注目の建材「LVL」とは?CLTとの違いも解説
注目の建材「LVL」とは?CLTとの違いも解説
2024/06/28
LVL(Laminated Veneer Lumber)は、複数の薄い木材単板を接着して重ねることで作られる建材です。強度が均一で安定しており、防腐・防虫処理がしやすく耐久性が高いため、柱や梁などの構造材として広く利用されています。昭和40年代から国内で使用され始め、現在は中大建築物にも使われるようになりました。
製造コストの高さや加工の難しさ、耐火性の低さといったデメリットもありますが、寸法安定性や精度の高さが評価されています。代表的な建築事例として、みやむら動物病院や明治大学黒川農場アカデミー棟があり、いずれもLVLの強度と耐久性を活かした設計が特徴です。
LVLはどんな建材?
近年、LVLやCLTといった新しい建材が登場しました。まずはそれぞれの概要を解説します。
◇LVLとは
LVL(Laminated Veneer Lumber)は単板積層材とも呼ばれる建材です。ダフリカカラマツ、ラジアータパイン、国産カラマツ、スギなどの木材をスライスした単板を接着して重ね合わせて作られます。
乾燥させた単板を何層にも重ねることで、節を分散し、強度のばらつきを抑えて安定した強度を保ちます。また、表面および接着層に薬剤処理を施すことで、腐食や害虫被害にも強く、構造材や一部内装材として広く利用されています。
◇LVLの歴史
LVLは昭和40年代から国内で利用されており、当初は家具や楽器、運動器具などの造作材として使われていました。1972年に米国林産試験場が構造用LVLの研究成果を発表し、全国的に普及し始めます。
時代と共に製造システムが整備され、現在では主に「柱」や「梁」として構造材に利用されるようになりました。LVLはJAS規格に基づいており、基準強度が高く高品質を維持できることから、近年では中大建築物の構造材にも用いられています。
◇CLTとの違い
LVLとCLTは、製造方法と特性において異なります。LVLは単板の繊維方向を揃えて積層接着し、耐久性のある接着剤を使用するため、剥がれにくいのが特長です。
一方、CLTはラミナ(挽き板や小角材ピース)を繊維方向に揃えて接着しますが、イソシアネート系接着剤を使用した場合、耐水性が低く、板材や小角材が剥がれることがあります。
しかしながら、両者は繊維方向の強度や安定性に優れている建材であることは間違いありません。
LVLの特徴
LVLは、その高い寸法安定性と精度により、乾燥された材を使用するため水分量が少なく、節も除去されています。これにより、変形が少なく均一な強度を持つ長尺材が得られます。
さらに、LVLは防腐・防虫処理が容易で、薬剤の浸透性が高いため耐久性に優れています。輸出時には非木材として扱われ、熱処理や植物検疫が不要で、理想的な建材として評価されています。
◇精度が高く変形が少ない
LVLは寸法安定性と寸法精度が高く、乾燥された材を使用するため水分量が少なく、節なども除去されています。これにより精度の高い製品が得られます。
自然の木材は乾燥や密度のばらつきがあるため強度が不均一ですが、LVLは単板を接着して製造するため、均一な強度を持つ長尺材が作れます。結果として、LVLは変形が少なく、高精度な構造材として理想的な性能を発揮します。
◇薬剤の浸透が早い
LVLは防腐・防虫などの付加処理が容易で、単板の時点で薬剤を注入、あるいは接着材に薬剤を混入する方法が取られます。このため、薬剤の浸透性が高く、効果的な薬剤処理が可能です。
また、LVLは輸出時に熱処理が不要で、非木材として扱われるため植物検疫も必要ありません。これにより、LVLは耐久性が高く、腐食や害虫被害に強い理想的な建材となっています。
LVLのメリット・デメリット
LVLは、高い強度と軽量性、寸法安定性、気密性など多くのメリットを持つ建材です。これにより、輸送や施工が容易で、中大規模建築物にも広く利用されています。しかし、製造コストの高さや加工の難しさ、耐火性の低さといったデメリットもあります。
