いまさら聞けない?CLTの特徴と工法!ハウスメーカー独自の取り組みも紹介
いまさら聞けない?CLTの特徴と工法!ハウスメーカー独自の取り組みも紹介
2023/08/31
近年建築業界で注目されているCLT。近年、世界各国で高層建築物が増えている中、注目されている工法です。中階層・超高層建築物によく活用されている工法には、さまざまなメリットや従来の木材にはない特徴があります。
CLTのメリットは?工法と特徴について
CLTとは、Cross Laminated Timber(クロス・ラミネイティド・ティンバー)の略称で、繊維方向が直交した積層接着した厚みのある木質パネルを活用した欧州発祥の工法です。この工法は90年代頃より、オーストリアを中心に発展し、近年ではCLTを活用する国が増加傾向にあります。
主にイタリアをはじめとするヨーロッパ各地やアメリカ、カナダ、オーストラリアなど世界各国で活用されています。日本でも注目されており、既に国内でもCLTを活用した建築物があります。
そんなCLTですが、次のような特徴があります。
- 耐熱性・耐震性に優れている
- 軽量でコスト削減
- 施工がシンプルで早い
- オーバーハングが可能である
まず、耐熱性・耐震性に優れているところです。地震が多いイタリアや日本では大変重宝されており、CLT建物の開発や普及が進んでいます。実大振動台実験では、阪神淡路大震災よりも大きな力を加えても倒壊しないという結果も出ており、今後の発展が期待されます。
二つ目は、軽量であることです。CLTは鉄筋コンクリート造の5分の1の重量です。一般的に、RC造の3階建てとCLTの5階建ての重量はほぼ同じとされています。そのため、基礎コスト・輸送コストを大幅に削減できます。
三つ目は、施工がシンプルで且つ工期が早く済むことです。CLTは、工場であらかじめ開口部加工や穴あけ加工をしてから現場へ搬入が可能、乾式工法でもあるため養生期間が不要で、施工に時間がかかりません。
また、パネルが柱や梁の役割を果たしてくれ、ビスと金具での接合が基本となるため施工がシンプルです。そのため、経験豊富な技術者でなくても施工が可能なのも従来の木造建築とは異なります。
四つ目はオーバーハングが可能であるという点です。CLTを床パネルとして使用することで、従来の木造では難しかったオーバーハングができるようになります。さらに、CLT構造は鉄骨造、RC造といった他の構造とも相性が良いため混構造が可能です。
このような特徴をもつCLTには、次のようなメリットがあります。
- 国産木材を有効活用
- 耐震性
- 耐火性
まず、一つ目のメリットとして国産木材の有効活用ができることです。
日本は山林地帯が多く、国内には活用できる木材が沢山ありますが、これらの木材はこれまでほとんど建築で活用されることはありませんでした。
「木材の自給率問題」といわれるほど深刻で、建築に使用される木材の大体は外国産の輸入木材です。国産木材の自給率が低い理由としては、国産の木材が輸入木材に比べて高価であるためです。しかし、近年CLTの普及に伴い国産木材の自給率が回復し始めてきています。
二つ目のメリットが耐震性です。CLTは耐震性に優れているのが特徴で、地震が多い日本では欠かせない要素でもあります。CLTは阪神淡路大震災クラスの大規模な地震を想定した実大振動台実験で、損傷が少ないといった結果が出ています。
三つ目のメリットは耐火性です。CLTは木材でありながら従来の木材とは異なり、耐火性にも優れており、厚さ90mmの壁が1時間経過しても燃え落ちないという実験結果も公表されています。
また、CLTは断熱性に優れており、厚さ90mmと120mmのコンクリートはほぼ同じ断熱性を確保できます。このようなメリットにより、近年では複数階層の建物をCLT工法で建築する国も増えてきています。
CLTと鉄骨のハイブリッドもーCLT+鉄骨ハイブリッド構造
世界各国に広まりつつあるCLT工法ですが、最近ではハイブリッド構造の取り組みも増えつつあります。国内でもその取り組みが進んでおり、竹中工務店やカバヤホームではハイブリッド構造の住宅づくりを行っています。
竹中工務店では、独自のハイブリッド構造「CLT+鉄骨ハイブリッド構造」を開発しました。この構造は、鉛直力を支える鉄骨の柱と梁フレームと水平力に抵抗するCLT耐震壁で構成され、CLT耐震壁を鉄骨フレームで拘束することで、木材の強度を効率よく引き出すことが可能となります。
この方法は、一般的な鉄骨造にも使用することができ、超高層建築にも活用できるのも特徴です。これまでは、都市部ではCLTを構造部材として用いていたり木材を現しで使用していることもあり、使用できないことがありました。しかし、このハイブリッド構造では、火災時に鉄骨のみで建物を支えることが可能です。
この構造は、オフィスや店舗、学校など幅広い建築物に活用できます。カバヤホームのハイブリッド構造は、軸組構法+CLTを採用しています。木造軸組工法を基に、従来の耐力壁に代わりCLTパネルを組み込んだカバヤホームオリジナルの新木造軸組工法です。
準耐火構造の国土交通大臣認定を取得しており、準耐火45分構造の耐火性を有しています。またこの工法は、従来の木造住宅より間取りの自由度が上がり、耐震等級3を確保できます。
ハウスメーカー独自の取り組みを紹介
CLTのハイブリッド構造のようにハウスメーカーでは、CLTを活用した独自の取り組みが行われています。
大東建託では、独自開発した金物とCLT工法を組み合わせたオリジナル工法を採用、中層建築物の建築を可能にしました。このオリジナル金物は、ピンを差し込むドリフトピン仕様となっており、従来のCLT施工より施工に掛かる時間をさらに短縮できます。
また、木材の「強くて軽い」特性を継承しつつ、コンクリートと同等の強度を持つCLT壁を使用する工法です。壁は緻密で頑丈で、建物の重量を支え、地震の揺れにも耐えます。CLT壁はコンクリートの約1/5の軽さにもかかわらず、従来の木造耐震壁の4倍以上の強度を誇ります。
住友林業では、箱状の構造体をつなぎ合わせて造る「CLT combo」という工法で、建築しています。住友林業独自の工法は、施工現場でつなぎ合わせる方法で、組み替えが可能であるなど、自由度の高いものになっています。
また、国産のスギやヒノキなどの木材を使用したCLTを採用しており、高い耐久性、断熱性を確保できます。
CLTは、繊維方向が直交していて、積層接着されている厚みのある木質パネルを活用した建築工法です。オーストリア発祥で、90年代よりオーストリアでは活用されてきました。近年では、イタリアなどのヨーロッパ各地をはじめ、カナダやアメリカなど世界各国で活用され始めており、日本も例外ではありません。
日本では国産木材の自給率が低いという問題がありますが、CLTの導入により自給率の回復が期待されています。
また、国内のハウスメーカーや工務店などでは独自の取り組みが行われており、ハイブリッド構造やオリジナル工法が開発されています。
CLTを取り入れた工法には、独自の工夫がされており今後、CLTの進化が期待できます。