CLTは外壁使用に向いている? 外壁に使用する際の注意点
CLTは外壁使用に向いている? 外壁に使用する際の注意点
2024/05/31
CLTは、ヨーロッパ発祥の工法で、現在は世界各国で使われ始めています。外壁に使用することもありますが、いくつかの点に注意が必要です。
日本でも2014年にCLTを採用した初めての建築物が完成し、国内でも知名度が上がっており、現在では高層建築物にも使われるようになりました。
外壁として使用する場合は湿気や日射による劣化が懸念されるため、塗料の選択などの方法で課題を解決する必要があります。いくつかの課題があるものの、断熱効果や木の温もりを感じられることから、外壁に使用する事例も増えています。
CLTはどこで使われることが多い?
もともとはヨーロッパが発祥のCLT工法ですが、現在は世界各国で活用され始めており、日本も例外ではありません。日本でCLT工法の建築物が初めて完成したのは2014年と比較的最近であるため、CLTにあまり馴染みのない方や詳しいことは知らないという方もいるかもしれません。
これを機会にCLTについて理解を深めておくと、マイホームを建てるまたは購入する際にも参考にできます。
◇壁や床や天井に使われるのが一般的
CLTは基本的に天井・壁・床に使用されており、耐久性・遮熱性・遮音性が通常の木材よりも優れているのが特徴です。近年では、中高層のマンション・ビルのような建築物に使用するケースも増えています。また、断熱性にも優れているため、夏・冬も快適に過ごしやすい点もCLTが天井・壁・床に使用される理由です。
◇木目を活かし内装の現しとしても使われる
現しとは、柱や梁などの構造体をそのまま露出させて仕上げることを指します。これまではCLTを構造部材や現しで使用するのは、強度の面からも困難とされ、国内の建築物の「現し」に使用しているメーカーは多くありませんでした。
しかし、鉄骨造と組み合わせると火災が起きても鉄骨で建物を支えられるため、現しで使用しても問題なく、近年では都市部で利用され始めています。
近年ではCLTオールの建築物もありますが、CLTと鉄骨を組み合わせたハイブリッド型の建築物も建築されています。ハイブリッド型は、鉄骨の柱・梁フレームとCLT耐震壁を組み合わせており、CLTを現しとして使用しているのが特徴です。
また、一般的な鉄骨造に使用される補強材のブレースと同様に耐震補強材としてCLTを超高層の建築物でも取り入れられているケースも多く見られています。
CLTは外壁に向いている?
天井・床・壁などに使用されるCLTですが、外壁としての使用は向いているのか、気になります。CLTのような木材は基本的に使用する環境で耐久性などが変わるため、一概に外壁に不向きだとは言い切れません。CLTを外壁として使うには下記のような点が懸念されます。
◇湿気や日射で劣化しやすい
CLTをはじめとする木材は湿気や日射によるダメージに強い素材ではありません。そのため、長い期間湿気や日射にさらされてしまうと表面に劣化を起こしてしまうケースも多いです。表面に劣化が起きてしまうと次のようなトラブルにつながります。
◇割れや腐朽に繋がる
湿気や紫外線のダメージを受け続けた木材は表面が乾燥して割れやすく、湿気にさらされた場合ではカビが発生し、腐食してしまう可能性が高まります。そのため、外壁にCLTを使用する場合は、無加工のままでの使用は向きません。
ただし、防腐処理などの加工を行っているものであれば湿気や日射による劣化を防げます。また、外壁以外にも屋根・軒といった木材が守られない箇所にCLTを使用した場合も外壁同様、腐食する可能性があるため注意が必要です。
CLTを外壁に使用する際の注意点とは?
外壁にCLTを使用するにはリスクがありますが、まったく使用できないわけではありません。CLTを外壁に使用する場合は、次の2つのポイントがあります。
◇外壁に使用する場合は適した接着剤を選ぶ必要がある
外壁でCLTを使用する際は、使用環境に適した接着剤を選ばなければなりません。接着剤には、イソシアネート系・レゾルシノール系・メラミン系などさまざまな種類があり、CLTを使用する部位で使用環境が変わるため、適したものを選ぶ必要があります。
CLTの使用環境もA・B・Cの3つに分けられます。外壁の場合は使用環境Aに該当するため、耐候性・耐熱性・耐水性・耐火性に優れた接着剤が必要です。使用環境Aの場合は、レゾルシノール系やメラミン系などの接着剤が適しています。
◇塗装も必要
CLTに限らず屋外にさらされている木材は、紫外線や雨などの湿気によるダメージが受けやすいため、劣化が起きる可能性が高いです。そのため、劣化を防ぐためにも防腐剤・防カビ剤・防虫剤などの効果がある塗料を使用するのが適しています。
また、劣化を防ぐだけでなく、外観のデザインもおしゃれに仕上げられるのも塗料を使用する利点です。
CLTを外壁に使用した事例を紹介
CLT木材の外壁への使用は懸念点ばかりではありません。国産の木材の利用拡大や工期が早いなど、CLTを使用した場合の利点や効果も多いです。
◇断熱効果が高まる
CLTは、木板をクロスさせて積層接着した厚型パネルのため、熱伝導率が低く断熱材が不要なほど断熱性が優れています。そのため、夏は涼しく冬は暖かい空間を実現でき快適に過ごせるのが魅力です。
また、一般的な木材よりも燃えにくく耐火性や遮熱性も高いため、防耐火性設計での使用にも適しています。万が一火災が起きた場合でも炎が燃え広がりにくく、1時間燃えても焼け落ちない点もCLTの特長の1つです。
◇木の温もりを感じられる
木のぬくもりを感じられるのもCLTの特長といえます。CLTの表面を見せられるため木のぬくもりや香りを感じられますし、木の木目を見せておしゃれにできるのも魅力です。
さらにCLTはCO2削減できるという利点もあり、環境に配慮した建築物にできるのも特徴です。このように、CLTは機能性に加えてデザイン性や環境面などにおいても優れている素材です。
CLTは主に天井・壁・床などに使用され、通常の木材よりも優れた耐久性・遮熱性・遮音性を持っています。特に近年では、中高層の建築物にも積極的に取り入れられています。
また、CLTは木目を活かして内装の現しとしても使われることがあります。柱や梁などの構造体をそのまま露出させて仕上げることで、建築物に温かみや風格を与えられます。かつては強度の問題から現しとしての使用は難しく考えられていましたが、鉄骨と組み合わせることで火災時の安全性を確保しつつ、都市部でも利用が広がっています。
さらに、CLTを外壁にも使用することも可能であり、機能性やデザイン性、環境への配慮など、さまざまな面で優れた建築材料として注目を集めています。 一方で、木材特有の問題も考慮する必要があります。湿気や日射による劣化が懸念されるため、適切な防腐処理や塗装が必要です。