また、登場から約70年と歴史が浅く、長期間の耐久性が確実ではないため、70年以上の長期使用には適さない可能性があります。
◇メリット
LVLのメリットは、まず高い強度にあります。複数の薄いベニヤ板を接着して作られるため、厚み方向に対して高い強度を持ち、曲がりに耐えることができます。また、固体木材よりも軽量で、輸送や施工が容易です。
寸法安定性にも優れており、湿気や温度変化の影響を受けにくく、安定した形状を保ちます。強度にばらつきがなく、安定した品質を保つため、中大規模建築物にも広く利用されます。
さらに、気密性が高く収縮に強いため、接合部にスキマができにくく、ゆがみのない建築物が可能です。
◇デメリット
LVLのデメリットとして、製造コストが高い点が挙げられます。複数のベニヤ板を接着するため、固体木材よりも製造費用がかかります。また、加工が難しく、釘やネジを打つ際には事前に下穴を開ける必要があり、切断も固体木材よりも困難です。
さらに、火災に対する耐火性が低いという欠点もあります。LVLは登場して約70年経過しているものの、具体的な寿命はまだ不明で、長期間の耐久性については確実ではありません。そのため、70年以上の長期使用を希望する場合には適さない可能性があります。
LVLを使用した建築事例
実際にLVLは公的施設や商業施設で使われています。ここでは2つの事例を解説します。
◇みやむら動物病院
みやむら動物病院では、建物の木質壁構造に「木層ウォール」という準耐火性能を持つ壁構造を採用しています。この壁構造には在来軸組とLVL厚板が組み合わされており、特に南側の主立面には象徴的にLVLの厚板構造が配置されています。
屋内側では、150mmのLVL積層面が「LVL打ち放し」仕上げとして表現され、屋外側には透湿防水層と通気層を組み合わせて防腐処理された30mm厚の仕上げ用LVLが使用されました。
この外壁の他にも、地震力に対抗するためにLVLの厚板が室内の構造要素として利用されています。また、一部のLVLは耐火性を強化するために強化石膏ボードなどで仕上げられており、将来的な空間のプランニング変更にも対応する柔軟な構造計画が実現されています。
◇明治大学 黒川農場アカデミー棟
明治大学黒川農場のアカデミー棟では、神奈川県産のスギLVLが主に構造材として使用されています。これには梁や柱が含まれており、LVLの強度と耐久性を活かした建物の基盤となっています。
また、羽目板や床の板材にも同じく神奈川県産のスギが採用されました。この設計には、地域の木材資源を活用し、持続可能な建築を実現するといった意図が含まれています。地域資源の活用と建物の耐久性強化を両立させた良好な例と言えるでしょう。
LVL(Laminated Veneer Lumber)は、複数の薄い木材単板を接着して積層することで作られる建材です。ダフリカカラマツやラジアータパイン、国産カラマツ、スギなどをスライスした単板を乾燥させ、接着剤で重ね合わせることで高い強度と均一な性能を実現しています。これにより、柱や梁などの構造材として広く使用されるようになりました。
LVLの利点の一つは、その寸法安定性と高い精度です。自然の木材に比べて乾燥や密度のばらつきが少なく、強度が均一であるため、変形が少なく長尺材として理想的な性能を発揮します。
また、防腐・防虫処理がしやすく、薬剤の浸透性が高いため、耐久性にも優れています。さらに、輸出時には非木材として扱われるため、熱処理や植物検疫が不要であり、輸送の際の手間が省ける点も魅力です。
代表的な建築事例として、みやむら動物病院や明治大学黒川農場アカデミー棟が挙げられます。みやむら動物病院では、木質壁構造に準耐火性能を持つ「木層ウォール」を採用し、南側の主立面にLVLの厚板構造を配置しています。
明治大学黒川農場のアカデミー棟では、神奈川県産のスギLVLが構造材として使用されており、地域資源の活用と持続可能な建築を実現しています。