CLT工法で建てられた建築物の耐用年数は?CLTの耐久性について
CLT工法で建てられた建築物の耐用年数は?CLTの耐久性について
2023/09/28
建築業界は環境への配慮がますます高まり、持続可能な建築材料の需要が急速に増加しています。その中でも、CLT(クロス・ラミネイティド・ティンバー)は、新たな可能性を切り開く革新的な木質建材として注目を浴びています。
この記事では、CLT工法を用いて建てられた建築物の耐用年数に焦点を当て、その耐久性について詳しく探っていきます。
また、JAS規格に基づいたCLTの製造を行う国内メーカー3社も紹介しています。
CLT工法とCLT工法の耐用年数について
建築業界における環境への配慮が高まる中、持続可能な建築材料への需要が急増しています。その一つがCLT(クロス・ラミネイティド・ティンバー)です。
この革新的な建材は、環境への負荷を低減し、高い機能性を提供することで、建築業界に新たな可能性を切り開いています。
CLTの特徴
CLTは、欧州で開発された建築工法で、木材の層を互いに直交するように積層した上で接着した厚型パネルから成り立っています。この特殊な構造により、CLTは驚くほどの寸法安定性を備えており、また高い耐震性を実現します。
さらに、優れた断熱性能も持つため、建築物のエネルギー効率を向上させます。
CLTの用途
CLTは通常、90~210mm程度の厚みを持つパネルとして製造され、大判サイズも可能です。これにより、建築デザインの自由度が高まり、施工効率が向上します。
さらに、国産のスギなどでもCLTパネルを製作できるため、国内の森林資源を有効活用する可能性が広がります。
CLTは環境に優しい
CLTの魅力の一つは、環境に優しい建材であることです。森林は成長過程で二酸化炭素(CO?)を吸収し、木材として固定します。そのため、木材の使用はCO?排出を削減し、地球温暖化に貢献します。
またCLTは長期的にCO2を固定できるため、建築業界における持続可能な建材としての注目度が高まっています。
日本では、内閣官房や地方自治体が国産材CLTの普及を奨励し、林業振興と地域への貢献を促進しています。特に、高知県ではCLT建築の推進協議会を設立し、技術向上と普及に積極的に取り組んでいます。
CLTの耐久性
JAS規格で認められた接着剤を使用し、基準を守って作られたCLTは、一般的な使用環境では50~70年は持つと言われています。
CLTの耐久性は?長い耐久性を求めるなら品質と環境が大切
CLTは木材の層を乾燥させてから直交させて接着することで製造されるため、強度と安定性に優れています。
腐食
木材の耐久性は、腐朽や劣化が主な懸念事項ですが、CLTは湿度20%以下で乾燥させた上で接着するため、金具の腐食リスクが低いとされています。
防腐処理に関しては、まだ規格が整備されていない新しい建材であり、耐久性の向上方法として薬剤の塗布が考えられます。
さらに、外部からの防水対策として、ラッピング、ウレタン樹脂、ポリマーセメントによる被覆処理などが検討されています。
接着剤
CLTを積層する際に使用される接着剤は、使用環境やCLTの用途に応じて選択されます。一般的な接着剤としては、水性高分子イソシアネート、メラミン、レゾルシノールなどがあり、それぞれ異なる耐久性と養生時間を持っています。
水性高分子イソシアネート
短時間で接着でき、高い耐久性を提供します。
レゾルシノール
外部環境に近い場所や耐久性が求められる部分にはレゾルシノールが使用されています。レゾルシノールは、長い養生時間を要するものの、外部環境にも対応した耐久性を備えています。
接着面
接着面は木材と接着剤を合わせて貼り合わせる部分であり、接着操作の信頼性が重要です。製造時の基準や品質管理が接着面の信頼性を確保するためには不可欠です。
気象条件
木材を外観に使用する場合、気象条件がCLTの耐久性に影響を与えることがあります。日本列島の気象環境は地域ごとに異なるため、地域ごとの気象指標である「CI値」に着目する必要があります。
CI値は、地域ごとに異なり、一般的に南の地域ほど高い数値となり、木材の劣化が進みやすいことを示します。
耐久性の評価
耐久性の評価には促進劣化試験や実態調査が使用されます。促進劣化試験では、負荷をかけて劣化を繰り返し調査し、耐用年数を導き出します。一方、実態調査では実際の使用状況を調査し、問題の有無を評価します。
CLTの耐久性については、適切な接着剤の選択と製造基準の遵守が鍵です。現行のJAS規格に適合したCLTは、一般的な使用環境で50~70年は持つとされていますが、耐久性の高い接着剤を使用すれば100年以上も持つ可能性も考えられます。
CLTの持続可能な建材としての将来は明るく、その耐久性を高めるための研究と技術の発展が期待されます。
JAS規格に基づいたCLTの製造を行う国内メーカー
ティンバラム
ティンバラムは、木材加工および施工に特化した企業で、持続的成長と技術革新を追求する挑戦者の精神を大切にしています。同社のコーポレートスローガンは、「まだないカタチを木でつくる」。環境保全、パンデミック、DXなどの環境変化に柔軟に対応しています。
さらに、ティンバラムはJAS認証工場として認められており、日本農林規格の品質基準に厳密に従っています。この認証により、顧客に対して高品質で信頼性のある木材製品を提供できます。
ティンバラムのCLTは、50cm角のプレス治具を68個備えたCLTプレス機で製造されています。カスタムサイズで製造でき、端材を減らすことでコストダウンを図っています。
銘建工業
銘建工業は、日本でCLTの開発と普及に取り組む先駆的企業です。同社のCLTは、大判パネルの使用により、建材点数を減少させ、建築プロジェクトの効率向上を実現しています。
また、簡易な接合方法を用いているため、熟練工でない人々でも施工できます。工場での事前加工も行い、開口部や配管の穴あけ加工を完了させ、現場への搬入を迅速かつ効率的に行うことができます。これにより、工期の短縮と騒音・廃棄物の削減が実現しているのです。
銘建工業は、CLTを通じて持続可能な建築を推進し、日本の木材産業に新たな展望をもたらしています。
山佐木材
山佐木材は、木材産業において独自の特徴と強みを持つ企業です。創業以来、同社は製材を主要な事業としてきましたが、平成3年にはスギ構造用集成材で日本農林規格(JAS)の認定を受け、大型木造建築にも積極的に取り組みました。その後、平成26年にはCLTのJAS認定を獲得し、国内で2番目のCLT製造工場となっています。
山佐木材は火災耐性の向上にも注力しており、特に鋼構造のオフィスビルなどでのCLTの床材利用において、2時間耐火について大臣認定を取得しています。
また、山佐木材は日本CLT協会の設立会員として、CLTの商品開発、普及、発展に積極的に参加し、木材利用の推進に貢献しています。