CLTは建築物にどのように利用される?事例でみるCLT木造建築の魅力
CLTは建築物にどのように利用される?事例でみるCLT木造建築の魅力
2023/08/31
耐震性や耐火性など耐久性が高く、木材を有効活用できることで注目されているCLT。近年では、建築や土木用材などにも使われるようになり身近なものになってきました。建築では、家だけでなくさまざまな建物に活用されています。
CLTは建築物にどのように利用される?製造と使用方法
CLTはオーストリア発祥の積層接着されたパネルを用いた工法です。オーストリアでは1990年代頃から活用されヨーロッパ各地、アメリカ、カナダへ広まり2010年頃より、日本の建築にも取り入られ始めました。
近年、中高層ビルの建築などで用いられることが多くなっているCLTには、次のいくつかの特徴があります。
- 軽量
- 工期が短い
- 施工が簡単で強度が高い
- 木材を有効活用できる
CLTは、まず丸太を挽き板(ラミナ)に製材、含水率が15%以下になるように乾燥させます。その後、ラミナの選別・加工を行い、所定の大きさ・厚さに、積層・接着・プレスの工程を経てマザーボードと呼ばれる大きな板が完成します。
完成したマザーボードから必要な大きさに切断した後、 用途ごとの加工を行いそれぞれ建築に使用されます。CLTの用途はさまざまありますが、代表的なのが中高階層などの建築です。建築で使用する場合にも次のような工法で使用されています。
- 軸組み工法+CLT
- CLTパネル工法
- 混構造
軸組み工法+CLTで利用する場合は、主に鉛直力や水平力のみ負担する壁・床に使用される際に利用される工法です。CLTパネルは壁のみに使用する際に用いられる工法で、防耐火設計にする場合に利用されています。
混構造は木造軸組工法やS造(鉄骨造)などにCLTを取り入れた工法のことです。床や壁としてCLTを取り入れることは可能ですが、場合によっては設計が複雑になってしまうこともあります。
また、CLTは建築で用いられているイメージが強いですが、土木用材や木製家具に使用されていることもあります。
CLTを使用した様々な建築事例を紹介
CLTを利用した建築は、さまざまありますが、実際にCLTを利用した建築物の事例は次のとおりです。
工場の休憩所:銘建工業株式会社の第2CLT工場休憩所は、CLTパネル工法で造られており、屋根・天井・床・壁・木製建具でCLTを取り入れています。
レディースクリニック:宝塚かおるレディースクリニックは、CLTパネル工法で待合室や廊下の共用スペースにCLTを取り入れた2階建てクリニックです。
公衆トイレ・休憩所:六甲山山頂エリアの公衆トイレ・休憩所は、鉄骨と組み合わせた構造の建物で、屋根にCLTを使用しています。薄型で折れ曲がったデザインが特徴です。
3階建て共同住宅:いわきCLT復興公営住宅は、CLTパネル工法で建築されています。大阪CLTパネルを活かし、全ての段差をなくしたモデルです。
6階建て事務所:高知県自治会館は、木造軸組工法+CLT耐震壁を使用した6階建て事務所で、西日本最大規模の木造耐火建物です。高耐力のCLT耐震壁を使用。オフィス全体の壁を少なくし、開放的な空間を実現しています。1階~3階を鉄筋コンクリート造、その上に3層分の木造を載せているのも特徴です。
2階建てこども園:真庭市立北房こども園は、CLTパネル工法+在来床組工法の構造とラーメン構造を室内の用途に合わせて使い分けた建物です。CLTを適材適所に使い分けているのが特徴です。
2階建てホテル:変なホテル ハウステンボス ウエストアームは、CLTパネル工法で平面設計により、CLT加工と施工の合理化、内装木質化を実現しています。
このようにさまざまなタイプの建物にCLTは活用されています。CLTは木材ですが、耐震性や防火性、耐久性に優れた素材です。震度7の地震にも耐えられることが振動台実験でも立証されています。
国内ハウスメーカーのCLTを使用した施工例を紹介
CLTを取り入れた建築は、日本国内のハウスメーカーも力を入れています。アキュラホーム、ヒノキブン、カバヤホーム、住友林業の4社はそれぞれ戸建て住宅や中規模建築物などに挑戦しています。
まず1社目のアキュラホームでは、木造軸組工法の5階建て純木造ビル実大耐震実験に参加し、震度7を想定した振動台実験をし、成功しました。
2社目のヒノキブンは、自社製造・加工を行った屋根パネルや内壁パネルなどを使用した、コインランドリーささゆりや各駅北展示場の施工実績があります。また、大東建託や竹中工務店、三井ホームなどのCLT建築に用いられたCLTの住宅パネル・ツーヴァイフォーの製造加工を行っています。
3社目のカバヤホームでは、日本初CLT展示場を手掛けました。住宅展示場倉敷CLT店の屋根は、従来では不可能だった約2mの深さの軒を実現。薄く軒の深い屋根は、大開口への日差しカットや木質外壁保護の役割も担っています。
4社目の住友林業では、日本郵政グループの環境配慮型郵便局1号店として、千葉県南房総市の丸山郵便局を手掛けました。木造平屋で、CLTはスギとヒノキのハイブリットタイプを屋根に使用、壁と天井はCLTが現しとなり木質感のある店舗に仕上げています。
この4社以外にも国内のハウスメーカーでも、CLTを取り入れた住宅や店舗などの建築に力を入れています。
CLTは、耐火性(断熱性)・耐震性に優れていることから壁や屋根に利用されることが多い素材です。一般住宅から店舗・商業施設、オフィスなど幅広い建築物に活用され始めています。
特に近年、地震が頻繁に起こっている日本では、これまで以上に耐震性の見直しや耐震性が求められています。S造やRC造、木造など従来の工法よりもコストを削減でき、耐震性や耐火性などにも期待ができるCLTには関心がさらに高くなっています。
国内のハウスメーカーでは、CLTを取り入れた家づくりや製造・加工により一層力を入れています。国産の木材の高単価や加工の手間など、まだまだ課題が残されているCLTですが今後も需要が高まっていくと予想されます。