおよびます。設計と工事監理は三菱地所設計、デザイン監修は隈研吾建築都市設計事務所(東京都港区)、施工は三菱地所ホームが担当しました。CLTパネルは、岡山県真庭市にある銘建工業によって製造されたもので、材料に真庭市産のヒノキが使われています。
⾼惣木工ビル
建築主の「木材を使用して地域に貢献したい」という要望に応えて建設されたビルで、主要構造部に製材を使用した7階建の木造高層建築です。施工を担当した株式会社シェルターは、日本全国のどの地域でも地元の木材を使用して高層ビルを建設できる技術とノウハウを蓄積しています。
⾼惣木工ビルを建設する際も、汎用性の高い木造ビルのモデルケースとすることを目指し、調達が容易な製材と、オープンになっている木質耐火技術を使用しました。周辺の賃料相場を考慮して、建築主が必要なリターンを得られるような工事費に抑えられています。
使用された木材は、東日本大震災の復興を支援する一環として、宮城、岩手、福島などから調達し、その総量は467㎥です。さらに、森林認証材を使用し、SGEC/PEFCのプロジェクト認証も取得しています。
PARK WOOD ⾼森
三菱地所株式会社は、CLTの事業化に向けた研究開発に積極的に取り組んでおり、CLTを活用した建築物の普及を推進し、先導的な役割を果たすことを目指しています。PARK WOOD ⾼森の建設では、工場で生産されたCLTと鉄筋を組み合わせる乾式工法を採用し、従来の鉄筋コンクリート造に比べて工期を約3カ月短縮できました。
建物の軽量化を実現し、構造躯体(基礎、杭、建物躯体など)の工事負荷の軽減にも成功しています。建物への木材の使用により、建物全体で約141.5トンの二酸化炭素を貯蔵することが可能です。建物の一部はプレミアム住居として、木造柱を含む内装の天井や壁などを木質化し、木の温かみを感じられる仕様にしてあり好評を得ています。
国内の木造建築物の多くは5階建て以下であるため、このような地域材を多用した木造ビルが増えることで、地域の森林資源の循環利用、林業の振興、環境保全、地域経済の活性化に寄与し、SDGsの達成にも貢献できるでしょう。
CLTは、木材の建築資材として注目されている材料で、集成材と合板の両方の特性を兼ね備えていて、強度があるのが特徴です。CLTはプレハブ工法を採用するため工事期間を短縮でき、軽量で基礎工事を簡略化できるため、コスト削減を実現できるメリットがあります。
CLTで建設された建物は、温室効果ガス排出量が少なく、建物に二酸化炭素を固定できるため、持続可能な社会への貢献できると期待されている建材です。2時間の耐火構造認定を取得したことで、日本国内でも小規模建築物から大規模建築物、さらに高層建築への利用ができるようになりました。CLT建材を使って建築された建物としては、CLTパークハルミ、⾼惣木工ビル、PARK WOOD ⾼森などよく知られています。