CLTを使った学校が増加!デザインも強度も向上
CLTを使った学校が増加!デザインも強度も向上
2024/07/26
岡山県真庭市は複数の小学校や幼稚園を統合し、新たにCLTを使った木造の小学校と認定こども園を建設しました。CLT(直交集成材)に地域のヒノキや杉を使用し、高い耐震性と防火性を備えたうえに、短期間で温かみのある校舎が完成しました。
学校を訪れた人々からは、「温かみを感じる」という感想が寄せられており、単なる印象だけでなく、実際に温かみを実感できるとされています。
岡山県真庭市がCLT建築に踏み切った理由
近年では、少子化の影響で学校の統廃合が増加しています。岡山県真庭市においても複数の学校施設が統合されました。
◇地域の教育施設を統合
近年の少子化の影響で、真庭市では学校の統廃合が進んでいます。平成22年1月には「真庭市立小・中学校の適正配置」に関する答申を受け、翌年に実施計画を策定しました。
この計画により、北房地域の4つの小学校、3つの幼稚園、2つの保育園の統合が決定され、新たに小学校と認定こども園を同一敷地内に建設する予定です。この統合により、教育資源の集約と効率化が図られ、質の高い教育環境が提供されることが期待されています。
◇真庭市は木材利用を推進
真庭市は木材利用も積極的に推進しており、市有施設の建築において、地上3階建て以下かつ延べ床面積3,000㎡以下の施設は原則として木造化を進めています。
市内には約20の林業事業体、3つの原木市場、30の製材所、1つの製品市場があり、特にヒノキを中心に林業が盛んです。
特に、学校建設では大断面集成材やCLTを活用して耐震壁や屋根材として導入し、市内に豊富なヒノキや杉を活用した材料開発が行われています。これにより、市内の林業事業体との連携も強化され、地域の木材利用の推進が図られています。
学校に求められる耐震性と防火性
学校建設では、児童が安心して学べる環境を作るために、優れた耐震性と防火性が求められます。
◇耐震性
公立学校施設は、児童生徒の学習・生活の場であり、教職員の勤務地としての機能に加え、地震などの災害時には地域住民の避難場所としても重要な役割を担っています。
東日本大震災を契機に耐震対策が強化されましたが、2016年の熊本地震を含む複数の地震においても多くの被害が発生しており、高い耐震性が必要です。
1981年以降の新耐震基準では、建物が一定の保有水平力を持つかを確認することが求められていますが、旧耐震基準の建物ではこの評価が難しいのが現状です。このため、耐震診断では「Is値」という指標が重要となります。
Is値は、建物の基本耐震性能(Eo)、形状(Sd)、経年劣化(T)を反映した値で、これらを掛け合わせて算出します。Is値が高いほど建物の安全度が高く、一般的な建物ではIs値0.6以上が安全とされ、特に公立学校施設では0.7以上を目安としています。
◇防火性
学校は特殊建築物に該当し、主要構造部を防火構造にしなければなりません。
特殊建築物とは、建築基準法に基づき、学校や介護施設、映画館、病院など不特定多数の人が利用する建物を指します。これらは火災リスクが高く、発生時の周辺への影響も大きいため、特別な分類に含まれます。
2018年の法改正により、この要件は床面積200㎡以上の建物に適用されるよう変更されました。
さらに、木造での学校建築は3階建てまで可能ですが、防火地域や準防火地域に建てる場合、その立地、延べ面積、階数に応じて耐火建築物、準耐火建築物、または延焼防止建築物として建設する必要があります。
耐火建築物とは、火災時に建物の倒壊や延焼を防ぐために、耐力壁、間仕切り壁、外壁、柱、床、梁などに求められる耐火性能を有する建築物で、この性能は建築基準法で定められています。
2019年の建築基準法改正で、防火・準防火地域の建物に「延焼防止建築物・準延焼防止建築物」の基準が導入されました。外壁や開口部の防火性能を高め、外部への燃え移り防止と内部の炎の発生抑制を目的としています。
CLTで耐震性と防火性を向上
CLTは複数の木材の層を交互に直交させて積層し、接着することで製造される木材です。この交差構造により、パネル自体が高い剛性を持ち、耐震性と防火性を向上させます。
◇CLTの耐震壁
CLTの耐震壁は、建築物にかかる垂直荷重(重力荷重)と水平荷重(地震や風による荷重)の両方を持する能力を持つのが特徴で、この多方向への荷重対応能力が、CLTの大きな強みです。
さらに、地震時、CLT耐震壁は変形することでエネルギーを吸収し散逸させて、構造体全体の揺れを減少させ、損傷を最小限に抑えられます。真庭市の小学校建設では、教室間の壁として耐震壁にCLTを現しで使用しており、壁の背面は隣の教室のロッカー側の壁として仕上材で覆われています。
◇厚いCLTで防火
CLTは厚みのある木材層を交互に直交させて接着したパネルで構成されているため、高い防火性が特徴です。
CLTは燃えると表面が炭化し、内部への熱伝導を遅らせる層を形成します。この炭化層は断熱性があり、内部の木材を保護し火の進行を遅らせます。また、CLTの厚みにより、一定時間、火に耐えられます。建築基準に応じて、CLTの厚みを調整することで、所定の耐火時間の確保が可能です。
こども園の保育室や遊戯室、調理室を区切る間仕切り壁として、CLTを使用し、木材の現し仕上げを採用しました。防火区画として両面からの火災に耐えるため、両面の火炎に対応する必要な燃えしろを確保する目的で、7層の厚さのCLTを使用しています。
地域の木材で温かみのある学校が完成
木材は「木のぬくもり」という言葉があるように、木目・風合いなどの見た目や柔らかい質感に温かみを感じます。
◇単価と工期を低減
真庭市では、地元産の桧を活用し、外層に高品質な桧を、内層にコスト効率の良い杉を使った特製の5層5プライCLTを開発しました。また、計画段階からCLTを広範囲に使用することで、工期の短縮を実現しています。
◇温かみのある校舎
学校を訪れた人々から、「温かみを感じる」という声が寄せられました。木造建築は、気持ちだけでなく実際に暖かみを感じられるとされています。
木材は鋼材やコンクリートに比べて熱伝導率が低いため、多孔質性が内部の空気層を形成し、断熱性を高めます。室内は外気温の影響を受けにくく、内装に木材を使用すると「温かい」「明るい」という印象を与えることが研究で示されています。
岡山県真庭市では、木材利用を積極的に推進しており、地元産のヒノキや杉を使用したCLTの導入に力を入れています。少子化による学校の統廃合が進む中、実際に地域の木材資源を生かしてCLT(Cross-Laminated Timber)建築を採用しました。
CLTは木材の層を交互に直交させて積層し、高い剛性と耐震性能を持つことが特徴です。地震時にはエネルギーを吸収し、構造体全体の揺れを減少できます。
また、防火性能についてもCLTは優れており、厚い木材層が炭化層を形成し、内部の木材を保護します。これにより、所定の耐火時間を確保し、防火性能を高めています。真庭市では、厚さ7層のCLTを使用し、保育室や遊戯室、調理室の間仕切り壁としても活用されています。
新しい学校施設では、内装に木材の現しを採用し、温かみのあるデザインとなっています。地元産の桧を外層に、コスト効率の良い杉を内層に使用した5層のCLTパネルは、工期の短縮にも貢献しました。