【令和6年度】CLT住宅で施主や事業者が利用できる補助金制度を解説
【令和6年度】CLT住宅で施主や事業者が利用できる補助金制度を解説
2024/06/28
CLTは革新的な建築材料で、工期短縮や高性能が注目されています。工期の短縮は、工場でのCLTパネル製造と現場での迅速な組み立てによって実現されます。特に定型建物に適しており、コンクリートと異なり養生期間が不要で、施工が迅速です。
CLTの断熱性、防音性、耐震性は優れており、コンクリートや鉄に比べても高い性能を誇ります。日本ではJAS規格に適合した高品質なCLTが求められ、製品価格が高騰していますが、補助金制度を活用することで建築コストを軽減できます。
ZEH住宅は施主に光熱費削減や快適な居住環境を提供し、事業者にはCO2排出量削減や運営コストの低減のメリットもあります。
CLTで家をつくるメリット
CLTは革新的な建築材料であり、近年では注目度が高まっています。主な理由は性能が従来の建材よりも優れていること、工期を短縮できることです。
◇工期の短縮
CLTは、建築現場での作業を工場で行い、パネルとして現場に運ぶことで工期を短縮します。この方法では、1階の壁パネルを立て、その上に2階の床を設置し、次に2階の壁を追加するプラットフォーム工法が使われます。
部品数が少なく大きなパネルを用いるため、施工が迅速で、特に定型の建物に適しています。また、コンクリートと異なり養生期間が不要なため、工期がさらに短縮されます。
比較研究では、CLT造と他の構造(S造・RC造)との建築コストは同等であり、CLT造では作業員の人数も少なくて済むことが示されています。
◇高性能
CLTは優れた断熱性、防音性、そして耐震性を特徴としています。断熱性においては、木の塊であるCLTはコンクリートや鉄に比べて熱伝導率が低く、建物内部の温度を保持しやすい特性があります。
また、集積したパネル構造が高い遮音性をもたらし、外部からの騒音を効果的に遮断します。さらに、耐震性においては、強固な壁が建物の重量を支えることで地震の揺れに耐えられます。
実際の強度比較では、木造軸組工法の耐力壁よりも約4倍強いとされているため、地震に強い建物の構築に適しています。
CLT住宅を建てるときのコストは?
一般の木造住宅や鉄骨造、鉄筋コンクリート造と比較しても、CLTは高い耐震性と断熱性を兼ね備えています。しかし、この点は価格に大きく影響するのです。
◇坪単価が高額になりがち
CLT住宅の坪単価は、一般の木造住宅、鉄骨造、鉄筋コンクリート造と比較すると異なる傾向が見られます。
一般の木造住宅は比較的低コストで建てられる一方で、鉄骨造や鉄筋コンクリート造は高い耐久性と安全性を持ち、その建築費用は高額です。具体的には、一般の木造住宅の坪単価は50万円から70万円程度であり、鉄骨造や鉄筋コンクリート造は100万円から150万円以上が一般的です。
一方、CLT住宅は高い耐震性と断熱性を兼ね備え、木造ならではの柔軟性とデザイン性を提供しますが、材料費や技術的要因から80万円から100万円程度と一般的に高価格帯に位置付けられます。
◇日本のCLTは高品質
日本におけるCLTの事情は、その性能の安定性を確保するためにJAS規格が設けられており、この規格に適合するためには高品質なラミナや接着剤が必要です。このため、製品の原材料コストが上昇し、それが製品価格の高騰に繋がっています。
また、日本の木造建築においては「現し仕上げ」を取り入れることが多く、工場出荷時から表面に欠点が少ない高品質な仕上げが求められることも一因です。
これにより、CLTの製品が一般的な小規模建築物では利用しづらく、主に大規模な公共建築物やデザイン重視の商業施設に限定される状況が生じています。
補助金で施主や事業主の建築コストを軽減
CLTで集合住宅や一戸建て、店舗やオフィス、公共施設など建築する際に、補助金制度を活用するとコストを軽減できます。令和6年に公募が決定している補助金を解説します。
◇戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等支援事業
戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等支援事業は、経済産業省と国土交通省の連携により推進されています。
この事業では、新築のZEH基準を満たす戸建住宅には55万円の補助が支給され、さらに高い省エネ効果を目指すZEH+住宅には100万円が補助されます。対象者は、新築注文戸建住宅の建築主および購入予定者となる個人と、SII 一般社団法人環境共創イニシアチブに登録している事業者です。
さらに、系統連系対応型蓄電池やCLTなどの使用を促進する場合には追加の補助が、既存の戸建住宅の断熱リフォームにも1/3の補助が提供されます。
引用元:SII 一般社団法人環境共創イニシアチブ「令和6年度 ZEH補助金」
◇集合住宅の省CO2化促進事業
集合住宅の省CO2化促進事業は、経済産業省が主導し、新築低層(3層以下)、中層(4〜5層)、高層(6〜20層)のZEH-Mに対し補助を提供します。低層には40万円の定額補助が、中層および高層には建築費用の1/3以内の補助が支給されます。こちらの対象者はZEHの新築集合住宅を建築する事業者のみです。
また、蓄電システムの導入やCLTの使用量増加、先進的再エネ利用技術の採用に対しては追加補助があります。既存の集合住宅に対しても断熱リフォームに1/3の補助が提供されます。
引用元:SII 一般社団法人環境共創イニシアチブ「令和6年度 ZEH補助金」
CLT住宅でさらに期待できる効果
補助金を活用して高性能のCLT住宅を取得すると、ほかにもメリットを得られます。
◇施主や購入者はランニングコストを削減できる
ZEH住宅は高い断熱性能により、1年中快適な室温を維持しやすく、冷暖房の効率が良いため光熱費が大幅に削減されます。家全体が省エネ性能に優れており、エアコンや給湯システムなどの使用にも少ないエネルギーで十分な快適度を確保できます。
特に太陽光発電システムを併設すれば、自家消費できる電力を増やし、光熱費のさらなる削減や災害時の電力確保も可能です。これにより、住宅ランニングコストが抑えられ、同時に環境負荷も軽減される利点が生まれます。
健康面でも、快適な居住環境が保たれ、ヒートショックやカビのリスクが低減されるため、住む人々の生活品質向上に寄与します。
◇事業者はCO2排出量削減に貢献
ZEH-Mの建設・所有は、デベロッパーやオーナーにとって複数のメリットがあります。まず、環境配慮活動としての社会的貢献が認められ、街の持続可能性に対する貢献度が高まります。これにより企業の社会的評価や物件の価値が向上し、市場競争力が強化されます。
また、エネルギー消費の削減により、光熱費の低減が見込まれ、運営コストの削減につながります。さらに、エネルギー使用の計量・計測による見える化により、効率的な管理が可能となります。 補助金の活用により初期投資の圧縮も期待でき、経済的負担が軽減されます。
販売上でも居住者に対する明確なメリット提供により、他物件との差別化が図れ、環境意識の高い購買層にアピールできる点が挙げられます。
CLTは革新的な建築材料で、工期短縮や高性能が注目されています。工期の短縮は、CLTパネルを工場で製造し、現場で迅速に組み立てることで実現され、特に定型建物に適しています。CLTはコンクリートと比較して養生期間が不要であり、施工が速くなります。
また、CLTの断熱性、防音性、耐震性は優れており、断熱性はコンクリートや鉄よりも高く、遮音性も向上させます。さらに、耐震性は木造軸組工法よりも強く、地震に対する強度が高まります。
CLT住宅は高性能ですが、坪単価が一般的な木造住宅や鉄骨造、鉄筋コンクリート造と比較して高くなりがちです。日本ではJAS規格に適合する高品質なCLTが求められ、製品価格が高騰しています。
コストを軽減する方法として、補助金制度の活用が挙げられます。補助金制度に採択されるためには、厳しい要件を満たす必要があります。施主はこの要件を満たしたZEH住宅の建築コストを軽減でき、光熱費削減や快適な居住環境を得られます。事業者はCO2排出量削減や運営コストの低減に寄与し、社会的評価が向上するでしょう。