製造能力から比較!CLTメーカーの詳細
製造能力から比較!CLTメーカーの詳細
2023/06/15
近年、低コストで高品質な建材であるCLTが建築業界で注目を集めています。CLTの活用を検討する際、供給状況が気になる方も多いでしょう。JAS規格は存在しますが、メーカーによってCLTの使用環境や厚さ、幅、長さの制約は異なります。
そこで、以下ではCLTの国内生産量の現状と推移、代表的なCLT生産メーカー5社の年間生産能力と特徴をご紹介いたします。これにより、CLTを活用する際の情報収集にお役立てください。
CLTの国内生産量は増加傾向
CLT(直交集成板)は、伐採した木材を薄い板状に切り出し、交差方向に重ねて接着することで強度と安定性を高めた建材です。CLTは日本農林規格JASにおいて「直交集成板」として製造規格が定められ、2016年から建築基準法にも盛り込まれ、一般的に利用されるようになりました。CLTは鉄筋コンクリートに比べて軽量で、工期も短縮できるため、耐震性や耐火性に優れた建材として注目されています。また、木材の有効活用や環境負荷の軽減にも貢献しています。
農林水産省の「令和3年木材統計」によれば、2021年の国内CLTの生産量は15,000m³で、前年の2020年に比べて2,000m³(15.4%)増加しました。このうち、ほとんどが構造用途として使用されています。構造用CLTの生産量は2020年比で27.3%増加しており、全体の集成材の国内生産量も2020年比で13.5%増加しています。これは、CLTの普及が進んでいることを示しています。
ただし、集成材工場全体の数は2020年に比べて16工場減少し、10.8%減少しています。しかし、CLT工場は11工場が維持されており、CLTの生産体制が維持されていることがわかります。
CLTは持続可能な建築材料としての需要が高まっており、耐震性や耐火性、環境負荷軽減などの特徴から国内での使用実績が増加傾向にあります。今後もCLTの普及が進み、木材建築の一翼を担う建材として重要な役割を果たすことが期待されています。
メーカーのCLT生産能力を確認しよう
2022年時点でJAS規格に適合するCLT木材を製造するメーカーは8社、その他のCLT木材を製造するメーカーは4社です。JAS規格に適合する8社のうち5社のCLTの生産能力と特徴をご紹介します。
ティンバラム(年間製造能力2,500㎥)
ティンバラムは秋田県を拠点とする企業東日本を代表する集成材メーカーであり、主にスギ材を使用してCLTを製造しています。彼らのCLTは、接着剤として耐候性に優れたレゾルシノール・フェノール樹脂を使用しており、屋外でも安定した性能を発揮します。
ティンバラムは環境問題にも積極的に取り組んでおり、製造過程で発生する端材のリサイクルなどの取り組みを行っています。また、彼らは50cm角のプレス治具を68個備えたCLTプレス機を使用しており、厚さ300mm×幅2,000mm×長さ8,500mmの制作断面まで対応できる能力を持っています。このため、さまざまなサイズや樹種、強度のニーズに対応し、歩留まりの向上を実現しています。
さらに、ティンバラムはCLTの製造だけでなく、設計から加工、施工までの一連のプロセスにも対応しています。つまり、顧客の要求に応じて、建物の設計からCLTの加工・製造、最終的な施工までを一貫して提供することができます。この一貫体制により、円滑なプロジェクト進行と品質の確保が可能となります。
オホーツクウッドピア(年間製造能力2,500㎥)
オホーツクウッドピアは北海道の協同組合で、地域のリサイクルを促進し、北海道産のカラマツやトドマツなどの木材を活用した建築材を製造しています。オホーツクウッドピアは木材の使用だけでなく、「植える」「育てる」といったサイクルを大切にし、循環型社会の実現に向けた活動も行っています。
オホーツクウッドピアでは、CLTの使用環境に応じて、耐候性に優れたレゾルシノール樹脂や水性高分子イソシアネート系樹脂を適切に組み合わせて製造しています。これにより、顧客は最適な建材を選択することができます。
オホーツクウッドピアは最大で厚さ210mm×幅1,200mm×長さ6,250mmの制作断面まで対応する能力を持っています。つまり、さまざまなサイズのCLTを製造することができ、顧客のニーズに合わせた建築プロジェクトに適用することが可能です。
鳥取CLT(年間製造能力5,000㎥)
鳥取県の鳥取CLTは、国産のスギ材を使用し、JAS規格に適合した「CLT36」とAQ認証を受けた「Jパネル」という製品を製造しています。
CLT36は、人の手で持ち運べる国内最軽量のCLTであり、非住宅物件に使用されています。一方、Jパネルは住宅の床や壁などに使用される製品です。鳥取CLTでは、屋内環境で使用するために水性高分子イソシアネート系接着剤を使用して製造しています。
鳥取CLTは、最大で厚さ90mm×幅1,250mm×長さ4,000mmの制作断面に対応する能力を持っています。このため、さまざまなサイズのCLTを製造することができ、建築プロジェクトのニーズに合わせた柔軟な対応が可能です。また、鳥取CLTではヒノキを使用したCLTの製造も可能です。ヒノキは優れた耐久性や美しい木目を持ち、建築において高い評価を受けています。
銘建工業(年間製造能力30,000㎥)
銘建工業は、岡山県に本社を置き、1923年に中島材木店として創業した木材メーカーです。100年以上にわたり木との付き合いがあり、構造設計から製造・加工、施工までの一貫したサービスを提供することができるワンストップの企業です。
銘建工業は企業文化として「木を使い切る」ことを掲げており、木くずまで有効活用する仕組みを確立しています。銘建工業はスギ、ヒノキ、カラマツ、トドマツなどの木材を原料に使用し、環境に応じてレゾルシノール樹脂や水性高分子イソシアネート系樹脂を用いて製造しています。これにより、建築プロジェクトに最適な建材を選択することが可能です。
銘建工業は、屋外用のCLTでは厚さ270mm×幅2,600mm×長さ6,000mm、屋内用のCLTでは厚さ330mm×幅3,000mm×長さ12,000mmの制作断面に対応する能力を持っています。さまざまなサイズのCLTを製造することで、建築プロジェクトの要件に柔軟に対応できます。銘建工業は、長い歴史と経験を持ちながらも、最新の技術と施設を活用して顧客のニーズに応えることに注力しています。
西北プライウッド(年間製造能力4,000㎥)
西北プライウッドは、2016年に宮城県石巻市でCLTの生産を開始したメーカーです。2020年には超厚合板CLP(超厚合板)の開発も行い、JAS(日本農林規格)認証を取得しました。CLPとは、50mmの最大厚みを持つJAS認証を取得した木質建材で、一般的な合板の最大厚み30mm程度を上回ります。CLPは強度、断熱性、遮音性に優れ、中高層建築物にも適用される注目の木質建材です。
西北プライウッドは、最大で厚さ450mm×幅1,200mm×長さ8,350mmの制作断面に対応することができます。主にスギを原料として使用し、環境に応じてレゾルシノール樹脂や水性高分子イソシアネート系樹脂を使用した製造を行っています。これにより、建築プロジェクトの要件に合わせて最適な建材を選択することが可能です。
JAS規格の導入により、CLTの活用が広がっています。CLTは木材の繊維方向を交差させた集積材であり、住宅以外の構造用途にも使用できる強度、耐火性、断熱性を備えています。公共施設などでも活用され、知名度が上昇しています。国内のCLT生産量も増加しており、メスギ以外の樹種を原料に使用するメーカーも存在します。